2026年2月16日は中国の旧暦大みそか、翌17日は春節(旧正月)に当たる。例年、日本の首相は在日華人・華僑に向けて新年の祝辞を送り、日本社会における華人コミュニティーへの配慮と友好の姿勢を示してきた。

しかし、今年発表された新年のメッセージには「在日華人・華僑」への言及が見られなかった。

また、長年にわたって春節期間中に行われてきた恒例行事―東京タワーを中国の伝統色である赤色にライトアップし、華人・華僑が塔の下に集って祝賀するイベント―も今年は中止となった。長年続いてきた象徴的な催しの取りやめは、在日華人社会の間で大きな関心と感慨を呼んでいる。こうした変化は、現在の日中関係の緊張と複雑さを側面から映し出している。

同時に、中国からの訪日観光客数は大幅に減少している。一部の専門家は「影響は少ない」との見方を示すが、とりわけ中国人観光客に依存してきた中国語通訳案内士業界への打撃は明らかだ。

日本中国語通訳案内士協会の会長、水谷浩氏(68)は、漢学者の曾祖父の代から日中・日台関係に貢献してきた日本人家系の4代目だ。友好商社社長である父の元、中国や台湾に親しんで育った。大学卒業後に会社勤務を経て、上海外国語学院(現・上海外国語大学)中文系および北京大学語言文学系に留学。帰国後、商社・メーカーに約20年勤務し、貿易、商談、訪日・訪中団アテンド、中国人留学生受け入れ、通訳・翻訳、営業など幅広いチャイナビジネスを経験した。そして通訳案内士の資格取得後に独立し、個人旅行者から大型インセンティブ団体のチーフガイドまで幅広く担当。現在まで中国語通訳案内士として20年の経験がある。

日中関係悪化で観光業に打撃、中国語通訳案内士がリスク分散へ
水谷浩氏

現在、協会には約150人の会員がおり、これまで中国の旅行会社から送客される団体客を主に担当し、安定した成長を続けてきた。特に12年から19年にかけては順調に発展。19年にはピークを迎え、水谷氏個人の年間売り上げは6800万円を超えたという。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により業界は急停止状態となった。コロナ後に徐々に回復の兆しを見せたものの、今回の日中関係の緊張が再び業績を谷底へと押し下げた。水谷氏によると、今年の春節は三つの団体の予約がキャンセルとなり、売り上げ500万円が消えた。年間売り上げは19年の4分の1程度にまで落ち込む見通しだ。これまで中国の旅行会社から日本の大手旅行会社を通じて中国語通訳案内士に委託されていた業務は、ほぼ消滅した。多くのガイドは副業に転じるなど、収入源の分散を余儀なくされている。

一方、水谷氏は現在、SNSを活用し、台湾やシンガポールの華人市場に向けて繁体字中国語でサービスを発信している。中国本土からの観光客減少を補う狙いだが、そのためにはこれまで以上にマーケティングに力を入れる必要がある。受け入れも小規模グループが中心となるため、収入は大型団体旅行が主流だった時代を大きく下回るという。

日中関係の将来について、水谷氏は決して楽観視していない。仮に台湾問題が一時的に落ち着いたとしても、日本国内での憲法改正や靖国神社参拝などの議題が新たな外交摩擦を引き起こす可能性があると指摘し、関係改善の時期は見通せないと語る。

それでも水谷氏は、観光が持つ民間交流の意義に希望を抱いている。体力が続く限り、中国語で中国人観光客を迎え、日本のありのままの姿と魅力を伝え続ける考えだ。水谷氏はガイドが担う役割を「実際に日本を訪れることで、日本に対する印象が変わる人は多い。ガイドは民間大使のような存在だ」と強調した。

日中関係悪化で観光業に打撃、中国語通訳案内士がリスク分散へ
案内した訪日観光客と記念写真を撮る日本中国語通訳案内士協会の水谷浩会長

業界関係者は、観光業は長年にわたり日中民間交流の重要な懸け橋であったと指摘する。現在の業界の苦境は、経済的損失にとどまらず、両国関係の揺らぎが民間交流に与える深い影響を映し出している。かつてのような人的往来と相互信頼が回復するかどうかは、今後の日中関係全体の改善にかかっている。(取材/レコードチャイナ編集部)

編集部おすすめ