2017年7月にソロプロジェクトを始動し、2018年8月にアルバム『FULL MOON』を発表した三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの登坂広臣。今作を携えた初の全国ソロアリーナツアーでは、11カ所23公演をまわった。
18年11月28日のさいたまスーパーアリーナ1日目の模様を完全レポート。

※この記事は昨年12月25日発売の「Rolling Stone Japan vol.05』に掲載されたものです。

ソロ活動の集大成=FULL MOONライブ

今回のツアーにあたって開催前から提示されていたイントロダクションは次の通りだ。

「今宵ついに、月が満ちる時。まばゆいばかりの月光が、あなたを照らす。
FULL MOON、そのとき月は覚醒する…
これまでのソロ活動の集大成。月光があなたをFULL MOONの世界へと誘う。」

2017年7月から始動した登坂のソロプロジェクト。配信シングル、ポップアップショップ、アルバムなどで一貫して「月」をテーマに発信してきたが、それの集大成となるライブが満月の夜に行われる、というコンセプトが設けられた。

さいたまスーパーアリーナ2DAYS公演は各日2万1000人の観客に加え、ライブビューイングにて全国の映画館で生中継されたため、ツアー中最も多くの人が目撃した公演となった。日替わりのオープニングアクトに、この日は登坂の後輩であるTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEが出演。総勢16人による約20分のアグレッシヴなパフォーマンスで会場を十分に沸かせていった。

暗転後、まずはオープニング映像が場内に流れた。
主演の登坂がシャワーを浴びたり拳銃を装着したり、どうやら彼はダイヤ怪盗に扮しており、満月の今夜ミッションを遂行するため戦闘準備をしている模様。その後も転換時に上映され続いていったこのオリジナルストーリーは登坂自身がプロデュースしたもの。「ライブ全編を通して一つの映画を観たような気分になってほしい」という思いから、銃撃戦あり、アクションあり、どんでん返しありという、ライブの幕間映像としては規格外に凝ったストーリーを撮り下ろした。起承転結もその後ステージで展開される演出とリンクしており、観客が『FULL MOON』の世界に浸れる一助となった。

イントロダクション映像の後、「INTRO~WAKE THE MOON」でライブが幕開け。威風堂々とした前奏が鳴り響く中、スクリーンに大きく映る青白い満月の前に、登坂がせり上がりでステージ上段に登場した。炎やスモークという装飾を差し引いたとしても、その佇まいには主役のオーラが匂い立っていた。白いファーのビッグコートを纏った登坂は「FULL MOON」でゆっくりと前を向いて歌い出し、後半から階段を降りてダンサーと踊り出す。次は静謐なムードから一転、アッパーなEDMチューン「CHAIN BREAKER」で爆破の特効や高速レーザーを投下。登坂も「もっともっと飛び跳ねろ!」と煽ってキレのあるダンスで場内を沸かせた。三代目 J SOUL BROTHERSらしさとは異なる”HIROOMI TOSAKA”独自の世界観が会場を支配したこの瞬間、「ソロアーティストのライブに来たな」としみじみ感じた。と同時に、スクリーンの満月にカラフルな雷が落ちているのを見て、このライブがとてもコンセプチュアルであることも感じていた。


「OUTRO~ECLIPSE DE LUNE~」から始まった新パートでは、曲前の映像で赤い月を見つめていたり、赤の照明を多用したりと”赤”をフィーチャーしていた。黒のレザージャケットとダメージジーンズに衣装替えした登坂は、赤いライトに包まれてキングチェアに腰掛けながら同曲を歌う。さらに、甘美かつマニッシュなムードの「LUXE」ではCRAZYBOYことELLYが参加するというサプライズ!  2人が横並びになってラップと歌とダンスが交わると会場は大いに歓喜した。この曲や「WASTED LOVE」のように、登坂が1曲ほぼ全編ダンスパフォーマンスを見せてくれるのもソロライブならではだろう。

ライブ中とりわけ女性ファンの血を躍らせたのは、中盤に差し掛かった頃、ミドルテンポのラブソング「EGO」。登坂は1人の女性ダンサーとラブラブなカップルを演じ、指を絡ませる恋人つなぎ、手を引いて階段をエスコート、腰に手を回して歩く、壁ドン、腰振りダンス、チークダンス、ソファで密着、熱い抱擁……と、大胆不敵にセクシーな絡みを披露。会場は黄色い悲鳴の坩堝と化した。このとき、登坂と疑似恋愛している気分ややきもちに似た感情に陥った人は数知れない。私はこれはファンサービスの一環と言えるもので、ヴィジュアルへの需要も楽曲の趣向も汲み取った、登坂だからこそ成立する好演出だったと思う。

その後、しっとりとした曲が連続するパートへ。スペシャルゲスト・BENIと向き合って歌う「One Last Time」、大切な人を思って作ったというバラード「With You」を届ける。このあたりで感じたのが、登坂のシンガーとしての本質的な魅力とスキルアップだ。
もともと影のある歌い方をする彼は、俯いているのが似合う。それが人目には艶っぽくも映る。グループの相方である今市隆二は相対するタイプでもあり、メンバーや周囲が「隆二が太陽、臣が月」と例えるのも合点がいく。登坂のそんなミステリアスさやシャイさが聴き手の心をくすぐるのだと考えている。一方で、技術的には歌詞がよりクリアに聞こえる歌い方になった気がしている。あくまで個人的所感だが、一時期はもっと息が入っていて聞こえづらかったこともある。楽曲固有の個性をつかみ、力強く表現する手腕は、デビュー9年目にして一層進化しているのではないだろうか。

HIROOMI TOSAKAライブレポ:壮大なヴィジョンと等身大の素顔が織りなす「物語」

Courtesy of rhythm zone

折り返し地点のMCでは、多方面で活躍している三代目メンバーたちの近況を報告。喋るのが得意ではないと自認する登坂は、訥々と言葉を届けるが「2019年、三代目として本格的に帰ってきますので、それぞれの活動を楽しんで待っていただけたらなと思います」と話すと場内から期待の拍手を受ける。そしてセンターステージに進み、観客を着席させてバンドメンバー4人とのアコースティックセットに移った。本人曰く「アーティストになってからの自分の人生を音楽とともに振り返る」コーナーの始まりだ。MAKO-T(Key)がピアニカ兼ローズ、Lorenzo(Dr)がカホン、JUON(Gt, Cho)がアコースティックギター、MARIO(Ba)がウッドベースを奏で、登坂も着座してリラックスした歌声にスイッチングする。


彼はルーツソングとして、SMAPの「らいおんハート」と尾崎豊の「OH MY LITTLE GIRL」をカバー。前者は2010年に開催されたオーディション「VOCAL BATTLE AUDITION 2 ~夢を持った若者達へ~」の第一次審査にて20秒間アカペラで歌った楽曲だ。「音楽経験もない中、自分の人生を乗せて下手なりに歌いました」「これがなければ歌手の自分もグループ自体もなかったかもしれない。それぐらい自分にとっては大きな曲」と、オーディション当時を回想しつつ原点の1曲を披露する登坂。このオーディションに合格してデビューした彼は、グループのヴォーカルとして邁進する日々を送る。そんな中、キャリアの大きな一歩となったのが、2014年に出演した映画『ホットロード』だった。「OH MY LITTLE GIRL」はその主題歌だ。

映画出演のオファーをもらったとき、芝居の世界にチャレンジすることに戸惑いを感じて一度は断ったこと。しかし原作者や関係者からの熱意に打たれ承諾したこと。演じた春山洋志役に通ずる尾崎豊の人生を学んだこと。作品を大事に思うあまりこの曲を歌うのを畏怖していたこと。この初ソロツアーの場で初めて歌おうと決意したこと。
すべて正直に明かす登坂の姿に、観客はじっくり見入っていた。春山役の登坂が満を持して歌った「OH MY LITTLE GIRL」は、これまでに触れた同曲カバーの中でも白眉だったように思う。エモーショナルでハートウォーミングな歌唱がアリーナにじんわり響き渡った。

セッションコーナーの締めくくりは、三代目 J SOUL BROTHERSの1stアルバム『J Soul Brothers』に収録されている「君となら」。登坂が三代目の中でも特に好きな曲で、「ファンの皆さんと一緒に楽しむために」と選曲したという。登坂のテーマカラーであるブルーのペンライトに包まれた場内には、登坂とファン双方の歌声がこだまし、温かさで満たされた一幕だった。

このツアーに参加したダンサーは、女性がMiki Emura、ERI、momoca renri、SAYUMI INO、RINO、男性がYASU、Kyo、RyuICHI、HiKaRu、RYOGA、KOHSUKEの計11人。ダンサーショーケースを経てメインステージに目線を戻すとライブは一気に終盤戦だ。「Share The Love」でみんな一緒に”シェアハピダンス”を踊り、ライブアンセム「HEY」ではコール&レスポンスや紙吹雪が会場内を席巻する。

登坂は一息ついて本編最後のMCで口を開いた。2018年は日本列島が幾多の天災に見舞われ、今ツアーも地震と台風の影響で計3公演が一時中止・延期となった。彼はそれを思いながら、1ステージ1ステージに等しく懸ける大切な気持ちを吐露。
そして「僕の心の声を書いた」という「END of LINE」を丁寧に歌い届けた。後奏でスクリーンの”FULL MOON”と静かに対峙しながら、ステージを降下していく登坂。これにはオープニングの場面と重なるものがあった。実はこの演出、”かぐや姫”が裏テーマだったそう。月から来て月へ帰る……と考えれば確かに納得だ。やはり最後まで「FULL MOON」というコンセプトを貫いて魅せようという、登坂の強い意志を感じた。

HIROOMI TOSAKAライブレポ:壮大なヴィジョンと等身大の素顔が織りなす「物語」

Courtesy of rhythm zone

サプライズゲスト多数だった埼玉公演。1日目はアンコールでAK-69とSWAYが登場し、大歓声の中「XXX feat. AK-69 & HIROOMI TOSAKA」の生コラボが実現した(2日目はEXILE TAKAHIRO)。興奮冷めやらぬまま、会場が一体となって「Smile Moon Night」と「HEART of GOLD」でライブは大団円。登坂は「HEART of GOLD」について「僕からのメッセージ」と前置きしていたが、その歌詞に、この口下手なアーティストの真芯が表れているのでは。

<つまづいたことのない人なんていないんじゃないか? 別れの悲しみ味わって立ち直った人どれだけいる? 誰かの笑顔にどれだけ救われたことがあるだろう 俺もそんな存在になりたいのさ>

登坂が去った後の会場では、撮り下ろし映像の大オチとエンドロールが上映された。ラストには「Produce by HIROOMI TOSAKA」の文字。1本の映画を観たような満足感と、シャイだが実直な登坂広臣の真の人間性を知り得た、特別な一夜の物語だった。

HIROOMI TOSAKAライブレポ:壮大なヴィジョンと等身大の素顔が織りなす「物語」

LIVE DVD/Blu-ray Disc
『HIROOMI TOSAKALIVE TOUR 2018
"FULL MOON"』
2月27日発売

<DVD>
①DVD2枚組(スマプラ対応)
RZBD-86790~1 ¥5,980(本体価格)+税
初回仕様:三方背ケース仕様・スペシャルフォトブック(100P)

②DVD2枚組(スマプラ対応)+FRAGRANCE DIFFUSER
RZB1-86794~5 ¥8,980(本体価格)+税
※EXILE TRIBE FAMILY & LDH official mobile CD/DVD SHOP限定盤・数量限定
初回仕様:三方背ケース仕様・スペシャルフォトブック(100P)

<Blu-ray Disc>
③Blu-ray Disc2枚組(スマプラ対応)
RZXD-86792~3 ¥6,980(本体価格)+税
初回仕様:三方背ケース仕様・スペシャルフォトブック(100P)

④Blu-ray Disc2枚組(スマプラ対応)+FRAGRANCE DIFFUSER
RZX1-86796~7 ¥9,980(本体価格)+税
※EXILE TRIBE FAMILY & LDH official mobile CD/DVD SHOP限定盤・数量限定
初回仕様:三方背ケース仕様・スペシャルフォトブック(100P)

【収録予定内容(全形態共通)】
<DISC-1>
INTRO ~WAKE THE MOON~
FULL MOON
CHAIN BREAKER
OUTRO ~ÉCLIPSE DE LUNE~
LUXE / HIROOMI TOSAKA feat. CRAZYBOY
WASTED LOVE
EGO
DIAMOND SUNSET
One Last Time / HIROOMI TOSAKA feat. BENI
Reflexion
With You
Not For Me
OH MY LITTLE GIRL
君となら
Share The Love
HEY / HIROOMI TOSAKA feat. Afrojack
END of LINE
Smile Moon Night
HEART of GOLD

<DISC-2>
XXX feat. AK-69 & HIROOMI TOSAKA / SWAY
TOKYO DIP feat. PHARRELL WILLIAMS / HONEST BOYZ®
要! / HONEST BOYZ®
BEPPING SOUND feat. HIROOMI TOSAKA / HONEST BOYZ®
THE RED RAIN / EXILE TAKAHIRO×登坂広臣
TIME FLIES / EXILE TAKAHIRO×登坂広臣

HIROOMI TOSAKA LIVE TOUR 2018 "FULL MOON"
DOCUMENT MOVIE

・三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEリリース情報

「Yes we are」
3月13日発売
<CD+DVD>
<CD>
CD
1.RIASE THE FLAG
2.Yes we are

DVD
Yes we are(MV)
https://m.tribe-m.jp/artist/index/21
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