シンガポール華字メディア・聯合早報は16日、日中関係が低迷する中、日本の業者が「脱中国」でリスクを低減していると報じた。

記事は、「高市早苗首相の台湾有事をめぐる発言に反発した中国が自国民の日本への渡航を控えるよう呼び掛けてから1カ月が経過し、今冬の日本の観光業や小売業は冷え込んでいる」と指摘。

日本の報道を基に、「特に影響を受けているのは中国からの団体旅行客を主な顧客としてきた地方のホテルで、例えば愛知県の空港周辺のホテル業者は中国人観光客を失ったことで苦境に立たされている。初期の推計では、11月だけでおよそ2000件の予約がキャンセルされた」と伝えた。

また、「三重県松阪市のあるホテルは、繁忙期には約3000人の中国人観光客を受け入れていたが、今年12月は中国人観光客の予約が半減する見通し」と説明。同ホテルの支配人が来年春までこの状況が続くかどうかを懸念しており、「もし中国からの予約がゼロになれば、経営は非常に厳しくなる」と語っていることを紹介した。

このほか、日中交流イベントが相次いで延期を余儀なくされること、中国からの団体旅行のキャンセルは後を絶たず航空便も減便が相次いでいること、野村総合研究所のエコノミストが中国による日本への渡航自粛呼び掛けで日本が受ける経済損失は1兆7900億円に上ると試算していることにも言及した。

一方で、「一部の観光業者は今回の日中摩擦の影響を受けながらも、柔軟な対応を学んでいる」との見方も出ていると指摘。こうした業者は国内や東南アジアの客の取り込みを積極的に行うことで顧客層を調整し、リスクを下げていると説明し、「帝国データバンクの調査では、影響を受けているとする企業(42.8%)と影響はないとする企業(40.8%)が拮抗(きっこう)している」と伝えた。

さらに、フジテレビの番組が大阪・心斎橋近くの状況を取材した結果を基に「影響は限定的」と報じたほか、京都の商店街20店舗への取材で「影響がある」と回答したのが2店舗のみだったことも紹介。専門家は「以前は中国人観光客が多すぎて混雑していたが、今では観光客の買い物の流れがスムーズ。以前の需要が店舗の受け入れ能力を上回っていたことを示している」との見方を示し、オーバーツーリズム問題の解消につながっているとの分析も出ていると伝えている。(翻訳・編集/北田)

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