~有機電子材料や医薬品等の合成に必要なC-Nクロスカップリング反応における触媒使用量の低減およびパラジウムの低残留化による反応後精製工程の省力化が可能に~

エヌ・イー ケムキャット株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 櫛田祭)は、2022年5月30日開催の石油学会総会において、「N-ヘテロ環状カルベン-パラジウム錯体触媒およびその錯体固定化触媒に関する研究」に対し、2021年度石油学会奨励賞(工業部門)を受賞しましたのでお知らせいたします。

当社は本研究において、N-ヘテロ環状カルベン(=NHC)配位子のバックボーン炭素に直接シリル基を導入した新たな「NHC-パラジウム錯体触媒」を合成いたしました。
特にジメチルアリルシリル基を導入した錯体触媒は、有機電子材料や医薬品等の合成に使用されるC-Nクロスカップリング反応において、既存のNHC-パラジウム錯体触媒よりも、触媒活性が最大2.5倍に向上*¹することを明らかにしました。加えて、本錯体触媒は、市販のNHC化合物を原料に用いて、わずか3ステップで合成が可能であり、またシリル基のケイ素原子上の置換基を種々変更することで、NHC配位子の電子特性を供与性や求引性に変換可能であることを究明しました。

本研究では、さらに上記NHC-パラジウム錯体触媒をポリスチレン樹脂に固定化した「錯体固定化触媒」の合成にも成功いたしました。従来のNHC固定化法では、NHC配位子の特徴である窒素上置換基を固定化部位に利用しており、その嵩高さを十分活かせずに、触媒活性が低下してしまうことが課題でした。今回、バックボーン炭素のシリル基を担体との結合点とした新たな固定化法を考案したことにより、NHCの窒素上置換基を十分活かすことが可能となりました*¹(図1)。

[画像1: https://prtimes.jp/i/74409/7/resize/d74409-7-29cb9cc0aaa495358e82-0.jpg ]


図1.触媒設計コンセプト

加えて、電子的な触媒活性向上効果も利用することで、C-Nクロスカップリング反応に対し、NHC-パラジウム錯体と同等の触媒活性が発現可能であることが明らかとなりました。
また、反応後の残留パラジウム量の大幅な低減(検出限界以下:<1ppm)を実現したことで、本触媒は錯体触媒と固体触媒の両方の特徴を併せ持つユニークな触媒であることが判明いたしました。*²(図2)
[画像2: https://prtimes.jp/i/74409/7/resize/d74409-7-1b21b3f4df06a13a1a94-1.png ]

図2.錯体固定化触媒の触媒活性評価
(上段:錯体固定化触媒の転化率、下段:NHC-パラジウム錯体触媒の転化率)

以上の学術面並びに実用面から、本研究成果が高く評価され、この度の受賞に至りました。

今後は、これら新規触媒を産業界に提供することで、高活性化による触媒使用量の低減や、残留パラジウム量低減による反応後精製工程の簡略化などに貢献していきます。また今回開発した触媒技術は、C-Nクロスカップリング反応以外の触媒反応や、パラジウム以外の金属錯体固定化触媒の開発にもつながるため、さらなる研究開発を推進してまいります。現在これら触媒の販売に向けて、量産体制の整備を進めており、さらなる事業の拡大を目指します。

*¹ Organometallics 2019, 38, 375−384. (DOI: 10.1021/acs.organomet.8b00757)

*² Organometallics 2019, 38, 1872−1876. (DOI: 10.1021/acs.organomet.9b00159)

※本研究は、エヌ・イー ケムキャット株式会社と独立行政法人産業技術総合研究所 触媒化学融合センター 崔準哲博士、深谷訓久博士、松本和弘博士らの研究グループとの共同研究成果です。


■エヌ・イー ケムキャット株式会社について:
エヌ・イー ケムキャットでは、化学触媒・自動車触媒(三元触媒・ディーゼル自動車触媒等)・燃料電池触媒等の開発・製造・販売や貴金属触媒の回収精製を行っております。

【本社】〒105-5127 東京都港区浜松町二丁目4番1号 世界貿易センタービルディング南館27階
【沼津事業所】〒410-0314 静岡県沼津市一本松678
【つくば事業所】〒306-0608 茨城県坂東市幸神平25番3号
【代 表 者】代表取締役社長 櫛田 祭
【設立年月】1964年4月
【資本金】34億2,350万円
【URL】https://www.ne-chemcat.co.jp/

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