中国人ジャーナリストの彭遠文氏は19日に微信(ウィーチャット)で発表した文章で、中国が経済面で米国に対抗できているのは、完璧なサプライチェーンが存在するためであり、そのサプライチェーンを形成できたのは日系企業のおかげと指摘する文章を発表した。彭氏は、日本に対する憎しみを扇動する者は、愛国心とは全く関係のない「国賊」だと主張した。

以下は、彭氏の主張の主要部分を再構成した文章だ。なお、彭遠文氏はリベラル派として知られ、かつては中国の大手メディアで活動したが、現在は個人としてSNSで情報を発信している。

日本の対中貢献を正しく認識せねば、損害を被るのは中国だ

「日本から中国への最大の助けとは何だったのか?」について語ってみたい。この話題はタブーに触れるものだ。かつて網易新聞(ネットイーズ)が、日本政府の政府開発援助(ODA)による中国のインフラ整備への支援を紹介する特集を組んだが、大きな波紋を呼び、記事の取り下げを余儀なくされた。

しかし私は、この件は語るべきであり、しかも多く語るべきだと考える。なぜなら、多くの中国人がこの基本的事実を知らないからだ。基本的事実を知らなければ、どうして正しい認識を持てるだろうか。誤った認識は必然的に誤った態度を招く。最大の損害を被るのは日本ではなく、中国なのだ。

米国に対抗できるのも日本のおかげ、憎しみの扇動は国賊行為―中国人ジャーナリスト
宝山鋼鉄

日本のODAがなければ、中国の現代化はどれだけ遅れたことか

本題に入ろう。まず日本の対中ODAは非常に重要だった。例えば鉄鋼分野で、もし宝山鋼鉄がなければ、中国の現代化は少なくとも10年遅れていた。もし濾州化肥工場がなければ、四川の農民が腹いっぱい食べられるようになるのはおそらく数年遅れたはずだ。

さらにエネルギー、通信、港湾、空港など、ODAの資金は中国経済の発展を制約していたボトルネックへと的確に流れ込んだ。

ただし、ODAによる援助は重要だったが、最重要というわけではない。私は日本の中国に対する最大の貢献は、中国における全産業型のサプライチェーンの構築を推進したことと考える。

ODA以上に重要なのは、日系企業による「産業圏」の構築だった

私はカナダで2年間を過ごしたことがある。その経験がなければ、全産業チェーンの存在の重要さを、これほど切実に感じることはなかっただろう。カナダの産業チェーンはあまりに不完全だ。私がいたオンタリオ州では、最も完備された自動車産業でさえ、米国を数往復しなければ1台の完成車をラインオフさせることができない。以前は気づかなかったが、今になって、珠江デルタや長江デルタの全産業チェーンがいかに「威力がある」かを知った。何を生産するのでも、車で1時間以内の範囲で90%以上の部品を見つけることができる。世界中探しても、このような場所は他にない。

したがって、全産業チェーンは中国のここ数十年の経済発展における最大の成果であり、最大の切り札でもある。これに匹敵するものは他に何一つない。例えば米中貿易戦争がこれほど長く続いても、あの強気なトランプ大統領でさえ矛を収めざるを得なかった。

対米貿易が20%減少した状況下でも2025年の中国の貿易総額は再び過去最高を更新し、45兆元(約1000兆円)を突破した。

日系企業がなければ、ファーウェイもCATLもなかった

私は二十数年前に、香港資本の工場で働いたことがある(彭氏は大学卒業後に広東省にある香港系の文具メーカーで技術職を務めたことがあり、その現場経験がその後の論調に大きく影響したとされる)。私が所属した技術部門で使っていた優秀な数値制御(NC)工作機械は日本製だった。その他の機械の多くも日本製だった。当時の中国のNC工作機械は極度に遅れていた。私らが学んだNCプログラミングの本に中国大陸部で発行されたものはなく、台湾の本の海賊版しかなかった。そして現場管理では日本の「5S活動」を学んでいた。当時の国有企業の管理は実に遅れていた。

米国に対抗できるのも日本のおかげ、憎しみの扇動は国賊行為―中国人ジャーナリスト
CATL

欧米企業は製品志向で、サプライヤーや労働者の育成をあまり重視しなかった。しかし日系企業は違った。中国にいったん進出すれば、2次メーカー、3次メーカーをごっそりと中国へ連れてきて、完全な産業チェーンを形成した。その過程で、これらのメーカーは必然的に中国の現地企業と提携することになった。珠江デルタの電子産業はこのようにして立ち上がったのであり、そうでなければ、その後の華為(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)などの勃興はありえなかった。

また、長江デルタでは日系自動車メーカーが構築した、主要部品の80%を車で4時間の範囲内で調達できる「4時間工業圏」の構築によって、「全産業チェーン」が徐々に築き上げられていった。

日系企業はさらに、膨大な数の中国人人材を育成した。NHKが制作したドキュメンタリー番組は、日本企業がいかにして中国の技術や管理の担当者を「手取り足取り指導」し、それらの人材が中国企業に入った後にいかに日系企業と競い合うようになったかを描いた。日本側には後悔の念があるにせよ、取材に応じた多くの日本人技術者は、中国人の弟子たちの勤勉で向上心のある姿勢を称賛した。

日系企業による影響力は、どれほど大きかったのか。例えば、中国で最も勢いのある企業の一つであり、世界の車載電池の覇者であるCATL(寧徳時代)の創業者である曾毓群氏のキャリアの出発点は、日本の電子大手TDKの子会社である東莞SAE磁電廠だった。CATL初期の核となる技術チームや管理職の骨幹は、ほぼすべてが日系企業で育成された人材だった。「日系企業がなければCATLはなかった」と言っても過言ではない。こうした例は枚挙にいとまがない。珠江デルタや長江デルタでは、数え切れないほどの中国企業が日系企業の進出によって恩恵を受け、まさにそれらの企業が今日の「全産業チェーン」を構築したのだ。

日本への憎しみを煽動する者は「国賊」だ

これは常識だ。これらの常識を語ることは無意味でない。

冒頭で述べたように、基本的事実を知らずしてどうして正しい認識が持てるだろうか。したがって、以上の事実に照らせば、外資や外国企業、特に日本と日系企業を敵視してはならない。
米国に対抗できるのも日本のおかげ、憎しみの扇動は国賊行為―中国人ジャーナリスト
CATLの創業者 曾毓群氏

きっとこういう人がいるだろう。すなわち、「日系企業が中国に『助け』を与えたなんてどうして言えるのか。彼らは金を稼ぎに来ただけではないか?」と。日系企業は金を稼ぎに来た。当たり前ではないか。しかし、「ビジネスこそが最大の慈善である」という言葉を聞いたことはないか? ビジネスは金を与えるだけでなく、技術を与え、管理方法を与え、雇用を解決し、産業エコシステムを構築する、そして最後には、あなたを成長させて自分(日系企業)を打ち負かすまでにする。天下にこれ以上の「助け」があるだろうか? これこそが、私が日系企業の投資が日本政府によるODAよりも中国を大きく助けたと言う理由だ。

だから、日本への憎しみを煽る者は、愛国心とは1ミリも関係がない。そのような者は愛国者ではなく、紛れもない「国賊」だ。彼らの言う通りにして、日本人学校を監視し、彼らをスパイ呼ばわりし、日本人を罵倒し傷つけ、日系企業が中国から出て行くことを願う―。

こうした行為で最大の損害を被るのは日本ではなく、中国自身なのだ。

平和であり、友好的であり、互いに尊重し合って初めて、共に商売ができる。叫んだり殺気立ったりしてはならない。本当に実力があるのなら、公平な市場競争の中で日本企業を打ち負かせばいい。それこそが本当の実力だ。(翻訳・編集/如月隼人)

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