中国人団体観光客に対する韓国のビザなし入国が9月29日から来年6月30日までの期限付きで始まった。中国国慶節・中秋節の連休(10月1~8日)期間に訪韓する中国人観光客が大幅に増えると予想される中、中国国営メディアは「韓国内の反中デモが両国関係を深刻に毀損(きそん)」として、韓国政府に対応を求めた。

韓国メディアによると、最近ソウルの明洞(ミョンドン)と汝矣島(ヨイド)一帯では一部保守団体による反中デモが続いている。これに対し、李在明(イ・ジェミョン)大統領は「観光客を増やすべきなのに特定国の観光客を侮辱する集会をしている。観光客を相手に商品を売って暮らそうとしているのに大暴れし侮辱して追い出す。特定国の観光客を侮辱して関係を悪化させようとしている」と批判した。

在韓中国大使館もSNSを通じて自国観光客に反中デモへの格別の注意を呼び掛け、「中国の観光客は警戒心を維持して自己保護意識を高める必要があり、現地の政治的集会には近付かず公開的な政治的発言を控えるべき」と勧告した。また、突発状況発生時には「デモ隊と言語・身体的衝突を避け、身辺の安全を最優先にしてほしい」と強調した。

大使館側は軍事施設や軍用装備など敏感な建物の撮影を自制し、ドローン撮影時には韓国の関連法規を事前に熟知しなければいけないと注意を喚起。特に飛行禁止区域と撮影禁止区域ではドローンの使用を控えるよう伝えた。

中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報はビザなし入国について、「韓国の経済成長が弱まった状況で観光業回復に対する韓国内の期待が大きい」としながら、「上半期の韓国の外国人観光客のうち中国人の割合が28.6%で最も多かった」と指摘。今回のビザなし政策を「民間交流促進と政治的信頼増進に向けた意味のある行動だ」と評価した。

その上で「主要先進国の中で初めてであり、象徴性のある示範事例という意味がある」と付言。昨年11月から施行している中国の対韓ビザなし政策により多くの韓国人が中国の発展の姿を見て中国に対する古い観念を変えたと主張し、「単に一つの経済政策だけでなく、友好と協力を促進して地域の一体化を推進する戦略的措置」と強調した。

一方で環球時報は「ビザの便利化は第一歩にすぎず、(ビザなし)示範施行をどのように日常化するかが未来のカギ」と述べ、韓国内の反中デモ問題に言及。「韓国側はサービスの質を高めて中国人観光客の安全を保護するなどの措置を取らなくてはならない」と注文した。 (編集/日向)

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