ChatGPTの次世代モデル「GPT-5」がリリースされた。OpenAIの発表より一足先に体験したITジャーナリストの本田雅一さんは「初めてAIチャットサービスが登場した時以上の衝撃的な進化だ。
■「博士号級の専門家レベルに達した」
「新しい技術からGPT-4oに戻ると、まるで古臭い技術を使っているような感覚になる」──OpenAIのCEOサム・アルトマンはそう話した。数字は技術の世代を表しており、今回は第4世代から第5世代にステップアップしている。
「GPT-3は高校生レベル、GPT-4は優秀な大学生レベル、GPT-5は初めてPhD級の専門家レベルに達した」
これはプレゼン上での単なる比喩ではない。実際に数学、科学、プログラミングの高度な問題を、人間の専門家と同等かそれ以上のレベルで解決できるようになっている。また画像、音声、動画などを並行して分析しながら動作するため、図表やグラフなどのデータを識別しての問題解決も可能になっている。
「誰もが“博士号級”の専門家チームをポケットに入れて持ち歩けるスーパーパワーを手に入れることができる」とアルトマンは言う。
では従来のAIとは何が違っているのか? そして、私たちの日常や仕事に、どのような影響が生まれるのだろう。
■“アシスタント”から“パートナー”へ
これまでのChatGPTは便利だが、視点を変えると特定の知識を引き出す、あるいは文章生成を手伝ってもらうアシスタント程度のものだった。特に推論機能を持たない無料版を使っているユーザーはそう思っていただろう。
しかし、GPT-5が組み込まれた新世代のChatGPTは、道具のように使いこなす必要はなくなる。
従来のChatGPTでは、会話で知識を引き出すためにはGPT-4o、複雑な思考が必要な時には推論モデルのo3といった具合に、私たちユーザーがAIのモードを切り替える必要があった。
GPT-5では、そうした従来の使い方においても極めて高性能になり、より自然な文章や画像、動画の生成ができるようになった。そして、もっとも大きな違いは、使いこなしが不要になることだ。
新世代ChatGPTでは、ユーザーが求める指示文の内容によって簡単な質問には瞬時に答え、複雑な問題には繰り返し順序立てて考えながら最終的な回答に到達する。しかも、文章、画像、音声、動画を人間の脳が統合的に認識して処理するように、同時に並行して情報として取り込みながら回答を作り出す。
■出張の移動と宿泊の手配を一任できる
自律的に動作してユーザーを助ける「エージェント」も進化する。
新しいChatGPTは質疑応答ではなく、数時間かけるようなタスクを継続的に実行できる。なかでも重要なのが“ツール使用能力”だ。ここでいうツールとは、ウェブブラウザ、ターミナル、APIを通じて接続したサービス(Google Workspaceなど)といった人間が使ってきた知的生産性ツールに、AIが直接アクセスして目的を達成できることだ。
複数のツールを使いこなす必要がある場合でも、正確に作業を遂行する。
たとえばカレンダーの中にある出張スケジュールに合わせ、フライトとホテル、送迎車などの手配を行い、その結果をカレンダーの中に書き込むといったことも行えるようになる。AIは認識こそしないものの、プログラミングが得意なためウェブに書かれている内容を分析するプログラム(Python)を自己生成しながら、的確にタスクをこなす。
初歩的なものは現在のChatGPTにも入っているが、的確に複数のツールを使いこなすまでには至っていない。
人間がウェブブラウザで情報を検索し、ターミナルでコマンドを実行し、各種APIを呼び出して作業するのと同じように、AIが自律的にこれらのツールを使い分ける。もちろん、レポートの品質も上がる。
■だれでもアプリを作れる時代が到来
「競合他社の最新動向を調査してレポートを作成してください」と依頼すれば、AIが自動的にウェブブラウザで情報収集し、分析プログラムを生成して分析結果をまとめ、それを特定のデジタルデータに報告書の形式で記述する作業をバックグラウンドで行ってくれる。
プログラミング知識がない読者は、AIのコーディング(プログラム生成)機能について、情報を読み飛ばしているかもしれない。しかし、新しいChatGPTのコーディング機能は、おそらく多くの人にとって驚くものに仕上がっている。このジャンルではClaude 4も優秀だが新しいChatGPTでは、質の高い実際に動くアプリをすぐに生成、テストでき、修正も指示文章だけで行える。
デモでは次のような指示が与えられた。
「パートナーがフランス語を学習できる美しくインタラクティブなウェブアプリを作ってください。日々の進歩を記録し、フラッシュカードやクイズなどの様々なアクティビティを含めてください。さらに、スネークゲームをベースにした教育ゲームも組み込んでください。ヘビをネズミに、リンゴをチーズに置き換えて、マウスがチーズを食べるたびにフランス語の新しい単語を音声で教えてくれるようにしてください」
このような指示を与えられると、新しいChatGPTは数分で700行あまりのプログラムコードを生成した。
実際に完成したアプリには、指示通りにフラッシュカード機能、クイズ機能、そしてネズミとチーズゲームを含む本格的なウェブアプリケーションがきちんと動作していた。それなりに経験を持つプログラマーでも、作業そのものには時間がかかる。おそらく数時間から、丸1日程度はかかるだろう。
簡単なアプリならば、プログラマーを雇う必要はなくなる。要件を書き出すだけで、作ってくれるからだ。
ではプログラマーという職業はなくなるのか?
■プログラマーの「これからの仕事」
しかし、アルトマンの答えは「ノー」すなわち、“なくならない”というものだ。
「すでにコーディングの大幅な効率化が進んでいますが、それ以上に多くのソフトウェアニーズが生まれ続けています。ソフトウェア作成コストが下がることで、さらに多くのソフトウェアのニーズが生まれる。その結果、より多くのソフトウェアエンジニアの仕事が生まれるでしょう」
これは産業革命時の状況と似ている。機械の導入で一部の仕事は消えたが、新しい産業が生まれることで、むしろ雇用は大幅に増えたのだ。アイデアを簡単に“ソフトウェア”という形にできるようになれば、新しいサービスや事業機会が爆発的に増える可能性がある。
AIの活用が始まってから言われてきた、さまざまな仕事への影響は、このGPT-5世代で決定的に大きくなっていくはずだ。GPT-5はやっと公開されたばかりであり、今後、エージェント機能の充実や機能の強化、改良、それに学習の継続的な強化などによって、これからまだまだ質が高まっていく。まだ“第5世代GPTのスタート地点”なのだ。
■雇用は失われないが“質”は変化する
たとえば事務職や営業アシスタントといったバックオフィス業務は、資料作成やデータ分析の多くがAIに置き換わるだろう。法曹界でのパラリーガル(弁護士補助職)なども同様だ。
しかし、そうした“作業”への負荷が軽くなる分、顧客との直接的なコミュニケーションや戦略的な提案により多くの時間を使えるようになるはずだ。後方支援ではなく、自身がビジネスに関わるようになっていくだろう。
営業・マーケティング職の場合、市場分析や提案書作成はAIが瞬時に処理してくれるようになる。一方で営業担当者は、担当顧客との関係構築や複雑な交渉に集中できるようになるはずだ。
また、異なる種類の資料を複数参照しながら、まったく新しいアイデアを思いつくといった事は、AIにはまだできない。AIに資料分析は任せ、またキャッチコピー等の文章もAIにその下書きを書いてもらい、新たな戦略作成に集中できるだろう。ブランド戦略や顧客体験の立案は、人間が行うべきものだ。
また“非プログラマー”でも複雑なアプリケーションを作れるようになると、美容師が自分専用の顧客管理アプリを作ったり、町の商店主がオンライン注文システムを構築したり、教師が生徒向けの学習ゲームを開発したりと、現場主導のソフトウェアが多数生まれるようになる。
■AI活用が遅れる日本への朗報
AI活用の立ち上がりは早かった日本市場だが、AIサービスの社会への浸透は進んでいない。
個人がAIを活用している割合は9%で、中国の56%、アメリカの46%と比べて大幅に低い(総務省2024年度版情報通信白書)。企業での利用も5割に満たず、アメリカの85%、中国の84%に大きく後れを取っている。AI投資額も7億ドルで、アメリカの672億ドル、中国の78億ドルと比較すると桁違いの差がある(スタンフォード大学調査)。
だが最新のGPT-5が組み込まれたChatGPTが無料で利用可能になることで、有料サービスの壁に阻まれていた多くの日本人が最先端のAI技術に触れ、個人での活用が大きく伸びる可能性がある。
新世代ChatGPTの進化は大きい。ここで新しいサービスに触れない手はない。
■「AIを使える人材」と「使えない人材」の格差
まず、恐れずに触ってみることだ。GPT-5は無料版ユーザーを含むすべての人が利用可能になる(使用量の制限はあり)。実際に使って可能性を体感してみることが重要だろう。料理のレシピから仕事の資料作成まで、日常的に使ってみることで新しい活用方法を探索してみよう。
使っているうちに、自分にしかできないスキルが見えてくるはずだ。AIには創造性、共感力、複雑な判断力は持ち得ない。また他人との深いコミュニケーションもAIにはない。
また、技術の進歩は加速している。GPT-5が来月にはさらに進化しているかもしれない。新しいツールや働き方に柔軟に適応する能力が重要になる。
そして一番重要なことは、AIを活用する立場になること。AIに仕事を奪われるのではなく、AIを使って生産性を向上させる。「AIを使える人材」と「使えない人材」の格差は今後急速に拡大するはずだ。
GPT-5は確かに驚異的なAIだが、技術は道具に過ぎない。その道具をどう使って、どんな未来を築くのか。
新しい時代の扉が開かれた今、まずは一歩、踏み出してみることを勧めたい。
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本田 雅一(ほんだ・まさかず)
ITジャーナリスト
IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。
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(ITジャーナリスト 本田 雅一)
しかも無料版ユーザーでも利用することができ、日本でも個人での活用が大きく伸びる可能性がある」という――。
■「博士号級の専門家レベルに達した」
「新しい技術からGPT-4oに戻ると、まるで古臭い技術を使っているような感覚になる」──OpenAIのCEOサム・アルトマンはそう話した。数字は技術の世代を表しており、今回は第4世代から第5世代にステップアップしている。
「GPT-3は高校生レベル、GPT-4は優秀な大学生レベル、GPT-5は初めてPhD級の専門家レベルに達した」
これはプレゼン上での単なる比喩ではない。実際に数学、科学、プログラミングの高度な問題を、人間の専門家と同等かそれ以上のレベルで解決できるようになっている。また画像、音声、動画などを並行して分析しながら動作するため、図表やグラフなどのデータを識別しての問題解決も可能になっている。
「誰もが“博士号級”の専門家チームをポケットに入れて持ち歩けるスーパーパワーを手に入れることができる」とアルトマンは言う。
では従来のAIとは何が違っているのか? そして、私たちの日常や仕事に、どのような影響が生まれるのだろう。
■“アシスタント”から“パートナー”へ
これまでのChatGPTは便利だが、視点を変えると特定の知識を引き出す、あるいは文章生成を手伝ってもらうアシスタント程度のものだった。特に推論機能を持たない無料版を使っているユーザーはそう思っていただろう。
しかし、GPT-5が組み込まれた新世代のChatGPTは、道具のように使いこなす必要はなくなる。
従来のChatGPTでは、会話で知識を引き出すためにはGPT-4o、複雑な思考が必要な時には推論モデルのo3といった具合に、私たちユーザーがAIのモードを切り替える必要があった。
画像作成、音声認識、動画処理なども、それぞれ別々の機能、AIモデルとして動いている。
GPT-5では、そうした従来の使い方においても極めて高性能になり、より自然な文章や画像、動画の生成ができるようになった。そして、もっとも大きな違いは、使いこなしが不要になることだ。
新世代ChatGPTでは、ユーザーが求める指示文の内容によって簡単な質問には瞬時に答え、複雑な問題には繰り返し順序立てて考えながら最終的な回答に到達する。しかも、文章、画像、音声、動画を人間の脳が統合的に認識して処理するように、同時に並行して情報として取り込みながら回答を作り出す。
■出張の移動と宿泊の手配を一任できる
自律的に動作してユーザーを助ける「エージェント」も進化する。
新しいChatGPTは質疑応答ではなく、数時間かけるようなタスクを継続的に実行できる。なかでも重要なのが“ツール使用能力”だ。ここでいうツールとは、ウェブブラウザ、ターミナル、APIを通じて接続したサービス(Google Workspaceなど)といった人間が使ってきた知的生産性ツールに、AIが直接アクセスして目的を達成できることだ。
複数のツールを使いこなす必要がある場合でも、正確に作業を遂行する。
たとえばカレンダーの中にある出張スケジュールに合わせ、フライトとホテル、送迎車などの手配を行い、その結果をカレンダーの中に書き込むといったことも行えるようになる。AIは認識こそしないものの、プログラミングが得意なためウェブに書かれている内容を分析するプログラム(Python)を自己生成しながら、的確にタスクをこなす。
初歩的なものは現在のChatGPTにも入っているが、的確に複数のツールを使いこなすまでには至っていない。
人間がウェブブラウザで情報を検索し、ターミナルでコマンドを実行し、各種APIを呼び出して作業するのと同じように、AIが自律的にこれらのツールを使い分ける。もちろん、レポートの品質も上がる。
■だれでもアプリを作れる時代が到来
「競合他社の最新動向を調査してレポートを作成してください」と依頼すれば、AIが自動的にウェブブラウザで情報収集し、分析プログラムを生成して分析結果をまとめ、それを特定のデジタルデータに報告書の形式で記述する作業をバックグラウンドで行ってくれる。
プログラミング知識がない読者は、AIのコーディング(プログラム生成)機能について、情報を読み飛ばしているかもしれない。しかし、新しいChatGPTのコーディング機能は、おそらく多くの人にとって驚くものに仕上がっている。このジャンルではClaude 4も優秀だが新しいChatGPTでは、質の高い実際に動くアプリをすぐに生成、テストでき、修正も指示文章だけで行える。
デモでは次のような指示が与えられた。
「パートナーがフランス語を学習できる美しくインタラクティブなウェブアプリを作ってください。日々の進歩を記録し、フラッシュカードやクイズなどの様々なアクティビティを含めてください。さらに、スネークゲームをベースにした教育ゲームも組み込んでください。ヘビをネズミに、リンゴをチーズに置き換えて、マウスがチーズを食べるたびにフランス語の新しい単語を音声で教えてくれるようにしてください」
このような指示を与えられると、新しいChatGPTは数分で700行あまりのプログラムコードを生成した。
あとは実行ボタンを押すだけでブラウザ上で動作した。
実際に完成したアプリには、指示通りにフラッシュカード機能、クイズ機能、そしてネズミとチーズゲームを含む本格的なウェブアプリケーションがきちんと動作していた。それなりに経験を持つプログラマーでも、作業そのものには時間がかかる。おそらく数時間から、丸1日程度はかかるだろう。
簡単なアプリならば、プログラマーを雇う必要はなくなる。要件を書き出すだけで、作ってくれるからだ。
ではプログラマーという職業はなくなるのか?
■プログラマーの「これからの仕事」
しかし、アルトマンの答えは「ノー」すなわち、“なくならない”というものだ。
「すでにコーディングの大幅な効率化が進んでいますが、それ以上に多くのソフトウェアニーズが生まれ続けています。ソフトウェア作成コストが下がることで、さらに多くのソフトウェアのニーズが生まれる。その結果、より多くのソフトウェアエンジニアの仕事が生まれるでしょう」
これは産業革命時の状況と似ている。機械の導入で一部の仕事は消えたが、新しい産業が生まれることで、むしろ雇用は大幅に増えたのだ。アイデアを簡単に“ソフトウェア”という形にできるようになれば、新しいサービスや事業機会が爆発的に増える可能性がある。
AIの活用が始まってから言われてきた、さまざまな仕事への影響は、このGPT-5世代で決定的に大きくなっていくはずだ。GPT-5はやっと公開されたばかりであり、今後、エージェント機能の充実や機能の強化、改良、それに学習の継続的な強化などによって、これからまだまだ質が高まっていく。まだ“第5世代GPTのスタート地点”なのだ。
■雇用は失われないが“質”は変化する
たとえば事務職や営業アシスタントといったバックオフィス業務は、資料作成やデータ分析の多くがAIに置き換わるだろう。法曹界でのパラリーガル(弁護士補助職)なども同様だ。
しかし、そうした“作業”への負荷が軽くなる分、顧客との直接的なコミュニケーションや戦略的な提案により多くの時間を使えるようになるはずだ。後方支援ではなく、自身がビジネスに関わるようになっていくだろう。
営業・マーケティング職の場合、市場分析や提案書作成はAIが瞬時に処理してくれるようになる。一方で営業担当者は、担当顧客との関係構築や複雑な交渉に集中できるようになるはずだ。
また、異なる種類の資料を複数参照しながら、まったく新しいアイデアを思いつくといった事は、AIにはまだできない。AIに資料分析は任せ、またキャッチコピー等の文章もAIにその下書きを書いてもらい、新たな戦略作成に集中できるだろう。ブランド戦略や顧客体験の立案は、人間が行うべきものだ。
また“非プログラマー”でも複雑なアプリケーションを作れるようになると、美容師が自分専用の顧客管理アプリを作ったり、町の商店主がオンライン注文システムを構築したり、教師が生徒向けの学習ゲームを開発したりと、現場主導のソフトウェアが多数生まれるようになる。
■AI活用が遅れる日本への朗報
AI活用の立ち上がりは早かった日本市場だが、AIサービスの社会への浸透は進んでいない。
個人がAIを活用している割合は9%で、中国の56%、アメリカの46%と比べて大幅に低い(総務省2024年度版情報通信白書)。企業での利用も5割に満たず、アメリカの85%、中国の84%に大きく後れを取っている。AI投資額も7億ドルで、アメリカの672億ドル、中国の78億ドルと比較すると桁違いの差がある(スタンフォード大学調査)。
だが最新のGPT-5が組み込まれたChatGPTが無料で利用可能になることで、有料サービスの壁に阻まれていた多くの日本人が最先端のAI技術に触れ、個人での活用が大きく伸びる可能性がある。
新世代ChatGPTの進化は大きい。ここで新しいサービスに触れない手はない。
■「AIを使える人材」と「使えない人材」の格差
まず、恐れずに触ってみることだ。GPT-5は無料版ユーザーを含むすべての人が利用可能になる(使用量の制限はあり)。実際に使って可能性を体感してみることが重要だろう。料理のレシピから仕事の資料作成まで、日常的に使ってみることで新しい活用方法を探索してみよう。
使っているうちに、自分にしかできないスキルが見えてくるはずだ。AIには創造性、共感力、複雑な判断力は持ち得ない。また他人との深いコミュニケーションもAIにはない。
また、技術の進歩は加速している。GPT-5が来月にはさらに進化しているかもしれない。新しいツールや働き方に柔軟に適応する能力が重要になる。
そして一番重要なことは、AIを活用する立場になること。AIに仕事を奪われるのではなく、AIを使って生産性を向上させる。「AIを使える人材」と「使えない人材」の格差は今後急速に拡大するはずだ。
GPT-5は確かに驚異的なAIだが、技術は道具に過ぎない。その道具をどう使って、どんな未来を築くのか。
新しい時代の扉が開かれた今、まずは一歩、踏み出してみることを勧めたい。
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本田 雅一(ほんだ・まさかず)
ITジャーナリスト
IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。
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(ITジャーナリスト 本田 雅一)
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