中国メディアの勁旅網は5日、ビザ免除で入国した外国人が中国の病院に押し寄せていると報じ、「これは観光業の恩恵か、それとも医療資源の収奪か」と投げ掛けた。

記事によると、先日、英国人女性インフルエンサーのエイミーさんが8000キロを移動して中国の病院を訪れ、治療を受けたというニュースが大きな話題になった。

エイミーさんは2024年から胃に痛みが出ていたが、地元の病院の医師からは明確な原因が示されなかったという。エイミーさんは英国で健康保険料を納めているにもかかわらず専門医に診てもらうには少なくとも3カ月待つ必要があると告げられ、痛みが限界に達していたことから、かつて短期間居住したことのある中国の病院に頼ることにしたという。

25年11月下旬、エイミーさんは北京の病院を訪れた。到着してすぐに予約が取れ、わずか13日間で検査から診断、治療までが行われたことに驚いたという。「さらに衝撃」だったのは、全額自己負担であったにもかかわらず、今回の治療費の総額が2800元(約6万2000円)で済んだことだった。エイミーさんによると、英国では内視鏡検査だけで3000~5000ポンド(約63万~100万円。私費の場合)かかるという。エイミーさんがこの過程をSNSで発信すると、瞬く間に拡散された。

記事は、これは決して個別の例ではないとし、24年に英国人ブロガーが父親を中国の病院に連れて行き治療を受けさせたとの動画がプラットフォーム・ビリビリに投稿されて話題になったと紹介。同ブロガーの父親は英国で長年、立ち上がることができずに病院の検査を受けようにも長い時間待たなければならなかった。しかし、上海の病院を受診したところ「迅速に原因が特定されただけでなく、完全な治療プランも提示された」のだという。この動画も150万回以上再生されるなど話題になった。

記事は、外国人が中国の病院で治療を受けることは、今やSNS上で再生数を稼げるテーマとなっており、多くの外国人が自身や家族がはるばる中国まで来て診察を受ける過程をSNSに投稿していると指摘した。

その上で、こうした事象の背景として「この2年間、中国政府が強力に推進してきたビザ免除政策がある」と分析。例として、ビザ免除で入国したロシア人らが大勢、中国ではり治療を受けるという現象があったことを紹介した。また、昨年の米国による「TikTok禁止」騒動をきっかけに多くの「TikTok難民」が小紅書(RED)や抖音(Douyin)といった中国のSNSに流入し、双方が情報交換を行った結果、「米中の医療の違い」が米国人ユーザーの心に刺さったと指摘。この「情報の突き合わせ」により、両国のネットユーザーの間で「中国の医療=安価+高効率+高水準」という認識ができ上がったのだとした。

一方で、記事はこうした状況が中国人に「外国人が中国の病院に流入することで、自分たちの医療資源が奪われるのではないのか」との不安を抱かせているとも言及。実際に、中国国内のほとんどの大病院は患者であふれかえっており、普通の外来患者が専門医の診察予約を取るためには激しい争奪戦を経なければならず、病院の入り口には長年、(診察の順番をやり取りする)ダフ屋の集団がたむろしている状況だ。

「もともと高負荷で稼働している医療チームが耐えきれなくなるのではないか」と懸念する声もある。実際、現在でも一部の病院では医師がトイレに行く時間すらないほど忙しい状況だという。さらに、「外国人患者が増えると、さまざまな影響(国際問題など)に配慮するため、病院が意図的に医療資源を外国人に振り向ける可能性があり、その結果、医療の不公平が生じ、病院と患者の間、あるいは中国人患者と外国人患者の間で対立が引き起こされる」との指摘もあるとのことで、外国人の受け入れに批判的な意見がSNSでは共感を呼んでいる。

ただ、記事は「こうした懸念が現実になる可能性は低い」と指摘。「外国人が治療目的で中国を訪れることは『医療ツーリズム』と呼ばれ、中国の病院ではこれに対応するため中国人向け外来とは別の『国際医療部(VIP診療)』という部門がある。

そのため、外国人診療が中国人患者の受診機会を圧迫することはない」とし、「国際医療部の規模は政策によって厳格に制限されており、病院全体の診療の10%を超えてはならないと定められている。これにより、外国人診療が医療資源を侵食する事態は制度的に防がれている」と解説した。

また、「費用の面でも外国人は中国の医療保険制度を利用できず、すべて自費診療となる」と説明。「この高額な収入は病院の収益源となり、設備更新や人材確保などに再投資されることで、結果的に国内の患者に還元される。国際基準に沿った医療体制の構築が促されることで、中国の医療水準が世界トップレベルに近付く契機にもなる」とし、「総じて、外国人の医療ツーリズムは中国の医療資源を奪うものではなく、制度的管理のもとで国内医療を補完・強化する役割を果たしている」と強調した。

記事によると、近年、中国国内の多くの大病院が相次いで「国際医療部」の設置を進めている。21年には、上海華山医院や中山医院を含む13の医療機関が、公式に「上海市公立病院国際医療ツーリズム試験機関」として認定され、すべての病院で「国際医療部」の設置が完了した。

中国当局もトップレベルでの制度設計を加速させている。24年10月には上海市で「国際医療サービス規範」が施行された。25年3月には、全国政治協商会議委員で、中国科学院院士、浙江大学医学院附属第二医院党委書記の王建安(ワン・ジエンアン)氏が、「国際医療サービスの発展を推進する提案」を提出した。王氏は「質の高い国際医療サービスは、国家の基礎医療に対して“逆流的な恩恵”をもたらし、その成果は最終的により多くの国民に還元される」と述べている。

記事は、エイミーさんの例が大きな話題になったことを受け、「26年には中国の医療ツーリズムが新たな海外需要の波を迎える」と予測。

「ビザ免除措置の拡大という政策的優位性を背景に、中国の病院は世界に向けて本格的に海外の良質な患者層を争奪する段階に入るだろう」と結んだ。(翻訳・編集/北田)

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