パナマ最高裁はこのほど長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス、以下「ハチソン」)が子会社を通じて30年近く経営してきたパナマ運河両端の2港湾であるバルボア港とクリストバル港について、ハチソンが権利を有することを決めた契約がそもそも「違憲で無効」だったとする裁決を示した。中国政府はこれを受け、パナマ側に対する報復措置を次々に打ち出し、両国は「全面対決」の様相になった。

台湾メディアのニュートーク(Newtalk)などが伝えた。

ハチソンは当初、パナマ運河両端のバルボア港とクリストバル港を含む23カ国、43カ所の港の計199のバースの資産を米投資企業のブラックロックに売却する方針だった。売却対象の価値は約228億ドル(約3兆6000億円)と評価され、ハチソンは実質権益の80%を譲渡することで190億ドル(約3兆円)以上を回収できると見込まれていた。

ハチソンが港湾資産を売却することには、経営のスリム化の狙いがあった。しかし、とりわけ重要な港湾であるバルボア港とクリストバル港についてハチソンが資産の所有権を手放しても、現場の運営やシステム、ノウハウという形での実質的な影響力は維持されるとみられていた。

ハチソンは港湾資産の譲渡について、2025年3月に、ブラックロック側との原則合意に到達した。しかしその後は、さまざまな条件を巡って交渉は難航していた。

ハチソンは1997年、バルボア港とクリストバル港を運営する25年間の契約をパナマ政府と締結した。この契約には、一定の条件を満たせばさらに25年間延長できるという条項が含まれていた。パナマ政府は2021年、ハチソン側が投資義務などを果たしたとして、契約を2047年までさらに25年間延長することを承認した。

しかしパナマ政府はその後、この契約更新の合法性を巡り2度にわたり訴訟を起こした。パナマ大統領が、「裁判所が契約無効と判定すれば、政府は直接港の管理権を回収する」と表明したこともある。

パナマ最高裁はこのほど、パナマ政府とハチソンが交わしたバルボア港とクリストバル港について契約が「違憲であり無効」だったとする裁決を示した。このため、ハチソンがこの2港湾についての権利を行使できなくなる事態が、現実味を帯びてきた。さらには、ハチソン側が補償も受けられない可能性がある。ハチソンのこの2港湾に対する権利が不確実になったことで、ブラックロックとの交渉は中断されたと考えてよい。

ハチソンがこの2港湾を手放す方針を固めた背景には、トランプ大統領が「パナマ運河を中国の支配下から取り戻したい」との意向を示したことで、抵抗した場合の「損害」を考慮したことがあると考えられている。中国政府は、ハチソンがバルボア港とクリストバル港のブラックロックへの権益譲渡を打ち出した時点で、激しく反発していた。

しかし、ブラックロックが権益を獲得した場合ならば、香港企業であるハチソンが前述のように、業務を通じてこの2港湾への影響力を維持する可能性がある。ところが、パナマ政府がパナマ運河を接収すれば、中国側の影響力は一掃されると考えねばならず、場合によっては米国企業が進出する可能性もある。

ブルームバーグが関係者の話を引用して報道したところによると、中国はすでに一部の国有企業に対して、パナマとの新規プロジェクトの交渉を停止するよう要求し、貿易と海運の分野でさらに強硬な措置を取ることについての評価を始めたという。このため、数十億ドル(50億ドル=約8000億円)分の投資に影響する可能性があるとされる。また、中国資本が参画してすでに始まっている約14億ドル(約2200億円)のパナマ運河第4橋工事、クルーズ船ターミナル、地下鉄建設の入札区間の工事に影響が出る可能性も否定できない。

関係者からは、中国側は海運企業に対し、コスト管理が可能な前提で積み替えルートを調整するよう要求することを検討しており、同時にバナナやコーヒーなどの農産物を含むパナマからの輸入商品の検査を強化しているとの声も聞かれるという。

中国外交部は、中国側の港湾問題における立場は明確であり、中国企業の合法的権益を断固として守ると表明した。国務院港澳事務弁公室は、パナマ最高裁の裁決は香港企業の権益を深刻に損ねたと批判する声明を発表した。外国メディアからは、中国側の言葉遣いからは、態度をさらに硬化させていることを感じるとの声が出た。

国連のまとめによると、中国は2019年以降に米国を追い抜いて以来、パナマにとって最大の貿易相手だ。中国側の手には依然として、投資と貿易による「反撃のための有効なこん棒」が握られている。ただし、中国側が全面的な対抗措置を始動させるかどうかは、依然として今後の仲裁と外交の進展にかかっている。ハチソンは4日、パナマ政府との対立について、国際仲裁裁判所に仲裁を求める手続きをすでに開始したと発表した。(翻訳・編集/如月隼人)

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