台湾メディアのTVBS新聞網は16日、ウイスキーの市場規模が1000億ドル(約15兆5000億円)に迫り、中国のメーカーが台頭しつつあると報じた。

記事は、「世界のウイスキー市場規模は2022年に640億ドル(約10兆円)に達し、28年には913億ドル(約14兆円)まで成長すると予測されている。

市場は年平均約6%の成長率で拡大を続けると見込まれており、ウイスキーが今後も注目される産業であることを示している」と指摘。「欧米のほか、中国や台湾を含むアジア地域でも、ウイスキーの醸造や市場展開への積極的な取り組みが進んでいる。日本で造られるジャパニーズウイスキーは同国内で人気なだけでなく、海外市場でも極めて高い評価を受けており、世界5大ウイスキーの一つとして認められている」と紹介した。

その上で、まず日本について「国産ウイスキーの蒸留は、1923年に始まった。日本初のモルトウイスキー蒸留所である山崎蒸留所の建設が始まり、日本において本格ウイスキー造りの幕が開けた。この時点で、ウイスキーが日本に伝来してから50年が経過していた。29年には、日本初の国産ウイスキー『サントリーウイスキー白札』が発売され、日本ウイスキーの商業化の出発点となった」と説明。「第2次世界大戦前から東京醸造やニッカなどの企業も相次いでウイスキー事業に参入。戦後には日本人の生活様式の西洋化や食生活の変化に伴い、ウイスキーは本格的に日本人の生活に浸透していった。多くの事業者の参入、醸造技術の絶え間ない向上により、日本のウイスキーは独自の地位とスタイルを確立するに至った」と述べた。

一方で、「世界的に需要が伸びる中、日本のウイスキーは長年にわたり原酒不足という問題に直面してきた」と指摘。「中でも長期熟成商品は特に希少で高い価値を持ち、近年は高額で取引される例が相次いでいる。

サントリーの長期熟成シングルモルトウイスキー『山崎55年』は、2022年に米ニューヨークで行われたオークションで60万ドル(約8100万円)で落札され、日本のウイスキーが国際市場で高い人気と収集熱を誇っていることを示した」と言及。「23年の日本のウイスキー輸出額は500億円に達し、15年と比べて規模はほぼ5倍に拡大している」と伝えた。

次に中国について、「蒸留酒市場は長年『白酒(バイジウ)』が主導しており、市場シェアは97%にも達しているが、近年は市場に静かな変化が生じている」と指摘。「徐々にウイスキー市場が注目され始め、すでに全体の規模としては世界第4の市場へと成長している。中国のウイスキー市場は23~26年に最大88%という驚異的な成長率を示すと予測されており、その発展性は高く評価されている。中国の酒造メーカーは今や世界のウイスキー市場において注目すべき新勢力となりつつある」とした。

その上で、「ウイスキーは中国市場において長らくニッチな酒類に位置付けられてきたが、21年に転換点を迎えた。この年は『中国ウイスキー元年』とも呼ばれ、国内のウイスキー産業の発展が加速した。23年時点で、計画中および建設中を含む蒸留所の数は40カ所に達している」と紹介。すでにウイスキー市場に参入している中国のクラフトビール大手「熊猫精醸酒業(パンダクラフトビール)」の創業者・夏語林(シア・ユーリン)氏が「中国の白酒文化は長い歴史を持つが、日本の事例を見ると日本酒や焼酎に加えてウイスキーも市場に受け入れられており、中国でも可能性はある。中国の酒類市場には今後も大きな多様化の余地がある」との見方を示したことを伝えた。

記事は一方で、「中国産ウイスキーはほとんどがまだ黎明期にあり、多くの酒造メーカーが蒸留を始めたばかりで、熟成期間も一般的に2年未満にとどまっている。

そのため、国産ウイスキーが中国市場で本格的に流通を始めるまでには、まだ数年を要するとみられている」と言及した。

最後に台湾について、「世界的に高い評価を受けている『ジャパニーズウイスキー』を急速に追い上げている」とし、「台湾は、これまでウイスキー造りには不利とされてきた亜熱帯気候を、革新的な手法によって逆に強みへと転換し、世界を驚かせた」と指摘。台湾飲食大手・金車グループの李玉鼎総経理の名前を挙げ、「かつてウイスキーは寒冷地で生産されるべきと考えられてきたが、李氏が手掛けたカバランウイスキーは亜熱帯の台湾で誕生した。高温環境によって熟成が早まる特性を巧みに利用し、生産効率を大幅に高めた。通常であれば15~20年を要する製造工程が3分の1に短縮された」と説明した。

そして、「カバランウイスキーは、世界的に権威のある『ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)』において、シングルモルトウイスキー部門の最優秀賞をたびたび受賞している。その蒸留所の生産能力は、19年時点ですでに世界第10位の規模にまで成長している」と紹介。今年開催された第30回インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)でも五つの金賞を獲得するなど高い評価を得たことに触れ、「カバランウイスキーの名声が広く知れ渡るにつれ、日本などからの観光客が台湾を訪れた際に必ず購入する定番の土産の一つにもなっており、台湾ウイスキーが国際市場で持つ影響力を示している」と伝えた。(翻訳・編集/北田)

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