中国鉄道当局の規定により、9月30日以降は紙の領収証が全面的に廃止され、電子領収書に置き換えられた。中国メディアが伝えた。

多くの中国人にとって、薄い一枚の鉄道切符は単なる列車番号や座席番号以上の意味を持っていた。何世代もの旅を見届けてきた「切符の思い出」が終わりを迎えた。

中国通信社(CNS)によると、中国鉄道の「ペーパーレス化」はすでに長く進められてきた。2018年に南部・海南島の環状鉄道で電子切符の試行が始まり、20年には全国で「身分証をかざして改札を通過」する方式が広がった。

これにより、紙の切符は旅客の前から徐々に消えていった。ペーパーレス化は紙の消費を減らし、切符を受け取るために並ぶ手間や紛失の心配もなくした。出張が多い人にとっては電子領収書によって経費精算もスムーズになった。

多くの人にとって、鉄道切符は単なる乗車証明ではなく、中国の交通発展の縮図でもあった。1980~90年代には緑色の車体の列車と赤い紙の切符が春節(旧正月)の帰省ラッシュで「切符が手に入らない」状況を象徴していた。高速鉄道時代に入ると、水色の磁気切符が「緑の列車」から「復興号」への飛躍を見届けた。

同時に紙の切符は旅の思い出でもある。苗賀(仮名)さんは数百枚の切符を集めており、SNSに「これは北京から武漢に桜を見に行ったときの切符。

あれは大学時代に実家に帰省した時のもの。今でも旅行に出るときは紙の切符を受け取って、記念に残している」と書き込んだ。コメント欄には多くの人が自分の切符の思い出を投稿した。
中国で廃止された紙の鉄道切符、何世代もの旅を見届け電子領収書に置き換え
鉄道切符

廃止を控え、北京市内の駅では発券機の前に列ができていた。若者に手伝ってもらい切符を受け取った黄逸(仮名)さんは「記念に一枚残したかった。昔の電報や切手のように、手に持つとやはり特別な感じがする。これから紙の切符がなくなると思うと、本当に名残惜しい」と語った。

紙の切符が消えた一方で、新しい記念の形も登場している。あるアプリでは電子切符のテンプレートを作成でき、それを印刷すれば昔の切符とほとんど変わらない。ネット上では「切符収納アルバム」が販売されており、鉄道切符だけでなくコンサートや観光地のチケットも収められる。

CNSは「紙の切符の終えんは中国だけのことではない」と指摘。「日本では新幹線がすでに全面的に電子化され、ICカードやスマートフォンのQRコードが主流となっている。

それでも多くの旅行者が旅の手帳に記念切符を貼り、駅のスタンプを押すことで独自の旅行文化を楽しんでいる」と続け、「北京でも東京でも小さな切符は形を変えながら人々の旅の記憶をつなぎ続けている」と結んだ。(編集/日向)

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