フィラデルフィア・セブンティシクサーズの共同オーナーであるマイケル・ルービン氏は、ラッパーでチームの熱狂的なファンでもあるミーク・ミルと、何度も話し合ってきた。「ミークはよくこう言っていました。『マイケル、アメリカってのは2つあるんだよ』」水曜日、マンハッタンのジョン・ジェイ・カレッジで行われた記者会見で、ルービン氏は当時を振り返って言った。「私は、『兄弟、いったいなんの話だい?』と答えたものです」
そして2017年11月。ルービン氏は裁判所で、ラッパーが2年から4年の禁固刑を言い渡されるのを目撃。仮出所中にオフロードバイクでウィリー走行したことが、規定違反だとみなされたのだ。「1時間後、私のところに電話がかかってきました」とルービン氏は当時の状況を語った。電話の相手はミルだった。電話に出るなり、「言っただろう! アメリカは2つあるんだって!」とルービン氏はきっぱり言った。「確かにその通りでした。私は完全に間違っていたのです」と、ミルは返した。
この時の気づきが、REFORM Alliance設立の足掛かりとなった。
2つあるアメリカの片方を代表する人々はこの記者会見で、もう一方のアメリカの惨状に気づかされたようだ。「声なき人々の代理人」と自称するミルが手短に挨拶した後、ルービン氏は、「今まで全く知らなかった世の中の様々な事を、巨大な不正がまかり通っているということを、ミルから教わった」と述べた。
目からウロコの体験をしたのは、ルービン氏だけではない。「私は今まで刑務所に行ったことはありませんでした」と、クラフト氏も聴衆に向かって言った。「刑務所に行って、(ロビンの招待でミルに)会ったあと、家に帰ってもまったく眠れませんでした――私のような人間がいかに世間知らずであるか、ずっと考えていたのです」
ノヴォグラッツ氏もこれに同調する。
REFORM Allianceが目指すのは、仮釈放や保護観察法の規制下におかれる人の数を、この5年で100万人減らすことにある。「これ(現在仮釈放、または保護観察中の人数)は、刑事司法制度に置かれている人々の2/3にあたります。なのに、今まで(改革の対象として)全く注目されてきませんでした」とルービン氏は説明した。
「すでに大勢の団体が、現在服役中の200万人のための活動を行っています」と、ジョーンズ氏も続けた。長らく刑事司法制度の改革を呼び掛けてきた彼の言葉は、今回のイベントでもっとも説得力があった。
ジョーンズ氏はREFORM Allianceの戦略プランの概要も提示した。「我々がやろうとしていることは、受刑者に何百万もの弁護士をつけることではありません・・・我々は法律を改正し、政治を正したいのです」。
「新しい運動を始めるわけでもありません」と、さらに彼は続けた。「我々が今日ここに集まったのは、(刑事司法制度の改革を後押しする流れに)力を与え、人々の声を世に発信し、ずっと声をあげてきたにもかかわらず、ほとんど見向きもされなかった人々を救い上げるためです」。
REFORM Allianceの運営陣はこれ以上の詳細は明かさなかったが、間違いなく先を見据えているようだ。記者会見の間中、運営人は想定される批判に対して先手を打ち、刑務所の収容人数を減らすことはコミュニティの安全を脅かすものではないと強調した。「コミュニティの安全を保ちつつ、かつ政府の監視下に置かれる人の数を大幅に削減することは可能だと思います――(また)我々の安全を守る法機関に代わって、コミュニティの治安を保つことも可能だと思います」とルービン氏は述べた。
優れた実業界の例にもれず、REFORM Allianceの創始者たちは、刑務所が非常に金のかかる制度である点にもふれた。こういった主張は、政府の支出削減を望む財政保守派の耳にはよく響きそうだ。「納税者は(ミルを刑務所に)ぶちこむための費用を支払っています。
最後にルービン氏とその仲間たちは、刑事司法制度改革を、アメリカ政府がまともに機能しない原因である政党対立の枠組みから切り離すべきだと主張した。「これは民主党の問題でも、共和党の問題でもありません」とルービン氏。「善悪の問題なのです」ヴァン・ジョーンズ氏も、ファーストステップ法に関しては、両政党が党の垣根を超えて支援した点を指摘し、この問題に対する共党体制がすでに確立していることを示唆した。刑務所の収容人数削減を目指したこの法案は、昨年トランプ大統領が政府機関を閉鎖する直前に署名している。
「両政党がこのような混乱を引き起こしたのです」とジョーンズ氏。「残された道は、両党がREFORM Allianceの力を借りて、この混乱を終わらせることができるかどうかです」