様々な経験を経て、今の自分を冷静に見つめている生田、無尽蔵なスタミナを武器にエネルギッシュなパフォーマンスを見せる石田という対象的な2人の話から、フォーメーションダンスを通じて獲得した団結力、冷静に周囲を見渡せる精神力、そして、レッドゾーンに振り切るほどの爆発力が、彼女たちのステージを支えていることが見えてきた。
フリーの場面でどう動くか
ー去年のツアーは、振り付けが決まっていないフリーの場面でどう動くかが裏テーマだったとYOSHIKO先生がおっしゃっていましたが、いかがでしたか?
石田 フリーで与えられた時間で自分をどう見せるか自由に表現できたので、私はファンの方を前のめりで煽ってた気がしますね。
生田 フリーってすごく難しくて。決められた振り付けがあるのにそれをなくして「自由に動いて!」って言われてもなかなか自然に動けるものではないんです。だけどいろんなアーティストさんの動画を見てカッコいいと思ったものを取り入れてみたら、いつも来てくださるファンの方が「えりぽんの動きがちょっと変わった」って気がついてくださいました。石田 カッコよく見せる曲とふざけていい曲でそれぞれフリーの時間があったんですけど、楽しくふざけられる曲はメンバー間で楽しくなりすぎちゃって、お客さんを置いていきがちになってしまうんです。それはよく注意されました。
生田 ああ、されたね。でもYOSHIKO先生もふざけることが大好きなので、私とか石田亜佑美ちゃんみたいなふざけがちなメンバーがふざけてると「よかったよ」って。
ー指定されたパート以外でもアドリブで動くことはありますか?
生田 基本的にはないです。でも、メンバーの地元公演だと、その子の近くに寄るときに違う振り付けをやったりすることはあります。例えば、私の地元公演で飯窪春菜ちゃんと佐藤優樹ちゃんと一緒に歌うところがあったんですけど、元々は私の場所じゃなかった真ん中まで連れて行かれたりっていうのはありました。
ーそういう予期せぬ展開があると、次の動きで混乱しませんか?
生田 しますしますします! 自分の中では全部決まっているんですよ。ルーティーンがあるんです。
石田 確かに。
生田 だから、それがちょっとでも変わっちゃうと、どこから次に入っていいかわからなくなってしまうので、あたりをキョロキョロしちゃいます。
石田 わかる。自分でも「今日はいつもと違うダンスを踊ってみよう」って頭の中で考えて、いざ本番でそれをやると、そこは上手くできてもその次の振り付けに入れなくなって、結局カッコ悪い……みたいなことは全然あります。アドリブとはいえ、ちゃんと練習してからステージに立たないとそういう失敗が起きる。だから、フリーの部分が引き立つように、ちゃんと踊るべきところは踊るっていうメリハリを大事にしています。
ーさらに、ダンスのフォーメーションもありますからね。
石田 確かに加入したばかりの頃はよく忘れたりしましたけど、最近は景色や人と人との間隔で覚えられるようになりました。
生田 うまくなったよね。加入した頃は本当に覚えられなくて、「ここは絶対合ってる」って思っても間違えてたりとか、いざステージの上に立ったら「どこだっけ?」みたいなこともありました。でも今は、ライブ中のアクシデントにもすぐに対応できるぐらいになったので。
石田 自分のことだけしか見えてないとそれはできないんですけど、今は周りにみんながいることがわかってるから、誰か一人が欠けても「じゃあ、この子が代わりをしよう」ってみんなすぐに対応できるんです。これはグループだからこそ鍛えられた部分だと思います。
フォーメーションダンスの副産物
ーアクシデントでメンバーが急遽ステージ袖にはけるような場面では、メンバー間でどういうやり取りがあるんですか?
石田 目ですね。ステージ袖にいらっしゃるスタッフさんからの指示を目で感じて、それを他のメンバーに目で伝えて、「私が歌うね」「私がそこに立つね」みたいなやり取りをしています。
生田 あと、自分の位置を背景で覚えるようになったから、隣の子のことも覚えているんですよね。隣に誰がいるかっていう感覚がいつもある。だから、「じゃあ、自分がこっちにズレようかな」って動くと、隣にいる子もそれに合わせてちょっとずつズレてくれるんです。
ー加入当時に比べて、ライブ中の自分の視野ってどれくらい広くなりましたか?
生田 最初の頃は目の前のお客さんばかりを見ていたから、マネージャーさんや先生に、「生田は下を見すぎだ」ってよく言われてました。で、そのときにマネージャーさんと私とダンスの先生で作ったノートみたいなのがあるんですけど、そこにできなかったことを書き出して、ツアーの最後の日までそれを全部クリアできるようにするっていうこともやっていて。そういう地道な努力はしてました。
石田 加入したときは、「コンサートは楽しくやらなきゃ」っていう固定観念があったんですけど、最近は「コンサートはそもそも楽しいものだから」って思えるようになったんです。ちょっとした違いなんですけど、そう考えることで楽しさあふれる笑顔が自然と出てくるんです。
ーちょっとした発想の転換が。
石田 あと、最近視野が広くなったと感じる瞬間は、メンバーを見ていて「ああ、この子、今疲れてるな」っていうのがわかるとき。そういうときはその子に対して「頑張ろうね!」って曲中に声をかけてます。まあ、これは自分が先輩の立場になってからですけど。マイクがないところで地声でわーっと言ったり(笑)。そういうことがこっそりとステージの上で行われています。それらを通じて、最近はメンバーの体調がわかるようになりました。
ーそれはフォーメーションダンスによる影響が大きいんでしょうか。動きを揃えないといけないという意識が、結果的に自分の横や後ろへの感覚が研ぎ澄まされることにつながった。
生田 気にはしますね。例えば、3連休5公演の5公演目とかになると皆つらいじゃないですか。そういうときにめっちゃ大声で「よっし! 頑張ろう!」とか言ってます。「頑張ろうねっ!」って。
石田 確かに、フォーメーションダンスだからできるところはあります。例えば、横一列になって歌う曲だとメンバーと目は合わせられないですけど、フォーメーションダンスってお客さんにお尻を向けるときとか、みんなが円になったときにメンバーと目を合わせたりできるものなので、そのときにメンバーの体調を伺うことができてると思います。これがただの二列だったりするとできないです。
ー最近は先輩後輩にかかわらず、お互いに注意しあえるような空気が生まれているそうですね。
生田 確かに、ちょっと前よりは後輩との距離が縮まった気はします。以前は小田さくらちゃんまでの11期と、12期から下みたいな感じに分けられがちだったというか。
石田 壁を感じちゃいますもんね。
生田 だからそうやって先輩後輩の壁がなくなったことで注意しやすくなったし、いろんなことに気づいてアドバイスし合えるようになったのは絶対にあって、最近はグループをよくしようと思ってる子が増えたと思います。
ペース配分は考えられない
ー先ほど、3連休5公演なんて話が出ましたが、ペース配分は考えたりするんですか?
石田 私は考えられない人なんです。馬鹿みたいにガムシャラにやっちゃいます。でも、それでファンの方も楽しんで見てくださるからいいんですよ。しかも私は誰よりも体力に自信があるので、こうやって突発的なエネルギーを持っている人がグループにいることで、「石田さんが弾けてるから私たちも弾けよう!」みたいに思ってくれたらいいなって。自分はそういうエネルギー源になれるようにやってます。だから当然つらくはなるんですけど、つらくなってくると「え、つらいんだけど。
ーランナーズハイじゃないですか。
石田 正直、ハイになっているところはありますね。
生田 私はペース配分をめちゃめちゃ考えるほうなんですけど(笑)、5公演っていうより1日単位で分けますね。1日2公演の2公演目までに体力を残すためのペース配分。2公演目の最後までで体力を使い切って、最終日の5公演目は「もう終わりだー!」って必死に頑張る(笑)。それが自分にとってベストなやり方です。加入当初はすべてに対して全力でやっていたんですけど、そうすると5公演目で疲れが顔にまで出るので、できるだけ1日全体で考えるようになりました。なので、地方で食べるゴハンは本当にエネルギー源になります(笑)。最近のツアーは、外でゴハンが食べられるときは絶対に行くようにします。
石田 疲れてても行きますもんね。
生田 石田亜佑美ちゃん、牧野真莉愛ちゃん、森戸知沙希ちゃん、譜久村聖ちゃん、この5人は絶対に食べに行きます(笑)。夜遅くても、朝早くても行く。
石田 疲れてるからホテルで休む子もいるんで、自由参加なんです。
ーなるほど。でも、体力をセーブするにしても上手に調節できるものなんですか?
生田 自分の限界を知っているんです。ここでダメになるっていうのがわかるからセーブできる。でも、それは一度経験しないとわからないんですよ。
石田 私、まだ限界までいったことないです。いいのか悪いのか。
生田 いいことだと思うよ。私は最初の頃は本当にガムシャラにやることしかできなかったんです。表現というより、踊れ、歌えって感じの強いテーマしか持てなかった。あと私、先生に怒られすぎていた時期……自分的にあまりよくなかった時期っていうのがあって、それがあるからこそ「これ以上怠けていた時期に戻っちゃいけない!」っていうちょうどいいラインが見つかっているんです。
ーところで、会場に設置されているビジョン用のカメラはどれぐらい意識してますか?
石田 めちゃくちゃ意識してます。会場でのリハーサルで「あ、私はこの場面で映ってるんだ」ってわかったら意識してカメラ目線にしてみたり。あとは、あえてカメラ目線じゃなく、楽しんでいる表情だけを撮ってもらうこともあります。でも、それはあえて意識して楽しんでいる顔をしているということなので、結局、2時間の間、常に意識していますね。しかもリハーサルでは映ってなかったのに、本番になったら映ってたりすることもあるので、それを考えるとたとえ自分が映っていない場面でも常に気は抜けないです。いつ撮られてもいいように構えています。
ー音に関してですが、イヤモニの場合はメンバーごとに音を調整できると思います。音の返しのバランスはスタッフさんに注文するタイプですか?
生田 私はします。音というより自分の声を聴きたいので、できるだけ声を上げてもらってます。もっと言うと、低音を下げてもらって、高音と自分の声を上げてもらってます。低音はイヤモニをしてなくても自然と聞こえてくるので、高音のリズムを上げてもらうんです。モーニング娘。の曲は全部16ビートの速いリズムでとってるので、私の場合は高音を上げてもらうことでビートがとりやすくなるんです。
石田 私は音を調節するというよりは、モニターからの自分の声で調子を確かめるようにしています。
この熱い気持ちを引き継ぎたい
ー今のモーニング娘。19の強みは何ですか?
生田 臨機応変……っていうのもおかしいですけど、何でも対応できるのが今のモーニング娘。19の強みだと思っています。例えば、「この日までに絶対に覚えなきゃいけない」っていうものがあったり、映像からでしか振りが起こせなかったりするものもあるんですけど、モーニング娘。19は動画を見てみんなで合わせるための時間をしっかり作るんです。それで、その場で場位置を渡されて、「はい、これやって」って言われても基本的にみんなできる。だから、最近のモーニング娘。19の表の強みはフォーメーションダンスですけど、裏の強みは何でも対応できることなんだと思います。
石田 あと、どの時代にも凄い個性を持った先輩方がいらっしゃったと思うんですけど、今も個性は負けていないんです。歌ならこの子、ダンスならこの子、雑誌に出るならこの子、みたいにみんなそれぞれ一つ以上の強みを持っている。それがグループとして集まったときにより強い力になるので、それは今の強みだと思います。
ーでは、モーニング娘。19の今後の目標は?
生田 もっとみんなのスキルが上がればいいと思います。今はダンスのメンバー、歌のメンバーって分かれることが多いので、全員がオールマイティに対応できるのが理想です。いろんな場面でモーニング娘。19の名前が広がるようにメンバーの対応力が増せば増すほど、今のモーニング娘。19を知らない方にも知ってもらえるきっかけが生まれると思います。石田 私は、モーニング娘。19のグループとして熱いところが一番好きなので、その熱量はこれからもキープしたいです。今、モーニング娘。19はオーディションを行っていて、もうすぐ新メンバーが入ってくる状態なので、新メンバーにもこの熱い気持ちを引き継ぎたいです。リハーサルが連日続いて体力的にしんどかったり、楽しい活動ばかりではないので、それぐらい熱い気持ちがないとモーニング娘。19はできないんだよっていうことを教訓としてつなげていきたいと思います。
ー最後になりますが、YOSHIKO先生は皆さんのことをべた褒めしてましたよ。「 17を超えられるか不安だったけど、見事に超えてきた」って。
石田 うれしい! 楽しかったもん、ライブ。
生田 楽しかったね。
ーやっぱり、楽しいということが大きいですか。
石田 はい。怒られてばかりだった初期の頃は……。
生田 楽しくなかったね。
石田 うん、「楽しまなきゃ!」って必死だったけど、今は自然と楽しいと言える。怒られることをしていたからしょうがないんですけど、今はその経験から学んだ後なので。ファンの方にもよく言うんですが、「ライブは絶対に楽しいから、何も心配しないで来てください!」って。間違いないです。

生田衣梨奈
1997年7月7日生まれ。福岡県出身。2011年1月2日、9期メンバーとしてモーニング娘。に加入。現在は、石田亜佑美とともにサブリーダーを務める。

石田亜佑美
1997年1月7日生まれ。宮城県出身。2011年9月29日、10期メンバーとしてモーニング娘。に加入。昨年末、グループのサブリーダーに任命された。
<INFORMATION>
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