MAN WITH A MISSIONが、9月に約5年ぶりとなる単独北米ツアー「MAN WITH A MISSION presents Chasing the Horizon World Tour 2018/2019 -North American Tour-」を開催した。

アメリカ、カナダ、メキシコを巡り、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ダラス、メキシコシティ、ニューヨーク、シカゴ、トロント、バンクーバーの全8都市を訪れた今回のツアー。
約3カ月前からトロントで生活している筆者は、このうち、セミファイナルにあたる9月21日のトロント公演を目撃した。日本で10回以上見てきた彼らのライブパフォーマンスが、もっとも新鮮に、もっともシンプルに映った一夜の模様をレポートする。

トロント公演が行われたのは、街中心部にあるワンフロアのライブハウスAdelaide Hall。キャパシティと構造は東京で言えば渋谷CLUB QUATTROと似ている。この日は、動くスペースもなく熱気がムンムン立ちこめるほどの超満員。「人種のモザイク」と呼ばれる多民族都市トロントだけに、実にさまざまな国籍の人で埋まり、日本人も1~2割ほどいた。私の後ろにいたのは中国語を話す20代の男女4人組だった。

MAN WITH A MISSION、トロント公演独占レポート 現地で聞いた海外ファンの声

Photo by 酒井ダイスケ

午後8時、SEのバッド・レリジョン「Man With A Mission」が流れる中、大歓声と拍手に迎えられて5匹とサポートギタリストE.D.Vedderが登場。Jean-Ken Johnny(G, Vo, Raps)が「Lady and gentleman, boys and girls! We are MAN WITH A MISSION! Whats up Toronto!?」と雄叫びを上げたと同時に、「2045」からライブがスタートした。

ここからはホーム同然の盛り上がり! 疾走感あふれるアレンジと一緒に口ずさめるメロディを持った「Left Alive」「Dive」へ流れていく。ハンドクラップもシンガロングも完璧なオーディエンスに、Jean-Ken Johnnyも「You guys are beautiful Toronto!」とご満悦。4曲目「Hey Now」の、全員しゃがみこんで一斉に跳ぶ参加型演出もバッチリ決まり、一体感はどんどん増していく。
片言の日本語で「さいこうです!」とステージに叫ぶ白人男性の姿もあった。

今回のツアーは直近のアルバム「Chasing the Horizon」を中心とした構成で、近年のMAN WITH A MISSIONの姿勢を前面に表したものだ。新しい楽曲を送ることで、前回同都市に来た時より確実にアップデートされた姿を見せつける彼ら。ほとんどの観客にとっては初めて生で聴く楽曲、どころかMAN WITH A MISSION自体を初見という人が多かった。Jean-Ken Johnnyが5年前のライブを見た人はいるかと質問したが、ほとんど手が挙がらない。その状況で毎曲フロアが大きなジャンプでうねるというのは、”海外だから反応が良い”だけではない、観客がこのバンドの曲に普段から触れている証左ではないかと思った。

様々な曲に反応する現地のオーディエンス

反応が良かったのは威勢のいいロックチューンだけではない。「Winding Road」や「Emotions」のような泥臭く前向きなメッセージソングもMWAMの魅力だ。Tokyo Tanaka(Vo)の伸びやかなボーカルや日本語詞のメッセージが、場内を共感の渦に巻き込んでいたのが印象的だった。その後の中盤は、DJ Santa Monica(DJ)とSpear Rib(Dr)によるビートセッションや、Jean-Ken Johnnyがアコースティックギターで弾き語る「Chasing the Horizon」も。

MAN WITH A MISSION、トロント公演独占レポート 現地で聞いた海外ファンの声

Photo by 酒井ダイスケ

ライブ後半になり、再びメンバーがそろってから最初にドロップした「My Hero」と、次の「Take Me Under」はイントロからひときわ大きな歓声。私の後ろの中国系4人組もオオオオーと沸き上がる。
「いぬやしき」ってそんなに海外で人気なんだなあ。「スゴククレイジーナ盛リ上ガリデス!」とJean-Ken Johnny。パトリック・スタンプとの共作の新曲「86 Missed Calls」を挟み、この勢いに任せて、Nirvana「Smells Like Teen Spirit」のカバー、さらに「FLY AGAIN 2019」といった屈指のライブアンセムを投下する。観客たちのボルテージは最高潮に達し、ステージ横のスピーカーが揺れるほどの狂喜ぶり。このような中でもプレイは乱れず、アドリブの効いたアジテートも忘れない。さすが国内外で豊富な経験を蓄えるライブ百戦錬磨のオオカミたちだ。

そして「マタスグニココヘ来タイデス。今日ハ来テクレテ本当ニアリガトウゴザイマシタ」と締めの挨拶を送って、「Seven Deadly Sins」へ。この日一番の大合唱がこだまする。楽曲の持つ壮大なホープネスが伝染したように、演者も観客も皆、汗だくの笑顔でライブを楽しんでいた。

鳴り止まない「One more song」に応えてアンコールが実現。Jean-Ken Johnnyは「Toronto is a huge city. But, there another big city in the far east.」と前置きした上で、「Dead End in Tokyo」を振る。
Fall Out Boyのパトリック・スタンプがプロデュースしたこの曲は、「Tokyo」「Shinjuku」「Karaoke」といった、日本の個性と世界標準の共通イメージを表したような言葉が散りばめられている。まさに海外ライブで披露するのがふさわしい1曲だろう。

MAN WITH A MISSION、トロント公演独占レポート 現地で聞いた海外ファンの声

Photo by 酒井ダイスケ

熱狂の一夜を締めくくったのは、代表曲のひとつ「Raise your flag」。日本語の大合唱がこだまする中、Jean-Ken Johnny、Tokyo Tanaka、Kamikaze Boy(B)のフロント3人はモニターの上に乗り、3列目の客まで上半身が覆いかぶさるほどの近さで熱量をぶつける。MWAMが彼ら特有の勇ましいエネルギーを与え続け、オーディエンスがそれに呼応して、さらに大きなエネルギーを生んで共有していた。これがこの夜のハイライトだ。よくこういうライブレポートの締めに「大成功を収めた」と言うが、今日のライブをそう言わずして何を、と思えた。

現地ファンの声「アニメ作品でMWAMを知った」

終演後、ライブに参加した人々に少し話を聞いた。黒のロックファッションに身を包んだアフリカ出身の21歳の女性は「That was amazing! Oh my goodness!」と大興奮。この女性も、某アニメキャラのTシャツを着ていた23歳のカナディアン男性も、「七つの大罪」「機動戦士ガンダム」「ゴールデンカムイ」といったアニメ作品でMWAMを知り好きになったという。その横で「声がつぶれるほど歌った! 叫んだよ!」と話す24歳の地元トロントニアンの男性は、2年前にYouTubeで曲を聴いてファンになり、今日初めてバンドを見た。皆一様に「アニメの影響が大きいよ」と語りながら、ロックリスナーでもあるのでNirvanaカバーには「最高だった!!  ブチ上がった!」と。


このように、バンド自体のみならず、アニメをはじめとするジャパニーズカルチャーを好きな人が多くを占めていたようだ。会場の外で帰らずにたむろしていたカナディアン6人も、「10月に日本行くの!」「マジでー!?」みたいな会話をしていた。このうち2人は、ライブのために別の都市からトロントに来ていたカップルだ。

一方、トロントは留学やワーキングホリデーで、MWAMの国内ファン層にあたる20代の日本人も多い。MWAMの過去のタオルを掲げるファンも10人以上いた。4月にワーホリでカナダに来た日本人の女性は、「フェスでしか見たことがなかったけど、この機会にワンマンに行ってみようと思ってスクールメイトの日本人の友達を誘って来ました。日本ではこんなに近い所で見られないから楽しかった」と笑顔を覗かせていた。
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