2025年11月19日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、中国によるクロスボーダー融資が先進国へとシフトしつつあるとする米国の研究機関による報告を紹介した。

記事は米バージニア州ウィリアム・アンド・メアリー大学のAidData研究ラボによる研究結果を紹介した。

研究では中国の国有銀行が過去20年以上にわたり2000億ドルを米国の企業に融資しており、ケイマン諸島やバミューダ、デラウェア州などのタックスヘイブンにあるペーパーカンパニーを経由して送金されており、資金源が隠されていたことが明らかになった。

また、融資の大部分はロボットメーカー、半導体会社、バイオテクノロジー企業など重要技術や国家安全保障に密接に関連する米国の企業買収を支援するために使われていたことが明らかになったとしている。

その上で、中国政府または国有企業がこれまでに200以上の国に提供した資金援助や融資の総額は最高推定額の2倍に相当する2兆2000億ドルに上り、低所得国に対する融資の割合が2000年の88%から23年には12%にまで激減した一方で、中・高所得国への融資が24%から76%へと大きく上昇したことを指摘。米国のほかにも、英国が600億ドル、欧州連合(EU)が1610億ドルの融資を中国から受けてきたと伝えた。

研究はまた、中国による融資の目的が経済開発や社会福祉から「地政経済的な優位性の獲得」へと戦略的にシフトしており、「ロボット・自動化、航空宇宙、コンピューター」などを重点分野とする「中国製造2025」計画など、中国共産党や中央政府の政策と密接に連携していることが分かったとしたほか、近年は海外に100以上の銀行・支店を設立し、資金源をさらに不明瞭化することで、米国などによる規制を回避する方法を見出していると指摘した。

記事は、米政府が長年「中国は略奪的な貸し手だ」と警告してきたことについて、AidDataの責任者が「大きな皮肉だ」と述べ、「中国による融資がすべて地政学的戦略を目的にしたものとは限らないが、規制当局と国の安全保障当局にとっては何が『良い取引』で何が『悪質な取引』かを見分けることが大きな課題になる」との見方を示したと報じた。(編集・翻訳/川尻)

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