メンタルによい食事は何か。精神科医の樺沢紫苑さんは「メンタルに重要な役割を果たす栄養素として、米、豆類、肉などに含まれるトリプトファン、それを吸収するためのビタミンB群と糖質、葉酸やマグネシウムがある。
これらのメンタルによい栄養素を一食でとれるバランスのよい食事を紹介しよう」という――。
※本稿は、樺沢紫苑『精神科医が教える! 心がスッと軽くなる93の処方箋』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■睡眠の質を上げるシャワーの温度と浴びる時間帯
【相談】

不眠に加え、暑い日は体がほてってますます寝つけず、寝る前に冷たいシャワーを浴びていますが、効果はありますか?
【処方箋】

40度のシャワーや入浴のほうが睡眠効果が高くメンタル改善に

暑い日が続き、夜も寝苦しいという人が多いでしょう。そんな日に、冷たいシャワーを浴びると気持ちいいですよね。
昼間に浴びるのはいいのですが、睡眠を考えると、寝る3時間前以降はおすすめできません。寝る前の冷水シャワーは交感神経を刺激します。また、汗腺が閉じてくるので、身体に熱がこもりやすい。睡眠には逆効果です。
睡眠の質を上げるためには、40度くらいの、熱くも冷たくもない標準的な温度のシャワーを寝る90分前に浴びてください。
可能であれば、お風呂に入るほうが効果は高いといえます。また、半身浴や足浴でもかなり効果があるとされていますので、全身浴が苦手だという方はお試しください。
睡眠の質が高まると、疲れが取れたり、体調が回復したり、メンタルもよくなったりと、うれしい効果が期待できます。

■ストレス解消がダイエット成功への近道
【相談】

忙しくなりストレスがたまってくると、無性に食べたくなります。

どうすれば食欲を抑えられますか?
【処方箋】

食欲を抑える効果的な方法はストレス解消と睡眠

ダイエットに失敗するのは、食欲に負けるから。食欲を抑えることがダイエットの近道になります。
もっとも効果的な方法は、ストレスを解消すること。ストレスホルモンであるコルチゾールは強烈に食欲を促します。ですから、ストレスが多い状態でダイエットをするとリバウンドしやすいのです。
続いて大事なのが睡眠。睡眠時間が6時間を切ると、肥満になる確率が3倍ほど高くなります。
これは、睡眠不足になると、食欲を増加させるホルモンが増え、食欲を抑えるホルモンが減るため、ダブルで食欲が増大してしまうからです。少なくとも7時間は睡眠時間を確保するようにしましょう。
ちなみに、ストレスや睡眠不足が食欲を増大させてしまうのは、どちらも生物学的な危機のため、体にエネルギーを蓄えようとするからです。
■満腹感を引き起こす脳内物質を分泌する方法
【相談】

ストレスが原因で食べすぎてしまい、体重が増えて、さらにストレスがたまります。


この悪循環から抜け出す方法はありますか?
【処方箋】

もっとも簡単で効果が高いダイエットは「朝散歩」

ダイエットというと食事の量を減らして摂取カロリーを減らすか、運動をしてカロリーを消費しようと考える人が多いと思います。これがストレスにつながり、ダイエットに挫折してしまう原因になります。
そんな人におすすめなのが「朝散歩」です。その目的は、運動してカロリーを消費することではなく、食欲のコントロールに関係する脳内物質「セロトニン」を活性化することにあります。
セロトニンは満腹感を引き起こし、食欲を抑制する働きがあります。セロトニンが活性化すれば、食欲の暴走をおさえることができるのです。逆にセロトニンが減ると、コルチゾールが出やすくなり、食欲が暴走しやすくなります。
起床後1時間以内に、日光を浴びながら、早足で15分程度歩きましょう。
■やせると強く暗示をかけることの効果
【相談】

何度もダイエットを始めるのですが、なかなか効果が出ず、あきらめてしまいます。

早く効果を出すよい方法はありませんか?
【処方箋】

思い込みの力を借りてダイエット効果を高めよう

なんと、「やせると思うだけで、やせることができる」という心理学実験があるので紹介します。
ホテルのベッドメイキングを行う従業員の方を対象にした実験で、2つのグループに分け、片方には「すごい運動量だから、やせないのはおかしい」と伝え、もう片方には伝えないというものです。そして、数カ月後に体重を測ります。

結果は、前者のみ、体重が著しく減っていました。つまり、やっている仕事は同じで運動量は変わらないのに、やせると強く意識しただけで、実際にやせるという暗示が現実化したのです。
ダイエットのために運動をしている人は、「やせるはずだ」と思いながら行うことで、ダイエット効果を最大化できるのです。ただし、運動していない人には効果がありませんので、ご注意ください。
■メンタルによい栄養素を一食でとれるすごいメニュー
【相談】

忙しくなるとイライラしやすくなり、気分のアップダウンが激しくなります。

メンタルに効く食べものはありますか?
【処方箋】

納豆卵かけ玄米ご飯+バナナがおすすめです

食べるだけですぐにメンタルの不調が治るものはありませんが、メンタルに深く関わる栄養素はあります。まずは、トリプトファン。幸福物質セロトニンの原料になるアミノ酸で、米、豆類、肉などに含まれます。ただし、吸収するにはビタミンB群と糖質が必要。
また、鉄分不足になると不安になりやすいほか、葉酸やマグネシウムもメンタルに重要な役割を果たしています。つまり、バランスのよい食事が大切だといえます。
これらのメンタルによい栄養素を一食でとれるすごいメニューが、「納豆卵かけ玄米ご飯」です。
納豆や玄米はトリプトファンやビタミンB群が豊富で、卵は「完全栄養食品」といわれ、ビタミンCと食物繊維以外の主要な栄養素が含まれています。
さらにバナナを合わせると、ビタミンCや食物繊維も補えます。時間も手間もかからない最強の食事です。
■家事の積み重ねで健康効果も
【相談】

毎年おっくうになる年末の大掃除。

前向きに取り組めるようになる心の持ちようや工夫はありますか?
【処方箋】

健康効果が期待できるので、ジム感覚で取り組んで

大掃除に限らず、日常の家事はいい運動になります。日頃の運動不足を解消するよい機会ととらえ、ジム代わりに取り組むのはいかがでしょうか。
以前は、有酸素運動を30分以上続けると成長ホルモンが出てよいといわれていました。最近では、まとまった運動をしなくても、5分でも10分でも体を少し動かすだけで、健康効果があるという研究が多く見られます。
「生活活動量」という言葉が使われるのですが、洗濯や掃除、片づけなど、日常的な活動も運動として数えてよいといわれており、最低で週150分(1日20分程度)の活動が推奨されています。
ちょっとした運動でも積み重ねれば健康効果が期待でき、病気の予防になります。忙しくて体調をくずしやすいときこそ、活動量を増やして健やかな心と体を保ちましょう。
■「好きだけど絶対に食べない」は極端すぎる
【相談】

酒席が多い年末は、揚げものや締めのラーメンを口にする機会が増えます。


好物でも我慢したほうがいいのでしょうか?
【処方箋】

好きなものを適量食べることはメンタル的にはヘルシー

揚げものやラーメンは、あまり健康によくなさそうな食べものです。でも1カ月に1回、ラーメンを食べたからといって、コレステロール値が急に上がったり、体重が急に増えたりするわけではありません。
それよりも、好きなものを我慢し続けることでストレスがたまるなど、マイナス面も考えられます。月に数回程度なら、好きなものを楽しむほうがメンタル的には健康だと私は考えます。
多くの方は、0か100かという思考をしがちですが、完璧な食事を実践するのは難しいもの。「好きだけど絶対に食べない」と極端に考えるのではなく、回数を減らす、時々であればよいのです。
私も、唐揚げやフライドポテトなどを、まったく食べないわけではありません。ただし、自分からすすんで注文しないようにはしています。

----------

樺沢 紫苑(かばさわ・しおん)

精神科医

作家。米・イリノイ大学への留学を経て樺沢心理学研究所を設立。YouTubeやメルマガで精神医学の情報を発信。著書に『学びを結果に変えるアウトプット大全』『精神科医が教える ストレスフリー超大全』『読書脳』ほか。


----------

(精神科医 樺沢 紫苑)
編集部おすすめ