VUILD株式会社は、『「生きる」と「つくる」がめぐる社会へ』を会社ビジョンに5つの事業を展開し、テクノロジーの力で誰もが作り手になれる世界の実現を目指しています。具体的には、①デジタルファブリケーションの加工拠点を全国を張り巡らせ、②それらを繋ぐツールを開発し、そこから③内装・④住宅・⑤建築領域へと、枝葉を伸ばしています。


そのうちのひとつであるデジタル家づくりサービス『NESTING(ネスティング)』からこの度、デジタルファブリケーション*技術を用いて、施主が主体となって設計から施工までをおこなう「住宅キット」をリリースいたしました。

施主が主体となって、家族や仲間とお祭りのように楽しくつくる。そんな家づくりの在り方を、わたしたちは「co-build(コビルド)」と呼んでいます。これまで当たり前だった、「家は買う(もしくは借りる)もの」という考え方から、「家は自分たちでつくるもの」に変化させることで、建設業界が抱える人材不足や建設費高騰の課題を解決することも狙いにしています。

*デジタルファブリケーション:3D CADなどのデータを、3Dプリンタや木材加工機械で読み込んで造形すること。これまでの製造技術では作成困難な複雑な形状のものでも容易に製造できる。





今回は、香川県・直島にて、着工からわずか2か月でco-buildにより竣工した第1棟目を担当した、西村俊貴/アーキテクトビルダー(設計施工管理)、井上匡都/コンストラクションマネージャー(現場管理)に、co-buildの挑戦と面白さについて話を聞きました。

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<写真左>

西村俊貴/アーキテクトビルダー(設計施工管理)

1994年熊本県生まれ。東京大学工学部建築学科修士課程修了。2018年に株式会社鯰組に新卒入社する。2016年RESIDIAリノベーションコンペ入賞、同年建築学生ワークショップ明日香村優秀賞受賞。2021年一級建築士合格。

2023年4月にVUILDに入社。学生時代からさまざまなプロジェクトで建築に関するワークショップを手掛けるほか、小皿や蔵カフェの階段等、さまざまな小物制作を行う。VUILDでは、NESTINGの新しいモデル・工法を考える仕事をしている。



<写真右>

井上匡都/コンストラクションマネージャー(現場管理)

香川県小豆島生まれ。マル喜井上工務店代表。高校卒業後、大阪の専門学校でインテリアデザインを学び、卒業後は高松市内の店舗内装会社に新卒入社。

5年間の全国各地での店舗内装の現場監督業を経て、高松市内のキッチンメーカーにて企画営業職へ従事。28歳の時に実家が営むマル喜井上工務店を二代目として引き継ぐ。

VUILD代表・秋吉との共通の友人を介し、小豆島で工務店を探していたVUILDの建築プロジェクトに参画するように。昨年7月竣工の小豆島ゲートラウンジに続き、NESTING co-buildモデル1棟目となる直島プロジェクトでもコンストラクションマネージャーを務める。

現場作業を削減し2ヶ月で完成する木造住宅、手探りでの挑戦

西村 NESTINGは、自分で設計し仲間たちと「ともにつくる(=co-build)」をコンセプトにした住まいづくりサービスです。そのため住宅キットは、未経験の方でも建設に参加できるように工法開発や設計がされていますが、今回は僕たちにとっても初の試みであったため、手探りでの挑戦となりました。着工から2ヶ月、正味で言うともう少し短かったですが、なんとか無事に竣工させることができました。


建設業界に革命を!VUILDの「NESTING・住宅キット」が実現する、仲間たちとともにつくるco-buildな家作り
photo by Tomoyuki Kusunose



Q 通常の家づくりでは、どれくらいかかるものなのでしょうか?

西村 今回は約75㎡の平家ですが、注文住宅でつくった場合、基礎の打設から竣工まで4ヶ月ほど掛かると思います。NESTINGの工期を短縮するのに大きく影響しているのは、単管パイプを用いた杭基礎を採用した基礎工事です。この方法だと2日で基礎を完了することができます。工程がいくつもあるコンクリート基礎と違って、プロが正しい位置さえ出しておけば、素人の人にも杭を打ち込むことはできそうだったので、co-buildのコンセプトに合っていると思い採用しました。

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他には、できるだけ工場でプレカット・プレアセンブルしたものを、現場で取り付けるだけにするようにしています。今回は外壁・天井をパネル化することで、現場での作業をかなり減らすことができました。


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初挑戦の直島プロジェクト、現場のリアルと困難の克服

Q 初めての試みということで、どんな苦労がありましたか?

西村 最初から終わりまでずっとバタバタでしたね(笑)。毎日現場を動かしながら、平行して決まってないところを詰めたり調整したりと、施工中は忙しくしていました。

井上 プロではない方と共に現場で作業する、初めての試みということももちろんですが、直島は、離島特有の物流の状況があったり、資材搬入や置き場の確保など、スムーズな進行を支える裏方の整備にも多くの挑戦がありました。

また、未経験の方でも施工に参加できるように設計されてはいるものの、現実的な問題として、現場をサポートする職人さんと同じ空間で一緒に作業しても、全体の工程に遅れがでないような工夫が必要とされました。職人にとってはいつもと様子の異なる現場になるので、いつも通りのペースで仕事ができるようケアしたり、先回りしてフォローしたりする必要がありました。

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Q 直島の現場は、どのような体制で進めたのでしょうか?

西村 今回、co-buildの山場は「建て方(たてかた)」と呼ばれる、家の柱や梁、屋根の構造を組み上げる工程でした。建て方は週末開催にして、お施主さんとそのご友人10人ほどが集まって、みんなで組み立てました。
平日は僕や井上さん立ち会いのもと、水道工事業者さんや、電気工事業者さんなどの工事を進めていきました。

Q 具体的に、お施主さん方はどのような作業を現場で行なったのでしょうか?

西村 建て方の他にも、お施主さんは週末ごとに現場で様々な作業をおこなっていただきました。断熱材を詰めたり、内壁やウッドデッキの塗装、、床材を貼ったりと、出来るところはお施主さんに主体的に作業を進めてもらいました。NESTINGの住宅キット部材は、1つのパーツあたり重さを最大10kg程度までとしているので、女性の方でも工程を進めていただけます。毎週東京から来てくれて「次は何をすればいいですか?」と、積極的な方だったので、次はどの作業をお願いしよう?は常に頭にありましたし、井上さんともよく相談しました。

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井上 お施主さんと職人さん、それぞれに任せたいところを考慮しながら現場を進めました。お施主さんには、お願いできそうな作業を見極めつつ、時には伸びしろを出してもらうような作業にもチャレンジしてもらいました(笑)。

今回やってみてわかったのは、co-buildに対する熱量や作業スキル、理想の完成度合などはひとによって異なるということです。そのため、一人一人とコミュニケーションをとりながら、情報を汲み取って行くべきだと感じました。

西村 お施主さん自身も施工に参加するのは初めてで、やってみたい気持ちはあっても出来るかどうかはやってみないとわからないでしょうし、実際よりも気軽に捉えていて、やってみたら結構大変だったということもあるかもしれません。一方で、普段からDIYに慣れているような方だと、僕たちの手を借りずとも自分で何でもできるという人もいるかもしれません。このように、参加される方は様々だと思うので、現場入りする前にも十分なコミュニケーションをとって、情報を把握することが大切だと感じています。

一緒に作業して一緒につくる、co-buildのおもしろさは現場での発見と余白

Q 初めてのco-buildの現場はいかがでしたか?

西村 お施主さんや友人の方たちが何人も来て、わいわいとみんなで一緒に建てるというのは、普段の現場にはない雰囲気で楽しかったです。施工を進めるなかで、「ここはこうしたいです」とお施主さんのこだわりが見えてきたり、家に対する愛着が大きくなっていく様子を間近で見られましたし、自分としても、完成品をただ受け渡すより、一緒に作業して一緒につくったものを喜んでくれる方がうれしい気分になるんだな、という発見もありました。

井上 僕も建て方のときの「みんなで一緒につくる」をみなさんが楽しんでいた様子はお祭りのような雰囲気で、一緒に共有できたのは良かったですね。

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Q NESTINGの住宅キットならではの印象的な出来事はありましたか?

西村 僕は、設計段階で決まっていることでも、お施主さんが「やっぱりこれがいい」となったら現場で変えてしまえるところがco-buildの良さのひとつだと思っています。段取りにおいても、「ここはお施主さんが自分でやってみるところ」「ここは逆にプロに任せた方が仕上がりが良くなる」というような話しをしながら、現場でお施主さんと一緒に決めていける。こういう柔軟性があるのは、他にはない面白さだと思います。

「図面は着工前に確定しているもの」というのが当たり前とされていますが、お施主さんにしてみれば、見慣れないCGで空間のイメージもできてないまま、それでも決めなくてはならなくて、決断せざるをえなかったことかもしれません。現場に入って自分の目で見て「本当はこうしたかった。」が出てくることだってあるんじゃないでしょうか。

もちろん、現場は常に進捗しているので、変更に対応するのは簡単なことではありませんが、それでも、その時に残されてる最善の選択をお施主さんと一緒に考えて、決めていける。そんな余白が許容されているところにco-buildの面白さを感じます。

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井上 co-buildの現場は、素人のお施主さんと一緒に現場作業するのが前提の場所なので、あれもダメ、これもダメ、だと成立しないし、自分も楽しくないと思うんです。

例えば、「足場にあがって屋根の上、見てみたいです!」と言われたら「危ないですよ!」じゃなくて、「今しかそんなことできないですからね。安全帯の使い方教えますね!」なんて言える方がいいですよね。自分の許容の内側でお施主さんにもできそうな仕事や体験をやらせてあげたり、できるようにしてあげる。それがco-buildの現場の面白さだと思います。

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co-buildで変わる建設業界と参加者の喜びや感動の体験

1棟目の直島でのNESTINGに参加したお施主さんのご友人が、作業が終わって疲れているはずなのに「楽しかった!またやりたい!」と仰っていたのが印象的でした。

NESTINGを通して、参加者がみずからの手で家や拠点をつくる喜び・感動を経験し、また次のものづくりや、他のお施主さんの家づくりに参加していく。そんな循環が広がることで、VUILDのビジョンである『「生きる」と「つくる」がめぐる社会へ』の実現につながっていきます。

実際に、1棟目のお施主さんは、2棟目に計画されている栃木県でのNESTING施工に参加されるとのことで、わたしたちが思い描いた循環が着実に広がり始めています。

これまで当たり前だった、「家は買う(もしくは借りる)もの」という考え方から、「家は自分たちでつくるもの」という考え方へ。そして、自分たちでつくることによって得られる愛着や喜びを愉しむ、そんな価値観が伝播していくことが、結果として、現在建設業界が抱える人材不足や建設費高騰の課題解決にもつながると考えています。

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(関連リンク)

NESTING WEB https://nesting.me/

instagram https://www.instagram.com/vuild_nesting/

プレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000031751.html