ー大阪公演は中止となりましたが、今日の東京公演はどうでしたか?
タッシュ:日本のオーディエンスはシャイだと聞いてたけど、そうでもなかった。めちゃくちゃクレイジーってわけじゃないけど、きっと日本人ならではのクレイジーさで楽しんでくれたんじゃないかな。大阪公演のキャンセルは残念だったけど、そういう不可抗力は仕方ないし、私の体調が悪くて仕方なくキャンセルしたことだってある。それだけは避けたいと気をつけていること。
ータッシュにとってベスト・ライブとは?
タッシュ:そうね、ステージ上で私が落ち着いて演奏できた時のライブ。ひとつひとつの演奏にしっかり集中して着実にやって、全体のことはあれこれ考えていない状態ね。考えすぎると良くないようなの。演奏がすごく良くできて私がハッピーになると、それが観ているオーディエンスにも伝わる。今日のライブでもみんなが英語を分かるわけじゃないけど、すごく理解してくれたし伝わったと思う。
ーひとりでストリートに立ちバスキングしていた以前には、ロック・バンドも組んでいたそうですね。
タッシュ:音楽好きのティーンエイジャーなら当然って感じで、バンドをやっていた。とにかく音楽をやりたかったの。
ー3歳から始めたギターはもちろん、ベースやピアノ、トランペット、サックス、パン・フルートやパーカッションなど10種類以上の楽器を弾きこなせるそうですが、知らない楽器でも触ればなんとなく弾ける、という類い稀ない才能の持ち主なんでしょうか。
タッシュ:初めて見た楽器でも、なんとなく音の出しかたがわかるのは確かね。そこは持って生まれた自然な感覚かもしれない。とはいえ上手く演奏するためには、ものすごく練習している。練習にはすごく時間を費やしている。


Photo by Yosuke Torii
ーギタリストとして最も尊敬しているのは?
タッシュ:ジミ・ヘンドリックス、フリートウッド・マックのリンジー・バッキンガム、サンタナの3人ね。もう少し近い世代ではジョン・バトラーも素晴らしいと思う。
ージミ・ヘンドリックスとの比較はよくされているようだけど、自分では似ていると思う点は?
タッシュ:スタイル的には全然違っていると思う。でも似ているのは、ギターを弾いている時のフィーリングじゃないかな。
ー他のギタリストとは異なる、タッシュのオリジナリティとは?
タッシュ:たぶん、いろんなことを少しずつやってることかな。いろんなスタイルを。あとはギターをすごく高い位置で抱えるとか。でも、それは他にもやってるギタリストがけっこういるから、どうだろう、よく分からないな。


Photo by Yosuke Torii
ーさっき挙げてくれたギタリストたちが世代的に離れているのは、父親から影響を受けてきたから?
タッシュ:そう、父親が聴いていた音楽からは大いに影響を受けてきた。
ー子どもの頃って親の趣味や嗜好を否定したがるものだけど。
タッシュ:親の方が、ありのままの私を受け入れてくれたからだと思う。だから全然そういう反抗心は覚えなかった。生まれた時から、私はかなり変わり者だったし、どちらかといえば姉の方がもっとワイルドだったんだけど(笑)。女の子だからどうこうは言われたこともなかったし、家にカノジョを連れてきた時も”あ、そうなの”って感じで。ただもっと若い頃は、もっと無茶苦茶やっていた。飲んだり、酔いつぶれたり、あらゆる醜態を親の前でさらしてきたと思うな。
ーシンガーとしてインスパイアを受けた人は?
タッシュ:マット・コービー(Matt Corby)。オーストラリア人のシンガーで、ついこの間一緒にコラボしたばかり。すごく私たち、顔が似ているの。ホントそっくりよ(笑)。
この投稿をInstagramで見るTASH SULTANAさん(@tashsultanaofficial)がシェアした投稿 - 2019年 7月月9日午前12時48分PDT
ー1stアルバム『Flow State』にテーマやコンセプトはありますか?
タッシュ:『Flow State』というタイトルからも分かる通り、滑らかに流れる状態を導いてくれるアルバムなの。あなたの周囲にある全ての景色と、あなたの内側の全てが同時に一体となる、そんな状態よ。
ーそのコンセプトでアルバムを作ろうと思った何かきっかけでも?
タッシュ:私もそうありたいと願っているから。じっとしてピースフルでいることが私にはできないようなの。だから私なりの方法を探し求めている。私はすぐ自分に抵抗したり、周囲の人に抵抗したり、決めたことを辞めてしまったり。だから”フロー・ステイト』(=滑らかに流れる状態)にあればいいんだろうなと。いい日もあれば、悪い日もある。
ーライブ中は全てひとりで演奏を? それともエンジニアが音を止めたり、ある程度の操作はしている?
タッシュ:私が全てひとりでやっている。サウンド・ループを作って、それをトラックに入れていく。大抵は5つのトラックかな。まずはリズム・ギターのトラック。それから、たぶんベースのトラック、ドラムのトラック。そうやって作ったトラックを、いつでも止めたい時に、私が止められる。途中でエディットもできるし、ビートをいじったり、プログラミングしていくの。
ーどうしてこのようなスタイルに?
タッシュ:どうしてだろう。いろいろひとりでやってるうちにかな。でも、もうすぐバンドもやる予定なの。
ータッシュの音楽を聴いていると、歌詞のテーマやサウンドから、自然との調和や一体感を強く感じるのだけれど。
タッシュ:私は海の近くに住んでいるし、森にも近いところに住んでいる。その影響じゃないかと思うな。文明社会の近くにいるのは好きじゃない。できることなら火星に住んでたいくらい(笑)。でも時々街に出掛けたり、人と会ったり交流するのは嫌なわけじゃない。ただ住む場所は静かなところがいいの。その点、オーストラリアは自然が豊かだし、ひとつの大国ではなく、多くの小国で成り立っている。地域によって方言が異なっていたり、様々な文化があるの。


Photo by Yosuke Torii
<リリース情報>

タッシュ・サルタナ
『フロー・ステイト(ジャパン・エディション)』
発売日:2019年7月24日(水)
国内盤CD(SICP-6185)
¥2,200+税
歌詞対訳付、ボーナストラック3曲追加収録、オリジナル・ジャケット写真
試聴・購入リンク:
https://lnk.to/TS_FlowStateAW