香港メディアの亜洲週刊は13日、米中が対立を深めている中での、ベトナム外交の状況を紹介する記事を発表した。ベトナムは不動の「剛」と弾力的な「柔」を巧みに使い分ける「竹外交」を展開しているという。

以下は、その主要部分に日本人読者のための情報を追加することを含めて再構成した文章だ。

竹外交とは、2016年8月に、当時のベトナム共産党のグエン・フー・チョン書記長が提唱した概念で、外交にとって国家と民族の利益を守ることは、地中にしっかりと固定されている竹の根のように「不動の部分」であり、個別の案件では竹の枝のようにしなやかに動いて、外界の変化に臨機応変に対応することで、やはり国家と民族の利益獲得に貢献することを意味する。

1月19日から23日まで開催されたベトナム共産党第14回全国代表大会(党大会)では、トー・ラム書記長の続投が決まった。ラム書記長の「一強体制」は、さらに固められたとみられている。また、外交方針としては「核心的役割と常態的な展開」が決定された。

この方針は外交を軍事などと同様に、国の運命に直接かかわる重要な活動と位置づけ、国の利益を確保するために、常に積極的に動くことを意味する。また、この外交方針には、米中の競争がますます激化する時代において、ベトナムは国家の自主性と戦略的柔軟性を維持するためには、外交活動が極めて重要との認識が込められている。

ベトナムで竹外交の名称が登場したのは2016年だが、実際にはかなり古くから竹外交を実践してきたと言える。例えば1986年に始まったドイモイ政策では、それまでのソ連一辺倒から脱却し、「すべての国と友になることを望む」という外交方針を打ち出した。さらには2000年代になると「米国はベトナムの体制に干渉する点では警戒対象だが、経済では協力の相手」「中国は同じ共産党が政権を担当する点では同志だが領土問題では闘争の対象」のように、同じ相手国に対しても事案によって態度を使い分ける柔軟性も持つようになった。

最近では、ロシアが22年にウクライナを侵攻した後も、ベトナムはロシア、米国、中国の指導者とも通常の対話ができる外交上の立場を維持することに成功した。ベトナムは国連でもウクライナ問題についてのロシア非難決議の投票を棄権し、24年6月にはプーチン大統領がハノイを訪問した。

しかも、そのわずか数カ月前の23年9月にはバイデン米大統領を迎え、両国関係を一気に2段階引き上げて最高位の「包括的戦略的パートナーシップ」にした。さらに、23年12月には中国の習近平国家主席を迎え、習主席が提唱する「人類運命共同体」への参画を表明した。これらにより、大国間の駆け引きの中で巧みに立ち回るベトナムの外交能力が際立つことになった。

しかし世界情勢は刻々と変化する。特に、米国で行動が予測しにくいトランプ大統領が再び登場し、中国が習近平主席の指導下での自信をさらに強め、かつ能力を強めている中で、ベトナムは伝統的なヘッジ手段だけに頼るのはリスクが大き過ぎると考えている。

つまりベトナムにとっては、かつてのように「ワシントンと北京の間でバランスを慎重に保つ」やり方だけでは、地政学的な衝撃から自国を守るにはもはや十分でない可能性が出てきた。

ベトナムの「竹外交」、剛柔おりまぜた手法で米中を手玉に取れるか―香港メディア
ハノイ市内にあるバーディン広場

最近のベトナムの外交活動はこの切迫感を反映している。例えば「全面的戦略パートナー」の数を大幅に増やしている。ベトナムは08年から16年まで、中国、インド、ロシアとだけ全面的戦略パートナーの関係を維持していたが、22年以降には全面的戦略パートナーの相手を急速に増やし、新たに10以上の国家または地域を追加した。最も新しい相手は欧州連合(EU)だ。

ベトナムのこの動きの意図は、多くの高いレベルの協力ルートを創出することで、中国への過度な依存を減らすことだ。しかしベトナムにとって、外交の多元化は大国から離れることを意味しない。

ベトナムは大国との関係維持で、依然として慎重なリスク回避戦略を維持している。例えば25年7月には、初めて中国と地上部隊が参加する合同軍事演習を実施した。このことは、ベトナムが従来の保守的な国防政策を改めたことも意味する。

また同年11月に米国防長官がベトナムを訪れた際に、両国は国防協力の強化で同意した。これらの並行する措置は、ベトナムが「広く友と交わり敵を減らす」という長期にわたる外交方針を体現すると同時に、「協力と駆け引き」を並行させ、米国や中国との衝突を避け、同時に中国あるいは米国への過度の依存も避けようとする動きだ。

ベトナムが中国と米国の双方とのバランスを取り続けていることで、米国にとってベトナムとの関係をさらに改善しようとする場合、困難が生じる可能性がある。米国にとっての一つの方法は、ベトナムと良好な関係を構築しつつある西側国家が多いことを利用して、米国が間接的にベトナムとの密接な関係を構築することだ。また、米国はベトナムとの対話においてあえて中国に言及しないことでも、ベトナムが対中関係を過度に気にせずに動きやすい状況を作り出せる希望が持てる。

中国からすれば、ベトナムが多くの国と関係を密接にしてきたことで、ベトナムとの付き合い方が複雑になってきたと言える。ただし、少なくとも今後3年間程度は、中国の方が米国よりも「予測可能」な交渉相手と考えられる。そのためベトナムは当面、中国を最も重要な大国の協力パートナーと見なし続ける可能性がある。(翻訳・編集/如月隼人)

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