陝西省仏坪県岳壩鎮大古坪村で村民の李紅英(リー・ホンイン)さんが玄関を開け、思わず笑った。養蜂巣箱のふたがひっくり返されて傍らに落ちており、地面にはくっきりとした足跡があり、ふんも2カ所残っていた。

「昨晩、『あの子』がまた来て夜食を食べたみたい」と李さんは話した。陝西日報が伝えた。

李さんはスマートフォンを出しながら、「夜中にまた食べるものを探しに来たのよ」と説明し、見せてくれた動画には丸々したジャイアントパンダが巣脾をむしゃむしゃ食べる様子が映っていた。

秦嶺山脈の奥地にあるこの小さな村は「ジャイアントパンダ村」と呼ばれている。なぜなら野生パンダがよく姿を現すからだ。

大古坪村党支部の宋建軍(ソン・ジエンジュン)書記によると、「昔は山奥の林に行かないと野生のパンダには会えなかったが、今では家の玄関先でしょっちゅう姿を見かける」という。村民の張忠平(ジャン・ジョンピン)さんは笑顔で「親戚がたずねてくるようなもの」と話した。

このような親しい関係は、パンダの救援活動を繰り返す中で徐々に育まれてきたものだ。

昨年の晩秋、元気のない様子のパンダが村に現れた。3軒の家を「訪問」した後、最後に李さんの家の蜂の巣箱の所まで来ると、地面に突っ伏して動かなくなった。

宋さんは、「そのパンダは具合が悪く、ここに来れば助けてもらえることが分かっていたので、やって来たのだ」と振り返った。

情報は瞬く間に伝わり、陝西仏坪国家級自然保護区の管理員と村民がすぐに駆けつけた。

パンダを助けようと、12人でパンダを乗せた担架を担ぎ、雨の降る中、滑りやすい山道を4時間以上かけて麓まで運んだ。

過去40数年間に、このような「村総出の救助活動」が40回以上行われている、

パンダがたびたび姿を現すのは、大古坪村の生態環境が持続的に好転していることの生き生きとした例証だ。貴重なエコシステムという財産をよりどころにして、同村はサンシュユやハチミツなどのグリーン産業を積極的に発展させ、金銀同様の価値がある豊かな自然をしっかり守りながら、人と自然が調和し共生して豊かさに至る道を歩んできた。

養蜂を営む呉彦君(ウー・イエンジュン)さんは、「注文は次々やってくるし、作柄の良い年にはハチミツの生産量は2トンに達し、十数万元もの収入がある。北京と上海の昔からの顧客は、うちの『ありのままの自然の味』を評価してくれる」と話した。

同村全体で中華蜂の養蜂箱は1000箱を超え、ハチミツ産業は同村の特色ある産業となった。

同保護区には公益パトロール管理ステーションが設立され、50人を超える村民が家からすぐの場所でパトロールをすることで収入を得ている。

また、ここ数年は各地の自然を愛する人々がひっきりなしに同村を訪れ、パンダの足跡を追いかけるようになり、エコ体験が村の新業態になった。宋さんは「昨年は受け入れた観光客により、村全体に16万元(約352万円)余りの収入がもたらされた」と計算しながら、「この豊かな自然は私たちにとって本当に金銀同様の価値がある」と話した。

宋さんは緑豊かな山々を眺めながら、「十数年前は1年か2年に1回見かける程度だったパンダだが、今では1年に数回見かけるようになった。子どもを連れている時もある」と笑顔を見せた。

秦嶺山脈の奥深くにある小さな村が、パンダによって変わり、パンダと共に成長している。

人と自然が調和・共生する幸福への道は、進めば進むほど目の前に開けていく。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

編集部おすすめ