台湾では18日、国民党主席(党首)に鄭麗文氏が選出された。鄭氏は1969年生まれで、1990年に発生した政治改革を求める大規模な学生運動(三月学運、野百合運動)にも参加し、かつては独立志向の強い民進党に所属していた。
鄭麗文氏は、野百合運動に参加するなど、若いころから積極的に街頭運動に参加し、台湾独立を支持する立場を明確に表明したこともある。台湾大学法学部を卒業後には民進党に入党し、青年発展部副主任、行政院報道官などの職務を歴任した。しかしその後、民進党と決裂して離党した。2005年には当時の連戦国民党主席の招きで国民党に加入し、2期にわたり立法委員(国会議員)を務めた。
鄭麗文氏の父親は本籍が雲南省の軍将校で、国共内戦での国民党の敗北に伴い台湾に移った。鄭氏は、大陸から台湾に移った軍人や公務員およびその家族が住む眷村と呼ばれる地域で育ったために、軍系党員からの支持があるとの見方もある。
台湾の通信社である中央社は、鄭氏は今回の国民党主席選挙の「ダークホース」だったとして、「伝統的な藍営(国民党など親中陣営)とは異なる戦闘的なイメージを示し、多くの軍、公務員、教育関係者から支持を得て、競争相手を打ち破った」と評した。
その他の台湾メディアも鄭氏を報道する際には、「戦闘的イメージ」にしばしば言及する。たとえば台湾メディアの「風伝媒」は、鄭氏が国民党内部で共感を呼び起こすことができた最大の要因は「長年にわたり築いてきた『戦闘派』のイメージだ」「国民党の末端支持者から、与党(民進党)に直接対抗できる能力に最も富む人物と見なされた」と分析した。
国民党は従来、中国大陸側との関係が比較的密接だ。国民党の支持者は国民党と中国大陸側との関係が台湾の民主主義の安定と経済に有利と考えている。一方で、中国大陸側が国民党との関係を通じて台湾に対する影響力を行使する可能性を懸念する声もある。
国民党の主席選挙では、鄭氏の対立候補だったハオ竜斌氏(「ハオ」は「都」の「者」の部分を「赤」に替える)の支持者である趙少康氏が、ハオ氏を攻撃し鄭氏を支持するネット動画の存在を理由として、中国大陸側による選挙介入を非難した。しかし台湾の国家安全部門は、中国大陸側の選挙介入は確認できていないと表明した。中国大陸側の台湾問題担当部門の国務院台湾事務弁公室の陳斌華報道官は、「我々は国民党主席選挙に関心を持つが、これは国民党の内部事情だ。中国大陸部の一部ネットユーザーの言論は公式の立場を代表するものではない」と述べた。
中国大陸側と台湾の現職総統である頼清徳氏との関係は極めて緊張している。中国大陸側は頼清徳総統を「台湾独立派」と非難し、必要があれば「武力統一」も辞さない構えを見せている。米通信社のAPは、鄭氏の国民党主席就任は、台湾が中国大陸側との関係を処理する方式に影響を与える可能性があると報じた。
台湾では2026年に九合一選挙と呼ばれる統一地方選挙が、2028年には総統選挙が行われる。九合一選挙は複数のレベルの地方自治体の首長や地方議会の議員を選ぶ選挙で、選挙結果は台湾の政局に極めて大きな影響を及ぼす。台湾の総統は外交、国防、内政などについて極めて大きな権限を持つので、総統選の結果が台湾の政治に決定的な影響を及ぼすのはもちろんだ。
鄭麗文氏は2026年と2028年の選挙で、民進党主席である頼清徳総統と対決することになる。(翻訳・編集/如月隼人)