香港誌の亜洲週刊はこのほど、韓国では株価が高騰している一方で、実体経済はそこまで好調ではなく、国民生活の改善につながる影響も限定的として、同国の経済の現状を開設する記事を発表した。以下は、その主要部分に日本人読者のための情報を追加することを含めて再構成した文章だ。
予想できなかった「株価の大高騰」が発生
韓国総合株価指数(KOSPI)は1月22日の取引時間中に5000ポイントの大台を突破した。同指数が1980年に創設されてから、46年ぶりの高値だった。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領の任期が残り1年を切っていた2021年7月、KOSPIは一時3300ポイントに達したが、その後すぐに3000ポイントを割り込み、その後は2200ポイントから2800ポイントの区間で推移した。李在明(イ・ジェミョン)氏が大統領に就任する前の最後の取引日だった25年6月2日の終値は2700ポイントだった。
李大統領の選挙運動時の「KOSPIを5000ポイントの大台に乗せる」という公約は、市場と政界から単なるスローガンではないかと疑問視された。当時は尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の戒厳令発動がもたらした政治の不確実性がまだ残り、対米経貿摩擦はさらに激化するとの予想があった。韓国銀行はその年(25年)の経済成長率の見通しを2.3%から0.8%にまで下方修正した。
「韓国ディスカウント」が定着
国際的な金融関係者の間では「韓国ディスカウント」という言い方が定着していた。1997年に始まったアジア金融危機に伴い形成された証券市場で、韓国企業の株価の評価が韓国以外の類似企業より低い状態にとどまっていることを意味する。「韓国ディスカウント」にはいくつもの原因がある。例えば財閥企業の相互持ち株という不健全な株主構造が企業統治の不透明さという弊害をもたらした。さらに、短期取引の傾向が強いことや、配当が低く抑えられてきたことだ。
李政権はこの「韓国ディスカウント」の解消に焦点を絞った政策を打ち出した。まず「商法」を改正して、それまでは「会社のみに責任を持つ」とされていた取締役会を、株主に対しても責任を負わねばならないようにした。
韓国での最近の株価上昇には、さらに別の要因も存在する。世界的なデータセンターの演算能力需要の拡大や、人工知能(AI)の利用が急増していることで、半導体産業が恩恵を受けていることだ。例えばSKハイニックスは高性能サーバー用ストレージの生産によって25年第3四半期(7-9月期)に過去最高の利益を実現した。
株は強く実体は弱い
ただし、李政権にとってウォン安への対応は重要な課題だ。これまでに1ドル=1470ウォンという極端なウォン安も発生している。経済環境の不確実さが増大すれば、資本市場ではしばしば、ドル資産を保有してリスクをヘッジすること動きが発生する。また、韓国の財界がトランプ米大統領による経済分野での圧力を回避しようとして設立を決めた、3500億ドル(約54兆円)の巨額の対米投資基金は、長期間にわたってドル需要を増大させる。これらがウォン安傾向を促す力をもたらす。
そしてウォン相場の下落は、エネルギー、原料、食品などの輸入コストの増大をもたらす。またインフレ予想が発生すること自体が、物価上昇を後押しすることになるとの指摘もある。つまり、株価の上昇が国民生活の改善に与える影響は限定的だ。
すなわち韓国では「株は強く、実体は弱い」という現象が出現している。資本市場は改革への期待と半導体景気の恩恵を受けて強含みになり、実体経済では内需の回復が遅く、賃金の伸びは限られて生活費への圧力は緩和されていない。
韓国の政治は保守勢力と進歩勢力の対決を軸にして展開されてきた。経済の好調が実現したのは、一般に保守派が政権を担当した時期だった。逆に進歩派の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権や文在寅政権は、経済で見るべき成果を上げられなかったと言ってよい。そのため、「進歩勢力のメンバーは経済に疎い」という見方が定着した。
現在のKOSPI指数の高騰と民生の実感の落差は、その見方に一層の説得力を与えるに至っている。李在明政権が、進歩勢力のメンバーは経済に疎いという「伝説」を払拭するためには、資本市場の繁栄と国民の獲得感のバランスを取り戻すことが、どうしても必要になる。(翻訳・編集/如月隼人)











