ザ・ローリング・ストーンズのアメリカツアー直前、ロニー・ウッドとキース・リチャーズにバンドがどのようなセットを計画しているのかを訊いた。キースが、ショウ幕開けで演奏する一番好きな曲は? ミックはなぜ「ビースト・オブ・バーデン」の演奏が好きじゃないのか? U.S.ツアー開始前に、バンドがどのようなショウを繰り広げるかを読者のみなさまに共有しよう。


ザ・ローリング・ストーンズはこれから行われる毎日のショウで、どの曲をプレイするかを決めるシステムがあると言う。コンサートの日には、バンドは通常、午後にサウンドチェックを行う。そしてミック・ジャガーはキーボーディストのチャック・リーヴェルと共に、セットリストを作る仕事に取り掛かる。決めるにあたって必要なものはこのようなものだ:前回のその町で最後にプレイした曲を確認し、繰り返しにならないようにすること。そしてジャガーが自身の声のことを考え、声が出せる曲であること。時々、バンドが提案することもある:「彼はすごく正直なんだ」と、ギタリストのロニー・ウッドは言う。「彼は、”うーん、答えはノーだ。ここではきっとウケないよ”とか、”その曲、この町でやりすぎじゃないか”って言われることもある。かと思えば、”いいね、やろうよ”と言われることもあるから、予想ができないんだけど、なぜ、その曲をやらないかの理由がいつも明確なんだよ」

ウッドはバンドには”曲のストック”があると言う— —例えば「ブラウン・シュガー」や、「ダイスをころがせ」と言った楽曲だ——彼はその曲を「ショーのご馳走」だと考えていて、ここ最近のツアーで演奏した彼のお気に入りの楽曲はファンに驚かれていた。そこには、1965年の「プレイ・ウィズ・ファイア」(「キースと俺で、アコースティックでこの曲をもっとたくさんプレイしたいと思ってる」)、そして1989年の「ミックスト・エモーションズ」(「これはどこからともなく演奏することが決まったんだ— —ミックが”この曲できるかな? ”と聞いていたんだよ」)も含まれている。

「完成形のセットリストをもらう時は……」と、ウッドは続ける。「俺のキャンバスが素晴らしいものになるんだよ」ウッドは20年間、バンドのセットリストをアートに昇華し続けており、詳細をスケッチし、サイケデリックなイラストを描いていた。
彼の楽屋に来るゲストは、その絵が欲しいと何年も言い続けており、そのため彼は自身の本『Set-Pieces』で、自身の絵を世に出すことを決めた。U.S.はシカゴから最新ツアーをスタートするストーンズに、我々は昨年のセットの中で、一番好きだった曲を聞いた:2018年6月19日、ロンドンのトゥイッケナムスタジオで開催されたショウでの内容だ。以下が、彼らの答えである。

1.「ストリート・ファイティング・マン」(1968)

ツアー当初、バンドはコンサートを「悪魔を憐れむ歌」で幕開けていた。しかしそれから、ミック・ジャガーは爆発的な政治ロックチューンで公演をキックオフすることにした。「すごく気持ちよかったよ」と、キース・リチャーズは明かす。「この曲以外に、オープニングにふさわしい曲があったかな」

2.「ライド・エム・オン・ダウン」(2016)

ストーンズは、1955年にリリスされたエディー・テイラーの隠れた名曲を、ショウの前半に持ってきた。「前回のツアーで、ミックはブルースの曲を一つだけにしておこうと決めたんだ」と、ロニー・ウッドは語る。「俺は反対だったよ。なんだよ、一曲じゃなくってもっとやろうぜ! ってね」

3.「ビッチ」(1971)

「スムーズに演奏できるんだけど、トリッキーでもある」と、リチャーズは語る。「ちょっと気をつけなきゃいけない、面白いブリッジがあるんだ。その部分以外は、俺たちが大好きなストレート・ソウル・ロックなんだよ。
チャーリー・ワッツの基本的な部分だね」

4.「ビースト・オブ・バーデン」(1978)

バンドはこの曲でサウンドチェックをいつもしている——だからなぜジャガーがこの曲をセットリストに入れないのかが謎だ。「俺がセットリストを見て、”ミック、この曲のリハーサルをやっただろ! ”と言うんだよ」とウッドは振り返る。「だけど彼は返事もしないで— —焦らしみたいなものだな。そして3週間後、ようやくセットに入るんだ。だから、いつでもできるように準備しているんだよ」さらにリチャードは、「この曲をもっとやれたら良いんだけどね。いつだってこれを演奏すると、冒険しているような感覚になるし、新たな発見がある。でも、ミック次第なんだ。彼がやりたくない時はやらない」と加えた。

5.「ホンキー・トンク・ウィメン」(1969)

リチャード曰く、「『ホンキー・トンク・ウィメン』は演奏するのが大変な曲なんだよ」とのこと。「すべてがピッタリと合えば、素晴らしい曲なんだ。最初の音符があまりない部分があって、テンポを落として正確に合わせないといけない。チャレンジングなことなんだけど、大好きな曲だよ」

6.「ユー・ガット・ザ・シルヴァー」(1969)

リチャードが初めてリード・ヴォーカルを担当したこの楽曲は1999年までライヴで演奏されることはなかったが、それ以降定着した。
「彼はこの曲が、どれだけ人々に愛されているか知らなかったんだ」とウッドは明かす。「再びみんなにこの曲を聴いてもらって、それが気に入ってもらえたんだ」

7.「悪魔を憐れむ歌」(1968)

リチャードはこの壮大な楽曲を「とても奇妙な曲。曲の中の間隔が面白くて、素晴らしい曲なんだ。ロニーと俺は、ブリッジまで演奏をしないんだよ:”会いたかった! ”ってね。それからダイナミックに展開していく。終盤ではちょっと遊びを入れてるよ」

8.「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」(1968)

「ものすごいエナジーを持っていかれるんだ」と語るのはウッド。「『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』はいつだってグルーヴィーで、とても良いヴァイヴに溢れてる。オーディエンスに幸せを撒き散らして、バンドにも良い影響があるんだよ。人が笑ってるのを見るのは楽しいよね。それが、俺たちの好きなことなんだよ」

9.「ギミー・シェルター」(1969)

オリジナルの楽曲では、リチャーズはいくつかのギターのサウンドを重ねていた:故に、ライヴでこの曲をプレイするのは「至難の技」だと言う。「一度曲が始まってしまうと、(大丈夫だけど)、正確な音量になっているかがわからないんだ。いつだってそれが不安でね。
最初はちょっと不気味な感じがして、時々スタジアムでエコーが聴こえてきたりもするよ」

10.「サティスファクション」(1965)

「このリフはどの時代の中でも最高のものだ」と語るリチャード。1965年からコンスタントにプレイしてきたにも関わらず、飽きたことは一度もないと言う。「未だにこの曲をどうやってタイトにするにはどうすれば良いか、自分に挑戦している。(ベーシストの)ダリル(ジョーンズ)と俺はここ最近も、このリズムの研究をしてるんだ——ほんの少しの違ったアイディアを入れることによって、曲が粋でカッコ良くなるんだよ」
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