1960年代、米ローリングストーン誌で活躍したフォトグラファー、バロン・ウォールマン。当時のアイコニックなロッカーの姿を振り返る。


フォトグラファーとしての経験は十分か?
写真家バロン・ウォールマンが捉えた、60年代ロッカーの姿

Courtesy of Baron Wolman/Omnibus Press

1968年、米カリフォルニア州サンフランシスコのライブハウス、フィルモア・ウエストで撮られたジミ・ヘンドリックスのこの写真をウォールマンは「決定的瞬間」と呼ぶ。「フィルモア・ウエストでの2公演にわたってジミ・ヘンドリックスの写真を撮ったことで、コンサート写真について多くを学んだ」とウォールマンは言う。「最高のコンサート写真というものは、被写体が偉大なミュージシャンであるだけでなく、エンターテイナーでなければ撮れないことに気づき始めていた。ヘンドリックスはまさに完璧なエンターテイナーだった」この写真を撮影した夜、ウォールマンのなかで何かが変わった。「私はバンドと完璧に調和していた。自分がバンドの一員だと思えるくらい。本当に魔法みたいなことが実現したんだ」とウォールマンは言った。

ブロークダウン・パレス
写真家バロン・ウォールマンが捉えた、60年代ロッカーの姿

Courtesy of Baron Wolman/Omnibus Press

1967年、麻薬捜索のあとでグレイトフル・デッドのメンバーがサンフランシスコの自宅の外で渋々ながらポーズをとっている。「ちくしょう、あそこから生きて出られただけでもラッキーだった」とウォールマンは振り返る。「彼らは私に向かって中指を立て、銃を向けながらものすごく楽しそうだった。ポーチに集まってもらうのに苦労したよ。彼らは『お前は誰だ? どこから来た?』と言った。
だから『ローリングストーン誌だ』と答えた。すると『ローリングストーンって何だ?』という答えが返ってきた。当時はまだ、創刊号さえ発行していなかったから」 。

リップ・イット・アップ
写真家バロン・ウォールマンが捉えた、60年代ロッカーの姿

Courtesy of Baron Wolman/Omnibus Press

1967年にテレビ番組に出演した時のリトル・リチャード。その頃、ロックンロールの革新者はカムバックへの道を歩んでいた。「本当にワイルドだった」とウォールマンはパフォーマンスを振り返った。「目の前の光景が信じられなかった。」

ロッドとヒッピーの出会い

写真家バロン・ウォールマンが捉えた、60年代ロッカーの姿

Courtesy of Baron Wolman/Omnibus Press

1968年、サンフランシスコのフィルモア・ウエストのステージ前方に立つジェフ・ベック・グループのロッド・スチュワート。「コンサートフォトグラファーにとって大切なのは、演奏をしている被写体が音楽以上のパフォーマンスをすることだ」とウォールマンは言う。「パフォーマンスを行えば行うほど、いい絵が撮れる。」ウォールマンは、ここに写っているスチュワートの印象的なポーズを指摘する。「音楽とは無関係のことをしているけど、それがまたとてつもなく笑えるんだ。だって、どうしてシンガーがステージの上でしゃがみ込んでるんだ? 地元のバンドは絶対にこんなスカーフを巻いたり、革靴を履いたりしない。サンフランシスコ・ベイエリアのバンドのほとんどはヒッピーで、レザーのフリンジなんかを身につけていた。」

ストーン・フリー
写真家バロン・ウォールマンが捉えた、60年代ロッカーの姿

Courtesy of Baron Wolman/Omnibus Press

1969年、オルタモント・フリーコンサートの直前にカリフォルニア州オークランドで撮影されたザ・ローリング・ストーンズ
「ストーンズを撮影したのはこの時が初めてだった」とウォールマンは言う。「以前から、この写真はミックとキースの関係性を潜在的に語っていると思っていた。背景にキースがいて、目立つ場所にミックがいる。」と語った。

ロックン・ミー・ベイビー
写真家バロン・ウォールマンが捉えた、60年代ロッカーの姿

Courtesy of Baron Wolman/Omnibus Press

1972年にバックステージで撮影されたスティーヴ・ミラー。「ギターと女という物語なんだ」とウォールマンは言う。「そこには何かしら象徴的なものがある。」

シー・ミー・フィール・ミー
写真家バロン・ウォールマンが捉えた、60年代ロッカーの姿

Courtesy of Baron Wolman/Omnibus Press

1968年、ロンドンで『トミー』のレコーディングを行うザ・フー。「スタジオで座りながら、彼らが曲作りに励む様子を目の当たりにするのは夢のようだった」とウォールマンは言う。「『トミー』のコンセプトはまさに変化だった。曲作りのあいだ、ピート・タウンゼントはずっと変更を加えていた。彼らは執拗にロックを新しい方法で表現しようとした。それまでロック・オペラなんて誰もやったことがなかったんだから。」
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