今年の11月11日の独身の日セール「双11(ダブルイレブン)」が終わった。かつての盛り上がりからすれば、何もなかったかのような静かな報道ぶりだ。
双11は2010年代DXの象徴
双11は2009年にアリババが始めたネット通販セールだ。この年の流通取引総額(GMV)は5000万元だったが、2021年には5403億元と1万倍以上に成長し、小売業の奇跡と言われた。アリババは急成長を側面から支え、クラウドコンピューティングの阿里雲、決済の支付宝(アリペイ)、物流の菜鳥、金融の余額宝や花唄などのプラットフォームを次々と世に出し、いずれも大成功を収めた。
2010年代に中国のデジタルトランスフォーメーション(DX)を主導したのは間違いなくアリババだ。しかし2020年11月、フィンテック子会社アント・グループの上場中止命令を機に逆風が強まる。著名人を集めて売上高を刻一刻と表示するカウントダウンショーを中止し、2022年にはデータの公表すらなくなり、お祭り気分は急速にしぼんだ。
2023年も各社別データは未発表だが、データサービスの星図数据の推計によると、全ネット通販のGMVは前年同期比2.08%増の1兆1386億元(約23兆9100億円)で、史上最低水準に落ち込み、「史上最悪の双11」と称された。
2024年のデータはエキサイティング?
中国メディアは2024年のデータについて、「エキサイティングだった」と表現している。星図数据のデータでは前年同期比26.6%増の1兆4418億元(約30兆2780億円)、別のデータ「2024双十一消費洞察報告」では同8%増の1兆9000万元(約39兆9000億円)だった。後者にはプラットフォーム別のシェアが出ている。アリババは37.94%(天猫商城24.63%、淘宝網13.31%)、京東は16.52%、抖音は13.01%、拼多多は11.91%だった。以前はアリババと京東で80%を超えていたが、現在は多極化が進んでいる。
ブランド別のトップ10はアップル、ハイアール、美的、シャオミ、ファーウェイ、小天鵝、格力、FILA、栄耀、ユニクロの順だった。
商品種別ランキングから日本企業を探すと、服装・靴帽子部門でユニクロが2位、体育・娯楽用品部門ではソニーが1位、キヤノンが2位、ニコンが3位、パナソニックが9位、富士フイルムが10位だった。化粧品トップ10にかつての常連、資生堂の名はなかった。
アリババと京東は売り上げを発表
アリババと京東は今年の一部データを発表した。
アリババの天猫商城(ブランド中心の通販サイト)の発表によると、今年の双11のGMWは大幅に増加した。589のブランドが1億元(約21億円)を突破し、2023年の402ブランドに比べ、46.5%増となった。多くの新興ブランドが1億元に初めて到達し、アップル、ハイアール、美的、シャオミ、ナイキなどの伝統ブランドは10億元(約210億円)を超えた。
天猫は今年のトレンドを次のようにまとめている。
1、新興のブランドが伝統ブランドと手を取り合い、消費回復のホイッスルが鳴った
2、化粧品、デジタルデバイス、家電など基幹商品の力強い成長
3、コア層(有料会員)の購入増加
4、ライブコマースの高品質化
京東は前年同期比20%増だった。ライブコマースの成約額は同3.8倍で、1万7000ブランドの成約額が同5倍以上となり、3万超の中小出店者は同2倍だった。コンピューター(Computer)、通信(Communication)、家電(Consumer Electronics)の「3C」家電機器が買い替え政策(以新旧換)の恩恵を受けて順調に推移した。また、従来苦手としていた服装・靴・帽子も87.8%増と大きく伸びた。
抖音と拼多多はデータを発表していない。
セール通年化で双11の存在感が低下
中国メディアは今年の双11について、好調だったとする一方で、静かな双11であり熱狂は終わったというトーンの総括をしている。
検索エンジン最大手の百度によると、双11の検索量は2017年がピークだった。今年は前年同期比60%減だった。双11の存在感低下を如実に表すデータだ。その大きな理由の一つはセールの常態化。双11に味をしめたアリババは双12(12月12日)を作り、6.18(京東の創業記念祭)に便乗した。さらに年貨節(春節)、38女王節(国際女性デー)、818購物節などが加わった。
これらのセールは双11と大差がなくなってきた。
中国メディアは、双11は価格競争からプラットフォーム機能向上や高品質イメージをアピールする機会へと変わるとしている。あとは改良しかない。DXや消費経済のトップランナーとしての役割は終えたのだ。