20周年を祝うサマーソニックに相応しいヘッドライナーとして白羽の矢が立てられ、クリエイティブマンの清水社長みずから手紙を書いて出演をオファーしたというレッチリ。2019年はサマーソニック側だけでなく、彼らにとってもアニバーサリーイヤーとなっている。まず、彼らにとってキャリアの転機となった傑作アルバム『カリフォルニケイション』は1999年6月発表のため、サマソニと同様、今年は『カリフォルニケイション』リリースから20周年となる。また、現在のギタリスト=ジョシュ・クリングホッファーが前任のジョン・フルシアンテに代わってバンドに加わったのは、今から10年前の2009年。つまり、レッチリが現在の4人になってから今年で10年の節目となるわけだ。
スタジアムはアリーナからスタンドまで人で埋め尽くされ、超満員の観客が開演の時を待っている。そこに現れたジョシュ、ベースのフリー、ドラムのチャド・スミスの3人がそれぞれに激しく楽器をかき鳴らし、その音が次第に噛み合ってグルーヴを形成し始めると、会場は早くも大興奮。レッチリのライブでは、オープニングはジャムというのが恒例だが、3人とも周りを気にせず自分のプレイに没頭しているようにさえ見える。しかし、それでいて最終的にはガッチリと組み合って、強靭なアンサンブルを作り上げるのだから、バンドというのは面白い。

Photo by Kazushi Toyota
3人のアンサンブルが耳馴染みのあるリフへと変化したところで、ヴォーカルのアンソニー・キーディスが登場。オーディエンスの大歓声を受けて披露された1曲目は、『バイ・ザ・ウェイ』収録の「Cant Stop」。続く2曲目には、『カリフォルニケイション』から「Scar Tissue」がプレイされ、会場の熱は早くも最高潮へと達した。

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2016年にリリースされた目下の最新作『ザ・ゲットアウェイ』収録の「Dark Necessities」では、バンドメンバー4人に加えて2人のサポート奏者が登場。『カリフォルニケイション』がバンドのメロウな側面を全面的にさらけ出した最初の転機作だったとすれば、『ザ・ゲットアウェイ』はレッチリ史上二度目の転機作だという事実が、立体的に作り込まれた演奏から伝わってくる。その後も、ほぼ『ザ・ゲットアウェイ』の楽曲に限ってサポートメンバーが一緒にステージに立ち、レッチリの進化した音像に貢献していた。
「Otherside」で大合唱が巻き起こってからは、スタジアム全体の一体感がさらに増していく。オーディエンスは「Dani California」「Californication」などの大ヒット曲を共に歌い、サポートにもう一人ベーシストが加わった「Go Robot」や「Around The World」といったファンクナンバーではアリーナ全体が大揺れとなっていた。
毎回、キッチリと固め過ぎた構成ではなく、その日の雰囲気で変わるセットリストと演奏も彼らの大きな魅力だ。この日は、フリーがベース弾き語りでニール・ヤングの「The Needle and the Damage Done」をカバー。セット終盤の「Under The Bridge」では、ジョシュのギタープレイに合わせてアンソニーが座りながら歌い、観客一人ひとりがスマホのライトをかざしてメロウなムードを共に演出。スタジアム全体が星空のように美しい光で彩られた。

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ザ・クラッシュ「The Magnificent Seven」のイントロを引用したジャムから「By The Way」へとなだれ込み、オーディエンス大興奮の中、本編は終了。アンコールでは、日本への特別な思いが込められた楽曲「Dreams of a Samurai」が披露され、最後は「Give It Away」の強烈なファンクで締めくくられた。30年近くにわたって世界のロックシーンを牽引してきたベテランならではの円熟味と、年月を経てもなお前に進み続けるバンドの進化を見せつける、圧巻の1時間半だった

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