2025年12月9日、仏国際放送局RFI(ラジオ・フランス・アンテルナショナル)の中国語版サイトは、中国の貿易黒字が1兆ドルを突破することについて「どうして世界は恐れているのか」とする記事を掲載した。
記事は、中国の今年の年間貿易黒字が12月を待たずに1兆ドル(約157兆円)を突破したと紹介。
そして、中国が国内で吸収しきれない過剰生産能力を市場に放出し続ける状況は、「貿易は双方に利益をもたらす」という経済学の基本原則を覆すものであり、フランスのマクロン大統領が「中国は自国の顧客を殺している」と非難するとともに、このまま行動を起こさなければ、欧州は米国のように中国製品への関税導入を含む「強硬措置」を講じざるを得なくなると明言したことを紹介した。
さらに、米国の関税政策は中国の対米輸出を減少させる一定の抑制効果を生む一方で、欧州が中国による過剰生産能力の「調整先」となったことにも言及。かつて世界に貢献した中国の生産能力向上が、今や他国の製造業に打撃を与えるネガティブな存在になってしまっていることを伝えた。
記事は、貿易の再均衡化を目指す欧州が中国に対して国内消費の大幅向上を望んでいるものの、フランスの専門家からは「雇用と成長を確保する上で過剰生産の停止は中国共産党によって死活問題となる。現状で経済の再均衡を図れば政権交代のリスクが高まるため、習近平(シー・ジンピン)指導部にとっては受け入れがたい」との分析が出ていることを紹介。経済成長の約40%を輸出に依存するという中国モデルの現状を伝えた。
その上で、中国政府の公式見解にも言及。経済の再均衡化は来年から始まる第15次5カ年計画の一部であるものの、計画には「適切な速度での成長」や「イノベーション駆動」による産業強化も含まれることから、実質的には輸出競争力の強化路線を継続する見込みだとした。また、中国政府は自国が「過剰生産能力」の状態であることを認めておらず、現在の世界貿易の不均衡を「一国主義、保護主義の台頭」や「覇権主義と強権政治の脅威」など外部要因に転嫁していることも指摘。中国政府の姿勢や態度から見ても、ゆがんだ構造による中国の貿易黒字が短期的に解消する可能性は低いことを示唆した。(編集・翻訳/川尻)











