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「オフィス×壁画事業」を2018年から展開している株式会社NOMAL。事業開始7年目を過ぎ、導入社数が100社を超えた2024年にリブランディングに踏み切り、「NOMAL ART COMPANY」というサービス名称でリスタートを切りました。


そもそも「オフィス×壁画」というニッチ領域の事業がサービス開始から伸び続け、日本を代表する大企業にも採用されているのは何故なのでしょうか。

サービスの代表でもあり女性起業家でもある、平山美聡に「アートがビジネスに起こしうる化学反応」について話を聞きました。

会社にアートがあれば多くの人に興味をもってもらえるのでは?アートへの想いが事業化に

-そもそも何故こんなニッチな事業を始めたんですか?

ニッチですよね(笑)

起業時にはまず個人向けのアートの通販からはじめたのですが、個人が手軽にアートを購入してほしいというコンセプトだったので、どうしても単価は安く、ビジネスとしては難しい状況でした。また、購入してくれる人はアートが元々好きな人たちなので、アートの裾野を広げる活動にはつながらないなとも思いました。

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そこで考えたのが、オフィスの壁にアートを描くオフィスアート事業。会社にアートがあれば、これまではアートに縁がなかった会社員の人にも興味をもってもらえるのではと思ったからです。何から始めたらいいかわからなかったので、とりあえず行商のように絵をたくさん持って、オフィス設計会社に営業するところからはじめました。
そこから徐々にオフィスアートを手がけていくようになり、これまで100社以上の壁にオフィスアートを描きました。もともとニーズがあったから始めたというよりは、行動してみたらニーズがあった、というような形です。

事業開始7年目のアートの会社は、なぜ前年比130%以上に伸び続けてるのか?女性起業家が思う「アート」が「ビジネス」に化学反応を起こす理由



ビジョンや課題を共有し壁画制作へ、相互理解を深めるワークショップも実施

-「オフィス×壁画」サービスとはどのようなプロセスで導入されるのでしょうか?



まず、課題をヒアリングします。何故興味を持っていただいたのか、そこに壁画があることでどんな未来を達成したいのか。壁画でこんな未来を達成できたらどう思うか。ヒアリングを丁寧に行った後に、その未来を達成できそうなアーティストを5名ほどピックアップしてプレゼンを行います。この時はアーティストの過去作品をお見せしながら、アーティストの持ち味についてお話しします。


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例えば「世界一になる」というビジョンを持っていて、それを社員に強く伝えることがゴールだとしたら、「パワフルに世界一を表現できるアーティスト」や「柔らかく世界一を表現できるアーティスト」を候補として出して、どういったテイストが会社にとって良い効果をもたらすかを話し合うイメージです。

こうして話し合う中で、アーティストを決定していきます。描く場所も決めていきます。エントランスだと対外的なパブリックなイメージになるし、執務エリアだと働く社員に強くメッセージを伝えることができるので、場所によっても効果は異なります。

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アーティストが決まったら関与者も含めてキックオフミーティングを行い、改めて「何をどのように何のために描くか」をすり合わせていきます。ここではアーティストのクリエイティブ力を活かしながらフラットに議論できたら良いですね。


続いて、ご希望があれば「センスシェアリングワークショップ」を行います。オリジナル開発のワークショップで、アート思考のエッセンスを取り入れたもの。山口周さんのアドバイスを受けて2019年に開発しました。

アートのカードを使って、「自分の会社についての想いを口にし、共有する」ことが目的のワークショップで、30名程度で行います。このワークショップは正解や不正解があるものではないので、社員同士の相互理解にも役立つんですよ。

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このワークショップにはアーティストも同席し、その会社の社風を社員の方の発言から汲み取り、自分が描く壁画のインスピレーションの元にします。


ここまできたらいよいよ、アーティストが本番で描く壁画のラフ案の制作に入ります。ラフ案を提案し、お互いに合意が取れたら、やっと壁画制作となります!

壁画制作中は、1時間ほどのライトなワークショップを開催することもあります。物理的に制作にも参加していただくことで、出来上がる壁面により愛着を持っていただく効果があります。

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制作期間は面積にもよりますが、W7mくらいの壁面ですと1週間ほどで仕上がるケースが多いです。終了後はキャプションを設置したりして、完了です。

アート壁画で得られる「空間の魅力」と「コミュニケーション創出」

-なるほど、よくわかりました。オフィスに入る壁画によって、企業側は何を期待しているのでしょうか?

一番気になる部分ですよね・・・いくつか理由があると思っていて、コロナ禍を経て、変わったものもあると思いますが整理してお伝えします。
実は、ものすごく多様な効果が壁画導入にはあると思っており、企業側が期待することも企業によってさまざまです。

まず一番わかりやすい効果は、「空間として魅力がアップする」という点です。壁画はオーダーメイドで描かれる一点もの。オフィスのなかでこういった一点ものは意外に少なく、壁画が空間の雰囲気を大きく変えてくれて、自社の個性を発揮してくれます。

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「空間として魅力がアップする」ことは「採用」や働く社員の「エンゲージメント」に効果をもたらします。特に「採用」は求職者が複数社のオフィスをめぐる中で、壁画が記憶の中にインパクトを残してくれるきっかけとなるでしょう。


続いて、「コミュニケーション創出」の効果も認められています。そもそもワークショップを実施することで、普段仕事上では関わらない人同士のコミュニケーションを狙っています。また、アートがあること自体もコミュニケーションのきっかけになります。

-それは何故でしょうか?

アートって家具と違って「座れる」とか「物をしまえる」とか機能がないですが、アーティストの視点が可視化している個性の強いものです。

正直いって好き嫌いがあるものなので、壁画を導入した際も「私は嫌いだな」「私は好きだな」という感想をどんどん言って欲しくて。それがあることで、気軽なコミュニケーションが産まれていくので、そのタネになればいいなと考えています。

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感性的な「アート」がもたらすさまざまな効果とエンゲージメントの向上



-採用、コミュニケーション。他にはどういった効果がありますか?

あと2つくらい、効果がありそうです。

1つ目は個人の能力開発。センスシェアリングワークショップはアート思考のエッセンスを取り入れており、そちらを受けて頂くと、自分の感性を人に堂々と表現できる「ウェルビーイング」的な視点もありますし、「アート思考」という直観的で新しい思考について知ることができます。アーティストの制作風景を間近で見れるのも良いポイントですね。

ユニコーン企業160社のうち、21%が芸術系教育を受けた人が共同創始者 (2016年リサーチ) というデータもあり、アーティストの存在が自身の業務にイノベーションをもたらす例もあるはず。

2つ目は、「エンゲージメント向上」です。壁画って来訪者にとってもインパクトがあるものなので「これは何ですか?」と必ず聞かれるんですよね。その時に自分の口で壁画のストーリーを話すことで、自身の帰属する会社に対しての理解も深まります。自分が会社の語り部になることでエンゲージメントを高める効果があります。

さらに、自分の会社が「アートを導入した!」ということ自体が社員にとってプラスのインパクトがある場合もあります。とある大手の企業様ではこんな事例もありました。

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さらに、最近はアートを題材としたオリジナルのワークショップが本質的な多様性(D&I)の研修に起用されたりと、アートとビジネスの化学反応はどんどん起こっているように感じています。

まとめると・・・

①採用に効果がある

②コミュニケーション創出

③アート思考のインストール

④エンゲージメント向上

どうですか?だいぶ効果があるなと思いませんか?

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-確かにこれだけの効果の幅があるものは珍しいのかも。

なかなか定量情報としてデータ化できないのですが、1社1社ヒアリングしているとこういった効果を体感していただいているところが多くあります。私たちへ来る仕事の数が多くなってきているのが、まさにその証だと思っています。

「アート」って予想図が出てこない、感性的なもの。だからそれを発注するのも覚悟が必要だと思うのですが、そうしていただく会社様からは胆力や変わっていく覚悟を感じます。

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そうそう、オフィス担当の総務の方のコメントで印象的なものがあって「壁画ってコスパいいですよね」と。聞いた時は「ん?」と思ったのですが、「従業員のエンゲージメントを上げるのってかなり大変。それが壁画があれば上記のような効果が見込めるって費用対効果がいいなって」とおっしゃっていて、なるほどな~と思いました。

事業開始7年目のアートの会社は、なぜ前年比130%以上に伸び続けてるのか?女性起業家が思う「アート」が「ビジネス」に化学反応を起こす理由


-これから、「アート」と「ビジネス」はどのような化学反応を起こしていくと予想しますか?



今、オフィスをただの働く場所ではなく、コミュニケーションの場として捉える企業が増えているように思います。オフィスに来ることで雑談が生まれたり、帰属意識が芽生える場であるべきだという考えです。だからこそ、オフィスアートはコンテンツとして注目されてきていて、オフィスアートを取り入れる企業は少しずつ増えています。

今、壁画をどう生かすかという視点に移っていく気がしているんです。仕事自体は自宅でリモートでもできるので、オフィスはコミュニケーション活性やアートを見て発想する場になっていったら面白いですよね。

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さらに未来のオフィスにおいては「個人の発想力」がとても大事になってくると思っています。そのためには「個人の発想力」と同時に「周囲の受け入れ力」も大事だし、個人が自由に発言するには心理的安全性が高くないといけないですよね。

人が何かを発想するときには、自分の好きなことを組み合わせてアイデアが生まれるので、全員が健全な気持ちで働いていることも大事です。アートやアーティストが、否定し合わない健全なコミュニケーションのきっかけになって企業の文化や社風によい影響を与えていけたらうれしいですね。

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あとは壁画みたいにオフィス空間の中のアートではなく、執務エリアに小さな美術館があるなど、アートだけを楽しむ空間があっても面白そうですよね。

今は「ABW※」の考え方を取り入れたオフィスづくりが増えています。

集中エリアとリラックスエリア、コミュニケーションするエリアなどを分ける考え方が広まりつつある。

でも、完全に仕事から離れられる場所って、実はトイレや食堂くらいしかないんじゃないかな。だから、オフィスに小さな美術館があれば、脳の切り替えもできるんじゃないかなとか、密かに思っています。

※「Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」の略で、社員が業務の目的に応じて、自律的に働く場所や時間を選択できるという考え方です

-まだまだアートの可能性は無限に広がりそうですね!ありがとうございました。



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