2025年9月5日、中国メディアの観察者網は、「あと数年したら、日本人は中国製テレビしか買えなくなるかもしれない」と題した文章を掲載した。
文章は、東京・秋葉原の家電量販店でテレビを選んでいた女性が、ソニーのテレビより3万円ほど安い中国メーカー・ハイセンス製のテレビを購入したことを紹介。
そして、日本のテレビ産業は1980~90年代にソニー、パナソニック、東芝の3社で世界シェアの40%を占めるほどの隆盛を誇ったものの、液晶技術へと以降していた今世紀初頭になって「日本企業は判断を誤った」と指摘。パナソニックがプラズマに固執し、ソニーはブラウン管からの転換が遅れたため、液晶技術において韓国のサムスンやLGの後塵を拝するに至ったとした。
また、日本ブランドの世界テレビ出荷量シェアは2010年の28%から24年には9%にまで低下し、国産製品が大きく支持される日本市場にあってもシェアが大きく減り、東芝はすでに一般消費者向けテレビ市場から撤退したと伝えている。
その上で、テレビ産業が日本の製造業が抱える問題の縮図であるとし、外部との連携を好まない「技術の閉鎖性」、終身雇用制などに起因する「戦略の保守性」、多角化経営による「リソースの分散」の3点を挙げた。
一方で、中国ブランドは急成長を遂げており、24年には世界のテレビ出荷量シェアで初めて30%を突破したと紹介。特に日本市場では昨年に中国ブランドのシェアが49.9%にまで上昇し、ハイセンスが25.4%でトップシェアを獲得したと伝えた。
文章は、中国ブランドの躍進が低価格戦略のみによるものではないと主張。ハイセンスが自社開発の画質チップで日本人が好む「映画モード」を最適化し、TCLが日本の家庭環境に合わせた広視野角の液晶パネルを採用、さらには24時間日本語対応のサポート体制を整えるなど、きめ細かな現地化戦略が奏功したと説明した。
また、中国の製造業がパネル製造からチップ開発、最終組立、販売・サービスに至るまで、世界で最も完成されたテレビのサプライチェーンを構築していることにも言及。これによりコスト削減を実現するとともに、現地の市場変化や新たな規制、規格への迅速な対応が可能になったと分析している。
さらに、中国の製造業の新たな強みとして「スマート化」を挙げ、中国政府の「スマート製造2025」戦略のもとで各企業が5GやAIを活用したスマート工場で生産効率を劇的に向上させていると説明。
文章は、グローバル競争において、ものづくりの勝敗はもはや単一技術の優位性ではなく、「サプライチェーンの効率+イノベーションの速さ+市場への対応能力」という総合力で決まると指摘。「数年後、日本人が中国製テレビしか買えなくなるかはまだ分からないが、世界の製造業の重心が中国に移りつつあることは確かだ」と結論づけた。(編集・翻訳/川尻)