日本代表のアメリカ遠征総括:ターンオーバーの狙いと是非
日本代表のアメリカ遠征総括:ターンオーバーの狙いと是非

Qolyアンバサダーのコラムニスト、中坊コラムの中坊氏によるコラムをお届けします。

メキシコ戦:フルメンバーだと相当強い
アメリカ戦:ターンオーバーでは通用しない

メキシコ△0-0、アメリカ●0-2という結果に終わった日本代表のアメリカ遠征について振り返りたい。

まずメキシコ戦について。

アウェーであの内容を展開できたことは、日本代表は本当に強くなったことの証明。序盤、メキシコを圧倒しほぼ一方的に攻める展開を繰り広げたのは、今までの北中米アウェーにおける日本代表とはレベルの違うものだった。

一方、強いことは強いが、序盤の畳み掛けたあの攻めで点を取れない限り、勝つことはできないとも感じた。つまり、東京五輪のメキシコ戦で、序盤に久保と堂安で2点とって勝った2-1の試合のイメージを想定すると理解しやすいかと思う。

さらに付け加えるならば、とても強度の高い戦術をとっているため、W杯本番でも同様の戦い方で挑むとしたら、(組み合わせ次第ではあるが)GL突破はできると思うが、そこで力を使い果たし、決勝トーナメントで勝ち抜くのは厳しそうという印象も持った。

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2戦目のアメリカ戦は完敗であり、スコア以上の差がある内容。今まであまり出番のなかったテストメンバーで挑み、しかも途中から4バックに変更したが全く機能せず、守備崩壊に至っていた。

望月ヘンリー海輝は酒井宏樹と同じような役割、つまり右サイドでロングボールのターゲットになっていく攻撃のオプションを担っていた。

それなりにインパクトは残したものの、守備面で大きな綻びがあり、失点に直結するクロスあげられたことも含め、攻めのメリットを守りのデメリットが大きく上回る出来だった。彼に限らず、主力と控え組で大きな実力差がある現状が露わになったと言える。

個人的にはヨーロッパのクラブでステップアップが相次いだことで「所属クラブの強さ=日本代表の強さ」という誤った過大評価が起きていたこと、また、メディア含めそんな雰囲気に至っていたのが気になっていた。

そのため、ここで結果が出ず、過信に繋がらなかったのはある意味良いこととも言える。

日本代表は決して弱くはないが、さりとて強豪国ではないという立ち位置を再認識できたためだ。

日本代表のアメリカ遠征総括:ターンオーバーの狙いと是非
日本代表のアメリカ遠征総括:ターンオーバーの狙いと是非

ターンオーバーの是非

今回のアメリカ遠征で大きなトピックとなったのは、アメリカ戦における総入れ替え、ターンオーバーの是非だろう。

前回・カタールW杯でのドイツ戦、コスタリカ戦でのターンオーバーを振り返ると、スタメンを5人入れ替えている。(前田→上田、伊東→堂安、久保→相馬、田中→守田、酒井→山根)

本番でGLの3戦全てを主力フル投入は体力的にムリであり、主力出し続けた場合、GLで力尽きてしまうため、ターンオーバーは必須だ。

それこそ、メキシコ戦で見せた堂安の怒涛のプレスバック。あれほどまでの強度を出したら疲労・コンディション的に中2日での次の試合に出せるわけがない。しかも次のW杯は参加国数も増えて試合数も増えるため、前回W杯での5人入れ替え以上に主力温存しないとベスト8は絶対に不可能だ。

そのため、層を厚くすることと、どこまでメンバー落として同じ戦い方できるかを模索したアメリカ戦だったが、残念ながら現時点では、控えメンバーだと通用しないことが露わになった。

今の実力と選手層だと前回のカタールW杯のように、主力で挑めばドイツやスペインにも勝てる実力を持つものの、ターンオーバーで挑むとコスタリカに負ける選手層という状況だ。控え組がより一層レベルアップすること、そして森保監督がさらに控え組へテスト機会を与える必要があるという認識。

かつての日本代表はGL突破が目標の弱小国だったので露骨なターンオーバーはできる余裕すらなかった。

日本代表のアメリカ遠征総括:ターンオーバーの狙いと是非
日本代表のアメリカ遠征総括:ターンオーバーの狙いと是非
2018年ロシアW杯、ポーランド戦の日本代表

2018年ロシアW杯のGL3戦目ポーランド戦で西野朗監督が大幅なターンオーバーしたのが、日本代表のW杯の歴史における最初のチャレンジ(2002年トルシエ監督のトルコ戦はターンオーバーではなく奇策という認識)。

日本代表もターンオーバーを実行するレベルまでは来た。

しかし2018年ポーランドにも、2022年コスタリカにも負けているため、「ターンオーバーを実行して勝ち点を積める」という次のフェーズには至ってない。

日本代表はW杯にポット2として挑むのが濃厚だが、その場合に同組のポット3、ポット4の相手に主力温存でドローで凌げたなら中堅国としてかなり上のランク、強豪国への仲間入りが近づく。

強豪国だと決勝トーナメント入ってからも余力が残っており、勝ち進めるが、中堅国だとGL突破で全力出し切ってしまうため、ベスト16止まりになりやすい。これは日本代表に限らず、同じく中堅国であるスウェーデン、デンマーク、ポーランド、メキシコ、アメリカ、ナイジェリア等も同様の結果である。

今後も露骨なターンオーバーは実行できるのか?

2026年北中米W杯まで、残りの代表戦で今回と同様にターンオーバーで挑む試合が必要と考えるが、実際にそれが可能なのか、という問題がある。

ライトなファンの反応はともかく、スポンサー・視聴率等を踏まえると中々できないのが実情ではなかろうか。

今回のアメリカ戦のように平日の朝にキックオフという日本の観戦者が少ない状況なら、実行しやすいかもしれないが、例えば埼玉スタジアムで19時キックオフという注目度の集まりやすい時刻のゲームだと難しいと思われる。

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