田中:乱暴に言うと、今世界的に評価されているK-POPは、USメインストリームのプロダクションやビートにJ-POP特有の構成――ヴァース、ブリッジ、コーラス、ミドルエイトっていう構成を合体させただけだから。コーラス前のブリッジをハーフ・リズムにするのなんて、まんまJ-POPだし。でも、そこにEDM的なビルトを配したり。コーラスやフックは歌じゃなくて、やっぱりEDMみたくシンセのリフ主体のドロップにするとか。この前出たBLACKPINKのジェニー・キムの初ソロ曲とかホント良く出来てた。そういう足し算でいいと思うんだよね。北米に追いつくんじゃなくて、そこに何かをオンするっていう発想で。
宇野:そういう意味では、K-POPはJ-POPのいいとこ取りをしているわけだからね。それによって、J-POP唯一のアドバンテージだった展開の多さっていうのも、もはや日本のオリジナルではなくなってしまったんだけど。
田中:そう、J-POP的な価値観を世界に広めたのはK-POPだったっていう。例のJ-POP的な構成は70年代の歌謡曲には存在しなくて、90年代にJ-POPのコーラス至上主義が確立される過程で際立つことになったんだけど、よりコーラスを盛り上げるためのブリッジやミドルエイト(大サビ)の存在をさらに機能的にしたのがK-POP。それを彼らはグローバルにしたんだよ。
宇野:サウンド自体をグローバルにアジャストしない限り、絶対に世界には届かない。そこを疎かにしなかったのがK-POPの勝因だよね。日本に欠けているのはそこで。
田中:そう。ビートと音色、つまり、プロダクションにおける現代性だよね。ソングライティングの問題というよりは。
この後、本誌での2人の会話は、グローバルにおける日本を含むアジアのプレゼンスの話題へと転がっていく。
Edit by The Sign Magazine
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