昨年8月のテイラー・スウィフトとのステージ共演に続いて、最新アルバム『シャイン・ア・ライト』ではエド・シーランと共作、ジェニファー・ロペスと共演を繰り広げたブライアン・アダムス。約3年半ぶり、通算14作目となるそのアルバムには、ポップとロックとR&Bがほどよくブレンドされたメロディックなサウンドが展開される。
幾つになっても青春真っ只中といった印象のカナダ人ロッカーに、若手ミュージシャンとのコラボや変化する音楽シーンについて語ってもらった。

ーアルバム『シャイン・ア・ライト』にはエモーショナルなロックもあれば、ポップスもあり、R&Bもあり、あなたの40年のキャリアを包括する印象です。アルバムには明確なテーマがあったのですか?

明確なテーマがあったわけじゃないけれど、「シャイン・ア・ライト」のような前向きな歌が世の中に必要だって強く思うんだ。この曲のアイデアが生まれたのは、僕の両親ふたりが入院している時期だった。幸いにも母親は健在だが、父親は亡くなった。何か形にして、ふたりを前向きに送り出せるようにしたかったんだ。

ー前作『ゲット・アップ』を引っさげたワールド・ツアーは大盛況、2017年1月のジャパン・ツアーには「ブライアンの来日公演史上No.1」の呼び声も高かったです。前作や、あのワールド・ツアーが新作に与えた影響とは?

そうだね、前作が歓迎されたとすれば嬉しいし、実際そうだった。だけど僕が作るアルバムはどれも、あくまでも何年かのスパンの間に生み出せた最高の曲を集めたもの。今年もまたスタジオに入って、別のアルバムをレコーディングする予定だよ。今から楽しみにしてるんだ。

ータイトル曲「シャイン・ア・ライト」でのエド・シーランとの共作には驚きました。
ブライアンから声を掛けたのですか? 具体的な経緯を教えてもらえますか。

エドとはダブリンで出会ってからEメールでやりとりを続けていた。で、僕が「シャイン・ア・ライト」のアイデアを送って、コラボレーションしたいかどうかを彼に尋ねたら、すごく気に入ってくれたようだった。そのあと数週間にわたって曲のアイデアを互いに送り合ったよ。それがこうして曲となって完成。Eメールって便利だよね。

ーその共演曲のミキシングは、エドの一連の作品を手がけるマイク”スパイク”ステントに任せていますよね。

うん、僕からエドにスパイクを紹介してくれと頼んだんだんだ。彼がミキシングでどんなふうに手を加えるのかも興味があった。スパイクは素晴らしい仕事をしてくれたよ。

ーエドはブライアンの「アイ・ドゥ・イット・フォー・ユー」旋風が巻き起こった1991年生まれ。59歳と28歳と親子以上も離れていますが。


そうだね、ミュージシャンなら異なる時代に生まれた相手と一緒にやれるものだよ。それに僕は1984年にティナ・ターナーと共演しているからね。他の人と一緒に歌うのは、いつも楽しいよ。

ーそういえば、昨年8月にテイラー・スウィフトともステージ共演を果たしています。彼女のレピュテーション・スタジアム・ツアーのトロント公演で彼女に「大好きな曲を作った人」と紹介されて「想い出のサマー」を一緒に演奏しましたよね。

あれは、まったく予想していなかったこと。前日の夜に彼女のギタリストに会って、彼女のライブのチケットを2枚入手したいんだけどって頼んだら、彼に言われたんだ。「でも気をつけたほうがいい。彼女はきっと君に歌ってもらおうとするはずだよ!」ってね。

ーテイラーやエドのような若手ミュージシャンとコラボしたのには、彼らのファンのような若い人たちにも、自身の音楽を届けたいという思いがあったのでしょうか?

一緒に曲を書いたからといって、彼らの若いリスナーを獲得できるわけじゃない。どんなに曲が良くても、ラジオでは流れないだろうし。何しろ40を過ぎた人間のリリースした音楽を、若者が自分のプレイリストに加えることは、まずないよ。
だからアルバムをリリースする時は、毎回再出発するような気持ちを忘れないようにしている。

ーもうひとり、大物スターとの共演が実現しました。ジェニファー・ロペスとの「ザッツ・ハウ・ストロング・アワ・ラヴ・イズ」での共演は、どのような経緯で実現したものですか?

印象に残るようなエピソードがあればよかったんだけど、僕に話せるのは、彼女のマネージャーに曲を送って参加してくれるかどうか尋ねたら、その返事がイエスだったということくらいかな。楽曲を届けたら、彼女がヴォーカルを入れて送り返してくれた。僕の求めるサウンドにしたかったので、向こうのエンジニアたちとも、あれこれEメールを介して作業を進めた。話せるのはそれくらいかな。

ーアルバムには若手に加えて、ジム・ヴァランス、キース・スコット、ミッキー・カリー、パット・スチュワード、フィル・ソーナリー、ボブ・ロックといった、これまであなたのキャリアを支えてきたベテラン勢も多く参加しています。今作の制作で最もこだわったのはどういうところですか?

僕のスタジオ・アルバムは、どれもその時期に自分が生み出せる最高の楽曲を集めたものなんだ。だから当然ながら、昔からの友人や新しい友人とのコラボレーションになることもある。音楽を作る上での最大の喜びだよ。

ー「ウイスキー・イン・ザ・ジャー」のカバーが収録されたのには驚きました。元々はアイルランド民謡ですが、前回の『アルティメイト』ツアーの後半でもアンコールの定番曲でしたよね。
やはりシン・リジィのバージョンにインスパイアを受けたのでしょうか? 

ありがとう。あの曲は、もともと僕の照明ディレクターからダブリンで演奏するように勧められたもので、以降セットリストに入れるようになったんだ。ご承知のように、僕はこの曲がとても気に入ってるよ。だからレコーディングしてアルバムにも収録したんだ。シン・リジィにはとても敵わないと思うけど。

ーこの2019年にデビュー40周年を迎えます。オリジナルのスタジオ・アルバムは今作『シャイン・ア・ライト』で14作目。長い音楽活動のなかで「得たもの」「失ったもの」「変わらないもの」を、それぞれ教えてください。

セットリストは、40年前より今のほうがずっと好きじゃないかな。間違いないよ。「得たもの」は、今では僕にはより豊富な知識があり、僕たちの住むこの自然界を守らなくてはいけないと知っている。その手助けを自分の声を使ってできること。
「失ったもの」は、これまでの長い道のりには紆余曲折があり、その途中でドラッグやアルコールで大勢の才能ある友人を失ってしまったこと。あと「変わらないもの」は、美味しい紅茶が好きってことかな。

ー日本武道館での公演は前回で24回目、海外アーティストとしてはエリック・クラプトンに次ぐ歴代2位の公演数です。2020年の東京オリンピックのため今年9月に大規模な改修工事に入りますが、武道館にまつわる想い出は何かありますか?

24回と言えば、人生のうちの1カ月にも相当する時間だよね。東京でのライブにはいろんな想い出があるよ。僕にとって最高だったのは、武道館でライブDVDの収録をしたこと。あのコンサートには、これまで体験した最も忘れがたい瞬間もあったんだ。「アイ・ドント・ウォナ・リヴ・フォーエヴァー」を歌ったときだった。バンド編成はスリーピースで、キース・スコットがギター、ミッキー・カリーがドラム、僕がベース。音源が手に入るならぜひ聴いてほしいな。僕たちのバンドにとって最高の出来なんだ。

ーロックの存在感がヒット・チャートで希薄になり、もはや若者はロックに熱狂したり刺激を受けないかのようにも見受けます。
ブライアンはこの現状をどんなふうに見ていますか?

そういう見方もできるかもしれないけれど、結局のところ音楽はYouTubeのような場所でロックは残っていくだろうし、将来的には若い人たちがちゃんといい曲を書くようになると思うな。大切なのは、ロックかポップスかっていう「ジャンル」ではないよ。トゥエンティ・ワン・パイロッツのようにギターを弾くバンドもいるわけだし、あちこちで流れているのは、彼らの曲が優れている証拠だと思うんだ。

ー2人の娘さん(6歳と8歳)をもつパパとなったことで、ミュージシャンとして何か変化はありましたか?

間違いなく変化したよ。娘たちがいるおかげで世界を新たな視点で認識するようになった。彼女たちには余計なフィルターがないんだ。何かを好きになったり、もしくは好きにならなかったりすると、それを率直に教えてくれる。娘たちに歌ってあげるときは 笑わせたいから、しょっちゅう歌詞をおもしろくして替え歌にしてるんだ。

ー最後にジャパン・ツアーを待ち望む日本のファンにメッセージをお願いします。

いつも温かくて、こんなに長く支えてくれている日本のファンは、大切な存在だよ。早くみんなに会いたいな。

質問作成:安川達也、村上ひさし

ブライアン・アダムスが語るエド・シーランやテイラーとの邂逅、武道館にまつわる思い出

ブライアン・アダムス
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