
[J2第22節、サガン鳥栖 2-0 ジェフユナイテッド千葉、7月5日、千葉・フクダ電子アリーナ]
8位の鳥栖は3位千葉に勝利し、2連勝を飾った。
大卒ルーキーDF井上太聖はセンターバックの位置で出場すると、集中した守備でクリーンシートを達成。
同期の誰よりも上へ
プロ1年目の井上は鳥栖で充実の日々を過ごしている。
「今年の目標はケガをしないことにしていた中で、うまく達成できているので満足しています。こんなに順調にいくとは思わなかったですけど、試合を重ねるごとに自分が(チームを)引っ張っていかなきゃいけないという意識も生まれてきました。ただ、いまはもっと成長したい気持ちでいっぱいです」
今季より順天堂大から加入した大卒ルーキーは、ここまでリーグ戦全試合に出場。1年でのJ1復帰を目指す鳥栖で、中心選手として活躍している。ただ、ここまでの道のりは平たんではなかった。
センターバックでプレーした井上特別指定選手として帯同していた昨季は、7月3日のJ1第16節横浜F・マリノス戦でJ1デビューを果たすも、前半25分に右足肉離れでピッチを去っていた。
「去年は治るのに3カ月かかるケガを3回くらいしてしまった。特別指定選手として試合に出たいと思って、鳥栖にずっと帯同していた中で、ケガでシーズンを棒に振ってしまった」と昨季の公式戦出場は1試合に終わった。
悔しい日々を過ごしたが、懸命にリハビリを乗り越えられた原動力の一つは同期たちの存在だ。
今季、順天堂大からは井上をはじめ、DF宮川歩己(あゆき)がJ2大分トリニータへ、背番号10を背負っていたMF岩井琢朗(たくろう)は千葉へ加入していた。

井上は「誰よりも上に行って、誰よりも活躍したいというのが一番です」とライバルたちには、負けられないと語った。
前回対戦は千葉に1-1で引き分けていた鳥栖イレブンは、上位浮上のために不退転の覚悟で試合に臨んだ。
絶対に勝たなければいけない一戦は続く
この日、センターバックで出場した井上は大卒ルーキーらしからぬ堂々としたプレーで、ディフェンス陣を統率。5バックで守りを固める鳥栖の背番号13は、身振り手振りを交えながら味方に声を出し続けた。
「相手のホームで、スタジアムの雰囲気もすごく良かった。そんな中で相手のペースになるかもしれないというのは想定済みでした」と落ち着いたパフォーマンスで千葉の攻撃をシャットアウトした。

鳥栖は前半31分にFW山田寛人(ひろと)が右からのクロスボールに合わせて先制弾を奪うと、その後もカウンターを中心に攻めた。後半24分には相手のオウンゴールで突き放し、試合巧者ぶりを発揮した。
なんとかして追いつきたい千葉は、クロスボールから得点を狙うも牙城を崩せず。
井上は「相手はサイドに特徴のある選手がいるので、いいクロスが上がってくるとは分かっていましたし、そこはうまくセンターバックやウィングバックとコミュニケーションを取っていました。ボールが入ってきても、最後にゴールを割らせなければいいと意識していました」と、的確な判断で失点を阻止した。
後半38分には千葉の岩井が左サイドバックで途中出場。ホームチームは攻撃のギアを上げたが、得点を奪えなかった。

強烈なタックルとカバーリングでボールを奪い、カウンターにつなげた鳥栖のルーキーは同期の前で成長した姿を見せつけた。
「『ケガから学ぶことはある』と言う人もいますが、僕は絶対にそう思わない。まずはピッチで自分の価値を証明するのがサッカー選手だと思うので、ここまでケガをせずに戦えているのは、すごく自信になっています」
試合はそのまま2-0で終了し、鳥栖は2連勝を飾り、暫定7位に浮上。リーグ戦3試合連続のクリーンシートを達成した。
アウェイに駆けつけたサポーターと喜びを分かち合った井上は「自分たちがJ1昇格と優勝するためにはこの6ポイントゲームを、絶対に勝たなければいけないと分かっていました。うまく(千葉の攻撃を)耐えてゼロで抑えられたことは、チームとしても個人としても自信になったゲームでした」と笑みを浮かべた。

次節は今月12日午後7時からホームの駅前不動産スタジアムで大分と激突。九州ダービーに勝利すれば、他会場の結果次第では3位に躍り出る。
ライバルたちには負けられない。
井上は「今シーズンはまだ3連勝できていない中で、次はホームでダービーです。ここで勝利すれば、昇格と優勝が見えてくると思っているので、まずは休んで、この1週間いい準備をして臨みたいです」と、同期の宮川が所属する大分との大一番に勝利してみせる。
(取材・文 浅野凜太郎、写真 縄手猟)