1994年に突然この世を去って以来、カート・コバーンは、書籍からトリビュートアルバムにいたるまで、ありとあらゆる形で永遠の命を生きてきた。
コバーンのひとり娘、フランシス・ビーン・コバーンが自らキュレーションを手がけた『Kurt Was Here』コレクションの目玉はカート・コバーンのスケッチ、絵、手書きのメモをあしらったTシャツ、スウェット、パーカーなどのアイテムだ。本コレクションは、コバーンの遺産のビジネス部門であるThe End of Music, LLCと、アーティストグッズを手がけるLive Nation Merchandiseのコラボレーションによるもので、米現地時間9月9日より百貨店のバーニーズ、英百貨店のセルフリッジズ、さらにはオンラインストアKurtCobainShop.comから発売された。
本コレクションは、合計50以上のアイテムで構成されている。スタイルとサイズはユニセックスだ。Live Nation Merchandiseによると、デザインはコバーンの直筆アートワークをそのまま利用しており、最低限の統一感は保ちつつも、ウェアに合わせるため、いかなる編集やサイズ変更も行なっていない。
コバーンがもっとも注目されたのは音楽においてだが、コバーンは芸術家としても数多くの作品を生み、直筆の絵やスケッチなどはオークションで数千ドルで取引されてきた。コバーンが亡くなってからずっと、彼をモチーフにしたアパレル商品やニルヴァーナグッズは、大学生の寝室や地下室の必需品だった。だが、コバーンのパーソナルなアーカイブ作品がアパレルコレクションとしてフィーチャーされるのは今回が初めてだ。

Courtesy Barneys
コレクションのアイテムはすべて、父親のビジネスのマネージメントを手伝っているフランシス・ビーンの「クリエイティブ・ディレクションのもとデザインされている」。
時折あちらこちらで短いインタビューに応じる以外、フランシス・ビーンは父の死後、沈黙を守りつづけてきた。
コバーンをモチーフにしたアパレルコレクションを発売することのあざとさを疑問視する人がいるなか、企業がコバーンの不動の人気にあやかろうとしたのは今回が初めてではない。米カジュアルファッションブランドのアメリカン・イーグル・アウトフィッターズからFOREVER 21にいたるまで、あらゆるブランドがコバーンにインスパイアされたグッズを発売しつづけているし、フランスのストリートウェアブランドのヴェトモンにいたっては、コバーンがローリングストーン誌のかの有名な1992年4月号の表紙で着ていた「商業誌はマジで最悪だ!」を模したTシャツを550ドルで販売している。だが、Live Nation Merchandiseの代表者は、コバーンの遺産管理者が直接関わっているだけでなく、コバーンの独創性と正統性を称えるのにふさわしいタイミングだったこともあり、本コレクションは他のものとは一線を画す、と主張している。
「現代の社会的および政治的な風潮のなか、アートの重要性はますます高まっていると確信しています」と同社の代表はローリングストーン誌のインタビューにメールで応じた。「カートの作品による本コレクションを他のアーティスト、コレクター、ファンの皆さまと共有するのにふさわしい時が来たと思いました。そうすることで皆さまにカートのレガシーを新しい方法で体験してもらい、カートの不滅の影響力をともに称えられると思ったのです」。

Courtesy Barneys
『Kurt Was Here』コレクションは、コバーン没後25周年に続く形で発売された。1994年4月、米ワシントン州シアトルの自宅でコバーンは遺体となって発見されたのだ。