熱中症って、しっかり対策をしているつもりでも、かかってしまうことがありますよね。小児科医の先生に尋ねたところ、今のコロナ世代の子供たちの弱点がわかりました。
■Q.熱中症患者が増えているのはなぜですか?
私たち人間の体は、高温多湿(暑熱)な環境下では、汗をかくことや皮膚から熱を放出することで、体温をコントロールしています。ところが、高温多湿の状態が長く続いたり、昨今のような災害級の暑さになったりすると、体温の調整機能が追いつかなくなり、熱が体内にこもって、時に40℃を超える高体温になってしまいます。この体内に熱がこもった状態が「熱中症」です。
高体温になると、熱を逃がそうと大量に汗をかくため、体内の水分や塩分(ナトリウムやカリウムなどの電解質)が減っていきます。いわゆる脱水状態になり、血液の流れも悪くなり、酸素や栄養がいきわたらなくなるため、脳をはじめ臓器へのダメージも出てきます。
特に子供は、汗腺が未熟で体温調整の機能が十分に発達していないために、熱中症にかかりやすいといわれています。
初期症状は、強い口の渇き、めまいや顔のほてり、体のだるさ、立ちくらみ、生あくび、頭痛など。中期になると、吐き気や嘔吐(おうと)、発熱、大量の発汗(あるいはまったく汗をかかない)、元気がない、筋肉痛や筋肉のけいれんといった症状があらわれます。体温が40℃を超えたり、呼びかけに反応しない、目の焦点が合わない、体全体のけいれんなどの症状が出てきたら、すぐに医療機関を受診する必要があります。
熱中症にかからないためには、汗をかきやすい体にしておくことと、体を暑さに少しずつ慣れさせていくこと(暑熱順化)が必要です。ところが、近年、この二つが難しくなってきています。
■Q.昔と何が違っているのですか?
「汗をかくこと」なんて、当たり前にできると思っていますよね。ところが、汗をかくにも能力が必要で、最近の子供(大人も)はその力が低下してきているのです。
少し前までは、炎天下でも走り回って、思い切り汗をかく子供たちの姿を当たり前に見ることができましたが、今は(特に都会では)外で遊べる場所が減ってきています。また、家庭でも学校でもエアコンが効いていて、汗をかく環境にもないですよね。
気候変動による影響も見逃せません。猛暑日が増えてきて、ますます「外で遊ぶ」機会は減っています。汗をかくチャンスが失われることで、汗腺が発達せず、汗をかけない子供たちが増えているのです。
さらに、子供たちが汗をかきにくくなっている理由が、もう一つあります。
汗腺の数は、生まれたときから変わりません。しかし、実際に汗を出すために機能している「能動汗腺」の数は、2~3歳までにたくさん汗をかくことで増えていくといわれています。
ところが、今の小学校低学年の子供たちは、コロナ禍で幼少期を過ごしました。
前述したライフスタイルの変化に加え、不要不急の外出制限や、密を避けるために友達と一緒に体を動かして遊ぶことも自粛させられたのです。この子たちの能動汗腺は十分に発達していないという恐れがあるのです。
とはいえ大人になってからでも、いわゆる熱帯地域で生活すると、能動汗腺が増えるという研究結果もありますから、今からでも遅くはありません。少しでも汗をかく機会を取り入れて、能動汗腺を増やす努力をしていただきたいと思います。具体的なアドバイスは後述しますね。
近年の気候変動は、暑熱順化を難しくさせる要因にもなっています。少し前の日本は、春から夏にかけてゆっくりと気温が上がり、体も徐々に暑さに慣れていくことができました。ところが最近は、春を感じる前に夏日になることも。1日の中での寒暖差も激しくて、体がついていけない、と感じることもあるのではないでしょうか。
こうした理由から、熱中症の対策がこれまで以上に難しくなってきているのです。
■Q.熱中症はなぜ危険なのでしょうか?
風邪でも高熱が出ますが、熱中症の熱とは明らかに違います。
風邪による発熱は、原因となるウイルスを攻撃するために、体(脳)が自ら意図して、体温を上昇させるものです。
ところが、熱中症の発熱は、脳の意思とは関係なく、外気温に体温調整が追いつかないためにどんどん上昇するのです。42℃を超えると、脳や中枢神経にダメージを与え、回復後も集中力や記憶力の低下、頭痛、めまい、ふらつき、疲労といった後遺症が数カ月にわたって残ることもあります。怠けているとか、夏バテなどと誤解されやすい症状ですが、熱中症の後遺症という可能性があることも知ってほしいですね。
また、吐き気やめまいがあっても、それを熱中症と自覚せずに過ごしている子もいます。これが、いわゆる“隠れ熱中症”です。
遅れて症状が出る“時差熱中症”というのもあります。夕方、涼しくなってから体がだるくなったり、立ちくらみが出たりする。夜になって受診してくる患者さんに、「日中は何をしていましたか」と聞くと、「外で3時間運動していました」と言われる。運動しても適切に汗がかけないまま、ゆっくり体に熱がこもっていき、時間差で発症しているのですね。
■Q.熱中症にかからないためにどうしたらいいですか?
現代の日本では、春から徐々に、という自然の暑熱順化は難しくなっていますので、意識的に汗をかく習慣を大切にしてもらいたいと思います。
夏本番を迎える前から、散歩やサイクリングなどの軽い運動をしておきましょう。暑い時期になっても、朝夕の涼しいときに5分でも10分でもいいので、体を動かしておきましょう。
シャワーではなく、湯船に漬かって汗をかくこともおすすめです。40℃ほどのお湯に5分漬かるだけでもじんわり汗が出てくるはずです。
大事なのは、汗をかく活動を継続すること。汗をかかない日が続くと、せっかく身につけた暑熱順化が1~2週間で消えてしまうという報告もあります。
汗の拭き方にもコツがあります。かいた汗を肌に残したままだと、肌あれの原因になりますし、汗腺をふさいでしまうことにもなります。とはいえ、完全に拭いてしまうと肌が乾燥してしまいます。
帽子や日傘をはじめ、首に巻く冷却材やハンディー扇風機、ファンつきの冷却服など、熱中症対策のグッズも進化してきています。うまく取り入れるといいでしょう。
同時に、生活習慣を整えることも大事です。体温を調節するのは自律神経です。寝不足や疲れがあると、脳の視床下部でコントロールされた自律神経が「暑い」「寒い」と感じる力が低下します。ニュースなどで、暑さを感じない高齢者の話を聞きますが、子供たちの中にも一定数います。しっかり睡眠をとって、脳のセンサーが働くようにしておきましょう。
寝るときも、エアコンを上手に使いましょう。
ほどよく汗がかける程度に温度設定をし、タイマー機能で切るのではなく朝までつけっぱなしがいいと思います。パジャマは長そで、長ズボンのものを着用し、タオルケットを体にかけておくとエアコンの風による皮膚の乾燥を防ぐことができて、快適に眠れます。
暑くなると、アイスクリームやジュースなど冷たいものが欲しくなりますが、温かいお茶やみそ汁をとることがおすすめです。特にみそ汁には塩分も含まれていますから、熱中症予防には最適です。
■Q.スポーツドリンクで水分補給って正しいですか?
熱中症の症状が出たら、まずは、水分と塩分を補給し、体温を下げること。緊急の場合は、水道水でもお茶でもかまいません。電解質も一緒にとれる経口補水液があればなおベストです。
体温を下げるためには、風通しのよい日陰や冷房の効いた場所に移動し、衣服をゆるめて体を楽にします。そのうえで、首やわきの下、鼠径(そけい)部(脚のつけ根)など、血管の集まっているところを保冷剤や冷たいタオルで冷やします。
水分がとれて、意識がしっかり戻れば、通常は半日から1日で症状は治まります。解熱剤は不要です。ただし吐き気や頭痛などの症状が半日から1日続くときは、医療機関でしっかり診てもらったほうがよいですね。
熱中症の予防として、スポーツドリンクを飲む子がいますが、こちらは緊急の場合以外、控えていただいたほうがいいと思います。
スポーツドリンクはとても糖分が多いからです。
WHOが推奨する1日の糖分の摂取量は25g(学童は20g)ですが、スポーツドリンクの中には500mLに30gもの糖分が入っているものもあります。これは角砂糖7~9個分に当たります。1本でも1日の摂取量を超えてしまいますから、毎日飲み続けると高血糖になる可能性があります。いわゆるペットボトル症候群ですね。
ちなみに、経口補水液の糖分は、500mLで9g程度(※オーエスワンは100mL当たり1.8g)。いずれも場面限定で飲むようにして、日常的に水やお茶の代わりに飲まないことが大前提です。
■Q.特に、子供たちにしてほしいことは何ですか?
私は、子供たちを過度に守りすぎるのもどうかと危惧しています。
今は学校でも家庭でも、空調が効いていて、暑さ対策、熱中症対策がしっかりとられています。もちろん、それは気候変動の影響もあり、今の時代に合わせていることなので、必要なことではありますが、子供たちが管理されすぎているようにも思うのです。
暑いなら暑いなりに、子供自身がどうするか考え、熱中症を避けるために工夫する。そうすることで、子供の自己管理能力が育つのではないでしょうか。
もちろん最初は、親御さんのサポートが必要です。
例えば、親子で朝、天気予報を見て、今日はどういう服装で出かけるのか、水分はどれぐらい必要になるか、一緒に考えてみてはどうでしょう。学年が上がったら、それを自分ひとりでできるようになるといいですね。
外から帰ってきた子供には、「今日は大丈夫だった?」と声をかけてみましょう。「うまく汗をかけなかった」「頭がクラクラした」といった反応があるときは、「それは軽い熱中症だったかも」と教えてやることも大切です。次はどうしたらいいか、親子で考えることができれば、プチ熱中症も学びの材料になると思います。
熱中症は原因がシンプルで、予防できる疾患です。ふだんから親子でコミュニケーションをとっておけば、早めの対策で予防につなげることができるでしょう。小児科医としては、熱中症対策を通して、自己管理能力を身につけてほしいと強く思っています。
※本稿は、『プレジデントFamily2025夏号』の一部を再編集したものです。
(小森こどもクリニック院長 小児科医 小森 広嗣 構成=池田純子)
熱中症に負けない万全の対策をご紹介。
■Q.熱中症患者が増えているのはなぜですか?
私たち人間の体は、高温多湿(暑熱)な環境下では、汗をかくことや皮膚から熱を放出することで、体温をコントロールしています。ところが、高温多湿の状態が長く続いたり、昨今のような災害級の暑さになったりすると、体温の調整機能が追いつかなくなり、熱が体内にこもって、時に40℃を超える高体温になってしまいます。この体内に熱がこもった状態が「熱中症」です。
高体温になると、熱を逃がそうと大量に汗をかくため、体内の水分や塩分(ナトリウムやカリウムなどの電解質)が減っていきます。いわゆる脱水状態になり、血液の流れも悪くなり、酸素や栄養がいきわたらなくなるため、脳をはじめ臓器へのダメージも出てきます。
特に子供は、汗腺が未熟で体温調整の機能が十分に発達していないために、熱中症にかかりやすいといわれています。
初期症状は、強い口の渇き、めまいや顔のほてり、体のだるさ、立ちくらみ、生あくび、頭痛など。中期になると、吐き気や嘔吐(おうと)、発熱、大量の発汗(あるいはまったく汗をかかない)、元気がない、筋肉痛や筋肉のけいれんといった症状があらわれます。体温が40℃を超えたり、呼びかけに反応しない、目の焦点が合わない、体全体のけいれんなどの症状が出てきたら、すぐに医療機関を受診する必要があります。
熱中症にかからないためには、汗をかきやすい体にしておくことと、体を暑さに少しずつ慣れさせていくこと(暑熱順化)が必要です。ところが、近年、この二つが難しくなってきています。
熱中症にかかる人が増えているのも、そのためだと私は思っています。
■Q.昔と何が違っているのですか?
「汗をかくこと」なんて、当たり前にできると思っていますよね。ところが、汗をかくにも能力が必要で、最近の子供(大人も)はその力が低下してきているのです。
少し前までは、炎天下でも走り回って、思い切り汗をかく子供たちの姿を当たり前に見ることができましたが、今は(特に都会では)外で遊べる場所が減ってきています。また、家庭でも学校でもエアコンが効いていて、汗をかく環境にもないですよね。
気候変動による影響も見逃せません。猛暑日が増えてきて、ますます「外で遊ぶ」機会は減っています。汗をかくチャンスが失われることで、汗腺が発達せず、汗をかけない子供たちが増えているのです。
さらに、子供たちが汗をかきにくくなっている理由が、もう一つあります。
汗腺の数は、生まれたときから変わりません。しかし、実際に汗を出すために機能している「能動汗腺」の数は、2~3歳までにたくさん汗をかくことで増えていくといわれています。
ところが、今の小学校低学年の子供たちは、コロナ禍で幼少期を過ごしました。
前述したライフスタイルの変化に加え、不要不急の外出制限や、密を避けるために友達と一緒に体を動かして遊ぶことも自粛させられたのです。この子たちの能動汗腺は十分に発達していないという恐れがあるのです。
とはいえ大人になってからでも、いわゆる熱帯地域で生活すると、能動汗腺が増えるという研究結果もありますから、今からでも遅くはありません。少しでも汗をかく機会を取り入れて、能動汗腺を増やす努力をしていただきたいと思います。具体的なアドバイスは後述しますね。
近年の気候変動は、暑熱順化を難しくさせる要因にもなっています。少し前の日本は、春から夏にかけてゆっくりと気温が上がり、体も徐々に暑さに慣れていくことができました。ところが最近は、春を感じる前に夏日になることも。1日の中での寒暖差も激しくて、体がついていけない、と感じることもあるのではないでしょうか。
こうした理由から、熱中症の対策がこれまで以上に難しくなってきているのです。
■Q.熱中症はなぜ危険なのでしょうか?
風邪でも高熱が出ますが、熱中症の熱とは明らかに違います。
風邪による発熱は、原因となるウイルスを攻撃するために、体(脳)が自ら意図して、体温を上昇させるものです。
脳が設定した以上に体温が上がることはありません。ウイルスを撃退すると、発汗して体温は下がります。ですから風邪の発熱は、脳への大きなダメージはあまりありません。
ところが、熱中症の発熱は、脳の意思とは関係なく、外気温に体温調整が追いつかないためにどんどん上昇するのです。42℃を超えると、脳や中枢神経にダメージを与え、回復後も集中力や記憶力の低下、頭痛、めまい、ふらつき、疲労といった後遺症が数カ月にわたって残ることもあります。怠けているとか、夏バテなどと誤解されやすい症状ですが、熱中症の後遺症という可能性があることも知ってほしいですね。
また、吐き気やめまいがあっても、それを熱中症と自覚せずに過ごしている子もいます。これが、いわゆる“隠れ熱中症”です。
遅れて症状が出る“時差熱中症”というのもあります。夕方、涼しくなってから体がだるくなったり、立ちくらみが出たりする。夜になって受診してくる患者さんに、「日中は何をしていましたか」と聞くと、「外で3時間運動していました」と言われる。運動しても適切に汗がかけないまま、ゆっくり体に熱がこもっていき、時間差で発症しているのですね。
また午前中は平熱だったのに、午後にいきなり熱が出るケースもあります。吐き気や嘔吐がある場合は、胃腸炎と誤解してしまう場合もあり、対策を間違えると重症化することもあるので、注意が必要です。
■Q.熱中症にかからないためにどうしたらいいですか?
現代の日本では、春から徐々に、という自然の暑熱順化は難しくなっていますので、意識的に汗をかく習慣を大切にしてもらいたいと思います。
夏本番を迎える前から、散歩やサイクリングなどの軽い運動をしておきましょう。暑い時期になっても、朝夕の涼しいときに5分でも10分でもいいので、体を動かしておきましょう。
シャワーではなく、湯船に漬かって汗をかくこともおすすめです。40℃ほどのお湯に5分漬かるだけでもじんわり汗が出てくるはずです。
大事なのは、汗をかく活動を継続すること。汗をかかない日が続くと、せっかく身につけた暑熱順化が1~2週間で消えてしまうという報告もあります。
汗の拭き方にもコツがあります。かいた汗を肌に残したままだと、肌あれの原因になりますし、汗腺をふさいでしまうことにもなります。とはいえ、完全に拭いてしまうと肌が乾燥してしまいます。
理想は、皮膚にうっすら水分が残る程度に、やわらかいタオルでポンポンと、ほどよく汗を拭きとること。少し残った水分が蒸発して気化熱となり、体温を下げてくれますよ。
帽子や日傘をはじめ、首に巻く冷却材やハンディー扇風機、ファンつきの冷却服など、熱中症対策のグッズも進化してきています。うまく取り入れるといいでしょう。
同時に、生活習慣を整えることも大事です。体温を調節するのは自律神経です。寝不足や疲れがあると、脳の視床下部でコントロールされた自律神経が「暑い」「寒い」と感じる力が低下します。ニュースなどで、暑さを感じない高齢者の話を聞きますが、子供たちの中にも一定数います。しっかり睡眠をとって、脳のセンサーが働くようにしておきましょう。
寝るときも、エアコンを上手に使いましょう。
ほどよく汗がかける程度に温度設定をし、タイマー機能で切るのではなく朝までつけっぱなしがいいと思います。パジャマは長そで、長ズボンのものを着用し、タオルケットを体にかけておくとエアコンの風による皮膚の乾燥を防ぐことができて、快適に眠れます。
暑くなると、アイスクリームやジュースなど冷たいものが欲しくなりますが、温かいお茶やみそ汁をとることがおすすめです。特にみそ汁には塩分も含まれていますから、熱中症予防には最適です。
■Q.スポーツドリンクで水分補給って正しいですか?
熱中症の症状が出たら、まずは、水分と塩分を補給し、体温を下げること。緊急の場合は、水道水でもお茶でもかまいません。電解質も一緒にとれる経口補水液があればなおベストです。
体温を下げるためには、風通しのよい日陰や冷房の効いた場所に移動し、衣服をゆるめて体を楽にします。そのうえで、首やわきの下、鼠径(そけい)部(脚のつけ根)など、血管の集まっているところを保冷剤や冷たいタオルで冷やします。
水分がとれて、意識がしっかり戻れば、通常は半日から1日で症状は治まります。解熱剤は不要です。ただし吐き気や頭痛などの症状が半日から1日続くときは、医療機関でしっかり診てもらったほうがよいですね。
熱中症の予防として、スポーツドリンクを飲む子がいますが、こちらは緊急の場合以外、控えていただいたほうがいいと思います。
スポーツドリンクはとても糖分が多いからです。
WHOが推奨する1日の糖分の摂取量は25g(学童は20g)ですが、スポーツドリンクの中には500mLに30gもの糖分が入っているものもあります。これは角砂糖7~9個分に当たります。1本でも1日の摂取量を超えてしまいますから、毎日飲み続けると高血糖になる可能性があります。いわゆるペットボトル症候群ですね。
ちなみに、経口補水液の糖分は、500mLで9g程度(※オーエスワンは100mL当たり1.8g)。いずれも場面限定で飲むようにして、日常的に水やお茶の代わりに飲まないことが大前提です。
■Q.特に、子供たちにしてほしいことは何ですか?
私は、子供たちを過度に守りすぎるのもどうかと危惧しています。
今は学校でも家庭でも、空調が効いていて、暑さ対策、熱中症対策がしっかりとられています。もちろん、それは気候変動の影響もあり、今の時代に合わせていることなので、必要なことではありますが、子供たちが管理されすぎているようにも思うのです。
暑いなら暑いなりに、子供自身がどうするか考え、熱中症を避けるために工夫する。そうすることで、子供の自己管理能力が育つのではないでしょうか。
もちろん最初は、親御さんのサポートが必要です。
例えば、親子で朝、天気予報を見て、今日はどういう服装で出かけるのか、水分はどれぐらい必要になるか、一緒に考えてみてはどうでしょう。学年が上がったら、それを自分ひとりでできるようになるといいですね。
外から帰ってきた子供には、「今日は大丈夫だった?」と声をかけてみましょう。「うまく汗をかけなかった」「頭がクラクラした」といった反応があるときは、「それは軽い熱中症だったかも」と教えてやることも大切です。次はどうしたらいいか、親子で考えることができれば、プチ熱中症も学びの材料になると思います。
熱中症は原因がシンプルで、予防できる疾患です。ふだんから親子でコミュニケーションをとっておけば、早めの対策で予防につなげることができるでしょう。小児科医としては、熱中症対策を通して、自己管理能力を身につけてほしいと強く思っています。
※本稿は、『プレジデントFamily2025夏号』の一部を再編集したものです。
(小森こどもクリニック院長 小児科医 小森 広嗣 構成=池田純子)
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