全盛期のシアトル・シーンを記録した写真展『グランジ:ライズ・オブ・ア・ジェネレーション』が、ニューヨークのモリソン・ホテル・ギャラリーで開催中だ。展示されている貴重な写真の数々を、フォトグラファーのコメントとともに紹介する。


ジェシー・フローマンは初めてカート・コバーンに出会った時のことをこう振り返る。「『バケツ持ってる?』と彼が聞いてきたんだ。」それは1993年7月、ニューヨークのオムニ・ホテルでフォトグラファーであるフローマンがそのニルヴァーナのフロントマンの3時間の撮影を待っていた時のことである。「『何のためのバケツだい?』と聞くと彼は『吐きそうなんだ』と言ったんだ」とフローマンは言う。

フローマンのカメラはオセロットのコート、人体模型がプリントされたTシャツ、シェルパのハットでキメたコバーンを捕らえた。その9か月後コバーンが亡くなり、その青い目を隠した”ジャッキー・O”スタイルのサングラス姿が雑誌の表紙を飾ることはなかった。しかし、25年が経ち、その写真はアイコニックなものとなった。「こういう撮影はいいワインのように味がしみ込んでくるんだ。彼の目が見えていなくても全く問題ない。それが彼そのもので、いかにも彼らしかったんだ」とフローマンは語る。

ダニー・クリンチ、クレイ・パトリック・マクブライド、カレン・メイソン・ブレア、ヘンリー・ディルツなどの写真と共に、フローマンの写真はモリソン・ホテル・ギャラリー最新の展示会『グランジ:ライズ・オブ・ア・ジェネレーション』に使用されている。ニューヨーク市のギャラリー・ディレクター、マーセル・マードック、ロサンゼルスのギャラリー・ディレクター、キャシー・ファニン・キャプラン、ロサンゼルスのセールス・マネージャー、ジェイミー・ブケラーがキュレーターを務めるこの展示会は3月8日から31日までニューヨーク、ロサンゼルス、マウイで開催され、ニルヴァーナやパール・ジャム、サウンドガーデンなど、90年代初期の”シアトル・サウンド”を世に広めたバンドの写真が展示されている。

「その時代に強烈な体験をした人たちがいる。
もしその人達が俺の写真でそれを感じてくれるとしたら、正直、恐縮してしまうよ」とフォトグラファー、ランス・マーサーはローリングストーン誌に語った。

ニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンドガーデン、90年代グランジシーンの秘蔵写真が公開

Henry Diltz/Morrison Hotel Gallery

カート・コバーン(ヘンリー・ディルツ撮影)
1993年12月にニルヴァーナの最後のロサンゼルスのライブで演奏するカート・コバーン。後ろの『イン・ユーテロ』ツアー用の小道具である翼の生えたマネキンは人体の構造に夢中になっていたコバーンの案である。「たぶん俺は心の底では医者か何かになりたいと思っているんだと思う」と彼はその年に言っていた。

ニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンドガーデン、90年代グランジシーンの秘蔵写真が公開

Jesse Frohman/Morrison Hotel Gallery

カート・コバーン(ジェシー・フローマン撮影)
1993年、ニューヨークのオムニ・ホテルでエビアンを飲むコバーン。「そのうち彼は水を吹き出すようになったんだ。そうしながら写真を取られるのを楽しんでいたよ。小さい子どものようにね」とフローマンは振り返る。

ニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンドガーデン、90年代グランジシーンの秘蔵写真が公開

Jesse Frohman/Morrison Hotel Gallery

ニルヴァーナ(ジェシー・フローマン撮影)
ベーシストのクリス・ノヴォセリック、コバーン、ドラマのデイヴ・グロール。オムニ・ホテルにて。「彼らは一緒にいるといいエネルギーを持っていた。笑うのが好きだし、自分たちがどう見えているかとか、どう見せたいかなんてあまり気にしていなかったよ」とフローマンは言う。


ニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンドガーデン、90年代グランジシーンの秘蔵写真が公開

Lance Mercer/Morrison Hotel Gallery
パール・ジャム(ランス・マーサー撮影)
1991年、シアトルのライブハウス、オフ・ランプでムーキー・ブレイロックというバンド名でライブをするパール・ジャム。「そこでは多くのバンドがライブをしていたよ。俺はカメラを持って走り回っていた数少ない人の1人だった」とフォトグラファー、ランス・マーサーは言う。

ニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンドガーデン、90年代グランジシーンの秘蔵写真が公開

Lancer Mercer/Morrison Hotel Gallery

1992年のエディ・ヴェダー
ヴェダーはライブ中にステージの上に登ってぶら下がることで有名になっていた。「あのライブは実際、他のに比べたらおとなしいライブだったよ」と、1992年のドロップ・イン・ザ・パークでの彼らの伝説的なライブを振り返る。1991~1995年までパール・ジャムの専属フォトグラファーとして一緒にツアーを回っていたマーサーはバンドが巨大な成功を掴んでいくのを目の当たりにしてきた。「この時だよ、こんなすごいことだったんだって気づいたのは。めちゃくちゃたくさんの人がいたからね」と彼は語る。

ニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンドガーデン、90年代グランジシーンの秘蔵写真が公開

Lance Mercer/Morrison Hotel Gallery

ロラパルーザのバックステージ
1992年のロラパルーザでヴェダーと話をしているパール・ジャムのギタリスト、マイク・マクレディとサウンドガーデンのクリス・コーネル。

ニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンドガーデン、90年代グランジシーンの秘蔵写真が公開

Danny Clinch/Morrison Hotel Gallery

パール・ジャム(ダニー・クリンチ撮影)
2013年にリグレー・フィールドで演奏するパール・ジャム。「メンバーとの関係は重要だ。彼らが”スイート・スポット”と呼ぶドラムやアンプの後ろに行くことを許してもらって、バンドのメンバーとオーディエンスと会場が繋がっているその瞬間を撮ることができるわけだからね。
それが大きいとか小さいとかは関係ない」とフォトグラファー、ダニー・クリンチはローリングストーン誌に語る。

ニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンドガーデン、90年代グランジシーンの秘蔵写真が公開

Dustin Rabin/Morrison Hotel Gallery

クリス・コーネル(ダスティン・ラビン撮影)
ラビンは長年に渡って何度もサウンドガーデンを見てきた。「なぜこの写真にすごく惹かれるのかは自分でもわからない。自分がサウンドガーデンを愛す理由を思い出させてくれるあの夜の感覚が具現化されているんだ」と、2013年のトロントでのコーネルのライブを振り返る。

ニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンドガーデン、90年代グランジシーンの秘蔵写真が公開

Karen Mason Blair/Morrison Hotel Gallery

アリス・イン・チェインズ(カレン・メイソン・ブレア撮影)
1990年、アリス・イン・チェインズの(左から)マイク・スター、レイン・ステイリー、ジェリー・カントレル、ショーン・キニー。「当時のシアトルのヴァイブはまさに家族みたいな感じだったわ。例えば、カントレルはうちのソファーでよく寝てた、とかね」とブレアは語る。

ニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンドガーデン、90年代グランジシーンの秘蔵写真が公開

Clay Patrick McBride/Morrison Hotel Gallery

コートニー・ラヴ(クレイ・パトリック・マクブライド撮影)
レコーディング中にタバコ休憩を取るコートニー・ラヴ
編集部おすすめ