フジロックフェスティバルには11年ぶりの出演となるELLEGARDEN。雨模様の天気の中、GREEN STAGEには多くのオーディエンスが集結。
2019年はALLiSTERのジャパンツアーへの出演、MIYAKO ISLAND ROCK FESTIVALの出演に続き、三度目のステージとなる。昨年の再始動後、目にする機会が限られているバンドだけに、いやが上にも期待が高まる。

赤と青を基調にしたライティングの中、いよいよ4人がステージに姿を現す。1曲目は「Fire Cracker」。シンコペーションを効かせたリフに加え、歪みと荒々しさを湛えたサウンドで、ギターが縦横無尽に動き回る。続いては「Space Sonic」。ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムのみの編成なのに、なぜこれだけ多彩な表現が一曲の中で打ち出せるのだろうか。ダイナミックな展開、ヴォーカルのスケール感に圧倒される。3曲目は「Missing」。それまで抽象的なヴィジュアルだったものが、後方のスクリーンにELLEGARDENのロゴが映し出されると大きな歓声が。ドラムがタムを絡めてジワジワ盛り上げつつ、ミドルテンポで歌とギターをしっかり聴かせるパワーポップ風味の濃い一曲。「Missing」の連呼とともに、どこか切なさを感じさせる独特の余韻がある。


それにしても細美武士(ヴォーカル、ギター)の「歌」は耳にすっと入ってくる。「高架線」では<南北へ続く高架線/この先にはきっとあると/ささやいてる>という歌詞が刺さる。続けて披露した「Supernova」の<Shes gone>のフレーズもそうだが、切なさや甘さがほんのり漂う細美の歌詞とヴォーカルメロディはELLEGARDENの武器の一つだ。キャッチーな「Pizza Man」で駆け抜けたかと思うと、奥行きのある「風の日」でエモーショナルな響きを表現。

ここでMCが入る。細美が「11年ぶりフジロック。今年出演させてくれてどうもありがとうございます。ヤベー最高だな」と話すと、他のメンバーに振る。
高田雄一(ベース)「ベースの高田です。今日はお足元悪い中ありがとうございます。最後までよろしく」
生形真一(ギター)「11年前、一回休止してから、またここに立てるなんて思ってもいなかった。しかも今日はこんなにたくさんの人ーーもちろんフェスを楽しみに来た人がほとんどだろうし、俺たちを観に来てくれた人たちもいると思う。
ほんとに感謝してます。ありがとう!」
高橋宏貴(ドラム)「こんばんは。ちょっと『高橋』って言ってもらっていいですか。せーの『たかはしー(観客の声)』。……ホントみんなありがとう。こんな絶景が残りの人生でまた見れるとは思ってなかったです。フジロックありがとうございました。みんなもありがとう!」
4人の表情はなんとも言えない充実感に満ちていた。

「11年間、フジロックのステージにまた立つんだと毎日思ってた」

特別な場所に帰ってきたという想いを噛み締めながら披露されたのは「The Autumn Song」。細美の歌声と生形のコーラスによるハモリは、ブリンク182のマーク&トムのハモリを連想させる絶妙な相性。味わい深いメロディを緊張感のある演奏で聴かせてくれる。ウィーザーを彷彿とさせる「Middle Of Nowhere」はドラマティックな響きが印象的。
展開に派手さはないものの、そのぶん細美の歌に吸い寄せられる。そして10曲目は「金星」。ミドルテンポの重厚なサウンドで、皆で肩を組んでシンガロングしたくなるようなムードに拳を握りしめて熱くなる。

フジロック現地レポ ELLEGARDENの「物語」は終わらない


ここで細美のMCが。
「このフジロックの今日のステージが決まってから、きっと人生最高の一日がまた更新されるんだなと思って、ずっと楽しみにしてて。ステージの1秒1秒がバッと過ぎないように、噛み締めて楽しみたいと思ってたんだけどさ、すごい迷ってんの。飲むべきか、飲まざるべきか。ウブ(生形)はまたここでやれるとは思ってなかった、高橋はまたこんな光景を見れるとは思ってなかったと言ってたけど、休止の直前、フジロックに(ELLEGARDENで)出てーー雷雨の時にさ、このステージ(GREEN STAGE)に出る人だけが渡れる川があるんだよ。小さな木の橋があって。俺はその橋を逆側に向かって渡りながら、絶対この橋をもう一回自分のバンドで渡るって11年間毎日思ってたから。そういう物語ってみんなに関係ないかもしれないけど、俺にとっては今日夢が叶ったわけよ。そう考えると俺たちの人生も大したもんだったなって気もするし、もう上出来だ、何も文句はねぇよって思うんだけど、せっかく時計の針がまた動き出したんで、これから先はガキの頃には思いつかなかったような新しい夢を一緒に見ましょう」

そう話し終わると「行こうぜフジロック!」という掛け声とともに始まったのは「Red Hot」。
リズミカルなギターリフで疾走し、サビに向かってテンションがどんどん高まっていく。続けて披露されたのは「ジターバグ」。冒頭の歌い出しで一瞬にして持っていかれる。<一切の情熱がかき消されそうなときには/いつだって君の声がこの暗闇を/切り裂いてくれる>の歌詞が力強いメロディとともに響いてくる。「No.13」の後に披露したのは「Salamander」。ヒリヒリしたギターと鋭さを兼ね備えた躍動感のあるビート。彼らならではのグルーヴ感で”うねり”を作り上げる。15曲目は「虹」。静と動を大きく行き来するダイナミックな曲。中盤にアクセントとして入る生形のギターソロも効いている。

細美切り口で語るなら、彼が現在活動している別バンドのthe HIATUS、MONOEYESとはまた異なる面白さが、ELLEGARDENの音楽にはある。細美の奔放なヴォーカル、生形の攻撃的なギター、高田のタイトなベース、高橋のパワフルなドラム。
いい意味でのラフさを兼ね備えた緩急自在な演奏は、ELLEGARDENが鳴らすロックの真骨頂と言えるだろう。

流行りを超越した「普遍性」

ライブも終盤に差しかかり、細美の最後のMCが入る。
「すげー楽しかったです。ありがとうございました。10年前、いろんな理由があって活動を休止したバンドが、こうして10年経って集まって仲良くやるなんて茶番だなと思ってたんだけどーー今めっちゃ仲良いんだよね。でも茶番じゃねぇんだな。10年経てば変わる。俺も自分で分かるくらいに変わった。だから、ありえないんじゃないかなって思ってたことがこれからも起きるから。またどこかで会いましょう」

そして「俺たちのバンドって日本で一番シンガロングが大きいバンドだっていう記憶があるんだよね」と付け加えて披露されたのが「Make A Wish」。「行こうぜ!」の掛け声とともに怒涛のシンガロングと荒ぶる展開で突っ走っていく。そして最後を締めくくったのは「スターフィッシュ」。
ギターの切れ味と厚み。そして繊細なメロディと<こんな星の夜は/君がいてくれたなら/何を話そうか>という歌詞で淡い情景を生み出す。

フジロック現地レポ ELLEGARDENの「物語」は終わらない


細美はMCで繰り返し「行こうぜ!」と言っていた。4人が奏でるロックに「新しい夢」を託し、愛と希望と勇気を持って日々生きていく。その先にあるものを一緒に見ようじゃないか……と呼びかけているようだ。そう、これは彼らの「物語」であり、我々の「物語」でもあるのだ。

アンセミックな曲の数々、エネルギッシュでエモーショナルなサウンド。海外のオルタナティヴ・ロック、ポップ・パンク、パワーポップから影響を受けてきたELLEGARDENというバンドの等身大の魅力は、いつどんな場所でも色褪せないし、流行りを超越した「普遍性」を強く感じさせるものだと、あらためて実感したステージだった。
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