フェンタニルなどを大量密売してキューバで身柄を拘束され、最終的に米当局に身柄を引き渡され裁判を受けることになった男について、中国屈指の名門である北京大学でスペイン語を専攻した経歴があるとの同窓生による証言が出てきた。男はキューバで最初に捕まった際に自宅監禁の処分になったが、50メートルの地下道を掘って脱走し、ロシアへの逃走を試みたという。

米国に拠点を置く華字情報サイトの文学城が伝えた。

文学城は男の姓名を「張智棟」と紹介したが、ローマ字表記の「Zhi Dong Zhang」に人名に使われそうな漢字を当てはめただけで、本来の文字は確認できていない。男は、「ブラザー・ワン」など、20を超す名を使っていたという。

米連邦裁判所に2025年7月に提出された訴訟文書によれば、当局は張智棟がロサンゼルスとアトランタで大規模な麻薬密輸と資金洗浄ネットワークを運営していたと指摘した。張はフェンタニルとコカインをメキシコから米国へ運びこみ、イリノイ州、ジョージア州、ミシガン州などに向けて密売していた。また、張は違法な資金の流れを隠すために、架空の組織の代表名義で米国の銀行口座に多額の現金を預けていた。当局は張智棟がロサンゼルスとアトランタで大規模な麻薬密輸と資金洗浄ネットワークを運営していたと指摘した。

張には1000キロを超えるコカインと1800キロのフェンタニルを米国に密輸入して販売し、複雑な国際ルートを通じて年間1億5000万ドル(約230億円)以上の資金洗浄を行っていた疑いも持たれている。

フェンタニルなど大量密売して米当局に拘束された男、北京大学出身か―米華字サイト

ある捜査関係者は、「この中国系の男の犯罪ネットワークは米国、中米、欧州、中国、日本など複数の地域にまたがっていた。また、メキシコのシナロア麻薬カルテルおよびハリスコ新世代麻薬カルテルと協力関係を築いていた」と述べた。この2つのカルテルは米国政府により外国のテロ組織に指定されている。張はこれらのカルテルのために数百万ドル(500万ドル=約7億7000万円)の資金を洗浄し、麻薬密売を共同で行ったとされる。

張は24年10月にメキシコで逮捕された。当初は警備が極めて厳重な刑務所に収監されたが、後に米国への引き渡しを待つ間の自宅監禁を許可された。しかし、張は約50メートルの地下道を掘って自宅からの脱出に成功し、プライベートジェットでキューバへ逃走した。

張はさらにロシアへの逃走を企て、偽造書類を使ってキューバの首都ハバナからモスクワへの直行便に搭乗したが、ロシアで入国を拒否された。ロシア当局は張の正体に気づいておらず、短時間拘束した後にキューバへ送り返した。

張がハバナに戻された際、キューバの安全部門はすでに張の正体を把握していた。キューバ当局は数カ月にわたって張を尋問した可能性があるとの見方がある。

その後、キューバ政府はメキシコの安全部門と協力し、正式な引き渡し要請を受けて張智棟をメキシコ当局に引き渡した。張は最終的に米国に移送された。

張智棟の逮捕が報じられた後、北京大学の多くの卒業生が、張は北京大学外国語学院スペイン語学科のの学部生だったと証言した。

インターネットでは、張智棟が新型コロナウイルス感染症の流行前にメキシコへ渡り、巧みなスペイン語と個人的な能力を駆使してフェンタニル原料の供給ルートを次第に開拓したとの情報が流れている。張は現地で結婚し、メキシコの「グリーンカード」を順調に取得し、その後メキシコの麻薬ネットワークと深くかかわり、現地の麻薬カルテルの庇護を受けたという。

現時点で、米国司法省は張の出身についてコメントしていない。

米国での裁判で張の有罪が確定した場合、張には25年以上の禁固刑または終身刑が言い渡される可能性がある。ただしこれまでの事例を参照すると、死刑判決が言い渡される可能性は、極めて限定的という。(翻訳・編集/如月隼人)

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