三代目 J SOUL BROTHERSのELLYによるソロプロジェクト、CrazyBoyが1st CDシングル「DONNA???」をリリースした。

三代目ではパフォーマーとして活躍するELLYだが、2017年から続けているソロ活動ではラップをし、シンガーとして歌う。
2019年、LDH MUSICにレーベル移籍をし、「PINK DIAMOND」「PINK DIAMOND Part2」と2曲を配信リリース(今回のCDにはこれらの曲の他、ジェシカがCrazyBoyを客演に迎えた「Call Me Before You Sleep」も収録されている)。「DONNA???」でもミニマムなループに(トラックはNAKKIDの手によるもの)現行のUSヒップホップの空気感を内包したラップを披露。彼のセンスや才能は誰もが認めるところだが、今回のインタビューを読めばCrazyBoyことELLY自身が、いかに戦略的にこれまでのキャリアを描いてきたのかが分かるだろう。

―9月の三代目 J SOUL BROTHERSの東京ドーム公演を観て、ELLYさんの虜になってしまいました。

いや~うれしいです!

―三代目のELLYはアイドル力がハンパないと思って。表情や仕草も含めて完全にプロだなと。
三代目にしかできないエンターテインメント空間があって、その中でELLYさんも自分の役割をちゃんと自覚されてるというか。その一方で、CrazyBoyではトレンドをキャッチアップしながら「攻め」の姿勢で活動している。そのギャップがすごくいいと思いました。

本当にうれしい言葉です。ありがとうございます!

―CrazyBoyが生まれた背景には三代目がいるわけですが、ELLYさんは三代目の中で自分のことをどういうポジションで見てるんですか?

三代目では振り付けをつける立場でもあるので、グループのことは常に客観的に見てるんです。だから僕がどういう存在でここにいるのかっていうのが自分でもある程度わかっていて。
ハーフで強い見た目があるし、カッコいいイメージを作りやすい。三代目もドームクラスでライブがやれるようになってきて、カッコよさっていう点でだんだん構えるようになってくるんです。でも自分が大切にしていたいのは、いつもファンとは近くの距離でいたいってことで。だからパフォーマンスの時は自分のアーティスト像をガッツリ落とし込みつつ、笑顔もいっぱい出すしサービスできる部分は全力でやる。そのギャップを自分でも楽しんでますね。ファンとはなるべく近い距離のキャラクターだけど、でもゴリッとしたこともやる立ち位置でいようとは思ってます。


―そのゴリッとしたことを突き詰めたのが、CrazyBoyですよね。

三代目はすごくいい意味でアーティストとアイドルの中間みたいなグループなんです。僕のルーツにはストリートのカルチャーがあるので、それは残したいと前から考えていて。ストリートのエッセンスがどこかにあるだけで見え方もただのアイドルじゃなくなるだろうっていうのもわかっていましたし、そういう意味で僕はこのグループに選ばれたと思っているので、ゴリッとした役を自分が担うのは必然というか。海外の人が三代目を見た時に「あいつは何だ?」って思ってもらえる要素であり続けたいんです。

個人の成長っていう部分だと、スタジオにこもって作曲活動を繰り返す中でスキルも自然に上がっていきましたし、その結果海外からのオファーも来るようになった。
ジェシカと一緒にやることになったのもそう。まだ言えないけど、他のアーティストからもオファーをもらって一緒にやる予定があったり、自分が成長することでそういうことがどんどんできるようになってきた。自分のソロがワールドワイドに広がっていけば、三代目もそういう風に見られていくだろうし。

―元少女時代のジェシカさんの曲に客演で参加した「Call Me Before You Sleep / Jessica feat. CrazyBoy」は、当人同士がInstagramのDMでやり取りして決まったそうですが、誰かにお膳立てしてもらったものに乗っかるのではなく、自分で直接やる。その主体性とスピード感がCrazyBoyの面白さかなと。

そうですね。
僕は下手なりに自分のやりたい音楽を作り続けてきたんですけど、最初に作った曲と今の曲とを比べて成長できている自覚もあるし、まだまだ行けるなと。逆に自分の限界を早く知りたいくらい。今回の「DONNA???」も日本語で遊びながら英語も多いリリックで、ラッパーのフューチャーに聴かせたら「こんなのアリ?」って驚いてて、その出来事自体がそもそもありえないことじゃないですか(笑)。

自分の中でトラップはもう少ししたら出そうと思ってるんです。自分のスキルがしっかりしたものになってから、一気にUSのトレンド寄りの曲をやろうと考えていたので、あともうちょっとですね。サウンド面でも曲を出すごとに音数が少なくなってきていて、「DONNA???」も3~4つしか使ってないんですよ。
その中で自分を表現できるようになってきたし、いろんな成長を感じられるようになってきた。三代目の自分、ソロの自分。そのギャップが自分の良さだなって最近すごく思います。

「会社」が認めたELLYの情熱

―ソロ活動をスタートさせた時はCRAZYBOY名義で「NEOTOKYO」っていうコンセプチュアルなテーマがあって、今年8月からCrazyBoyに表記が変わり、それに合わせて曲の世界観もパーソナルなものになってきてますよね。ただ、これまで以上にグローバルな広がりを見せている。

LAに行って現地の人たちに「DONNA???」を聴かせた時も、「ワールドミュージックじゃん!」「日本語のところは何言ってるかわからないけどノレる!」って言ってくれて。LAでライブをしたんですけど、一緒に行った臣(登坂広臣)がビックリしてました。みんなジャンプして「CrazyBoy、ヤバい!」って熱狂ぶりで。LDHの上層部の人たちもその場にいましたけど、どういうことなの?って。会社にもCrazyBoyのことをあらためて気づかせることができた。それも大きかったです。でもソロでのこれまでの一連の活動は、僕にとって下積みでもあるんです。その状態でこれだけの反応があるってことは、2020年のオリンピックイヤーに合わせて自分のソロを世界に向けて広げていく作業は絶対にやりたい。

―以前、RSJでインタビューしたリッチ・ブライアンの話が印象的で。自分はヒップホップのコミュニティに属してたわけじゃないけど、ヒップホップが大好きで自作のラップしてる映像を日々YouTubeに投稿してたら、それを見たアメリカのラッパーが連絡してきて、そこからネットワークが広がっていったと。そういうのもヒップホップ・カルチャーの素敵なところですよね。

間違いないですね。

―CrazyBoyの音楽もそういう広がり方してるわけじゃないですか。会社に頼るわけではなく。

ギャップが凄いですよね! 大きな事務所にいるのに、ストリート的な感覚でいろいろやっちゃうというか。俺たちで直接やろうぜ!って始めて、あとで会社の人に説明すればいいやって。持ってきてもらうんじゃなくて、こっちで先にやってしまう。

―「俺はこれがやりたいんです!」っていう気持ちも大事だけど、自分が所属する組織のボスや上の人たちに可愛がられるのも大切ですよね。人間力というか。

めちゃくちゃ大事だと思います。

―ELLYさんの一連のソロ活動を見てると、そういう部分もちゃんと考えてやってきてるんじゃないかなと思ったんですが、どうですか?

それは鋭いですよ! その質問をされるのは初めてなんですけど、今では普通とはいえ一番大変な作業でした。音楽作るより大変と言ってもいいかもしれない。パフォーマーがマイクを持つことが、そもそもありえない世界なわけです。そこを突破するにはバカなフリをするしかない。で、三代目のライブ中にPA卓にいきなり行ってマイクを取ってラップしたんです。ありえないでしょ。「何してんだ、あいつ!」ってなりますよね。でも僕はバカなフリをして「どうでした?」って。その結果怒られたんですけど、「あいつはマイクを持ちたいんだな」っていう認知はしてもらえた。認知してもらったら、その後は自分の情熱だけです。同じことをまたやる。怒られる。やめろって言われる。でも続ける。その繰り返し。あとCDを作ったんですよ。自分で焼いて15枚くらい会社で配って。「CDできたので聴いてください!」って。それを2~3年続けて「また作りました。聴いてください!」「俺、CD出したいんです!」って。でもダメだった。

そこでまた考えたんです。どうしたら会社の人たちが納得してくれるだろうって。CDを出すには予算がそれなりにかかるから、会社のお金を使ったプロジェクトになってしまう。で、それまでEXILE一族の中で誰も配信リリースしたことがなかったから、デジタルだったらお金かからないんじゃないですかって言ったら、それならやってみるかって話になって。好きだという情熱を、バカなりに考えて、バカなフリをして伝えていく。しんどくはなかったですけど、戦うのは大変でしたね。

EXILE ATSUSHIとの対話

―その結果、LAでライブをやったらめちゃくちゃ盛り上がったとか、ほんといい話ですよね。

LAで現地のプロデューサーが「あいつはアメリカでやった方がいい」って言ってくれて、自分がやってきたことは間違ってなかったと思いました。自分がやりたい曲を作って歌う……っていうことに挑戦して試行錯誤しながら、今回ちゃんと会社に認めてもらったわけですけど、こうやってCD出すまでに5年かかってるんですよね。

ソロで曲を作り始める前、EXILE ATSUSHIさんに話に行ったんです。「僕、曲を作ろうと思ってるんですけど、作ってみてもいいですか。ATSUSHIさんがEXILE一族の中でマイクを持ってる先駆者なので、まずはATSUSHIさんに相談しようと思って」って。そしたら「いいよ、やってみろよ」って言ってくださって。そういうことも引っくるめて、自分はこれが好きだっていう情熱が今もあるし、作り始めた当時から何も変わってないんです。やめられない。やめられないというか、やめる気もないし、本当にエンターテインメントを作るのが好きなんだなっていうのは自分でも思います。

―前にTEAM GENESIS(EXILE TRIBEをはじめとした、LDHアーティストのライブ全体を総括するライブ・クリエイティブ・チーム)のSEVAさんに話を聞いた時、「来場された皆さんの想像を超えるライブを生み出すには、真面目に考えているだけではダメで、遊び心を持つのが大切。そういう遊び心は、我々が大好きなヒップホップの感覚とも結びついているかもしれません」と語っていて、そういう点で言うとELLYさんがLDHの中で今もっとも「遊び心」を体現してる一人なんじゃないかなと思って。

本当に……そうなんですよ。結果的にそうなってしまったというか。PATOさんも「三代目のライブの中でお前の”PINK DIAMOND”のパフォーマンスが一番好きだ」って声をかけてくださって。そういう風に言われると自信にもなりますし、自分が好きなことを表現してそれを評価してもらえるのは、すごくやりがいがあるし、やっぱり楽しいなと思います。

エンターテインメントは無限ですからね。百人中一人が楽しいって言えば、それもエンターテインメントになる。正解がないからこそ自由にできるんです。HIROさんもPATOさんもストリート上がりの人たちですし、2人のルーツから続く道を僕は辿ってきたわけで。それが少しずつ会社の中でも伝わってうれしい。だってパフォーマーが単独でシングルCDを出す……って、それ自体がエンターテインメントですよ。

―「PINK DIAMOND」のミュージック・ビデオもめちゃくちゃお金かかってそうですよね。

あれは二作分の予算をまとめて出してもらったんです。すごく考えたんですよ。どうしたら一作にどれだけたくさんお金をかけられるかって。で、「PINK DIAMOND」「PINK DIAMOND Part2」で二作連続でミュージック・ビデオを撮りたいと。同じ監督で一作ずつ同じ予算でって話を会社にして。同時に撮りたいから二作分の予算をくださいってお願いして、全体の予算の90%を片方に使ったんです(笑)。

―予算の交渉やマーケティングの話をすることと、アーティスト=CrazyBoyが何を表現したいかってことは全然違う話だと思うんですけど、そのバランス感も凄いですね。

ステージに上がるまではずっと客観視ですよ。ステージに立った時だけ、ドカン!と自分が出る感じがしてますね。

仲間のために自分が起爆剤になりたい

ー今回のシングル「DONNA???」でチャレンジングだったことは何ですか?

「DONNA???」っていうワードです。仲良い友達に「今日の予定、どんな感じ?」って聞く時に「今日どんな?」って俺はよく言ってるんですよね。「どんな?」ってみんな使うわけじゃないけど、このワードは使えるなと。自分の周りだけに通じる言葉じゃなくて、ある種スラングっぽいというか。「Hey,baby. 夜どんな?/着てる服はどんな?/明日の予定はどんな?」って、「どんな?」を並べて女の子を誘う。これ、実際に通じるかなと思って、女の子に電話した時にリアルに使ったんですよ。そしたら通じたんです(笑)。だから絶対に歌詞で使おうと思って。

例えばデートに誘う時、「今度よかったら食事に行きませんか?」って誘い方だと、ハッキリ答えにくいじゃないですか。女の子的にはごめんなさいも気まずいし、行けたら行きますっていう感じで返答しておきたい時もある。そう考えると「どんな?」は女の子に気を使わせなくていいんです。フランクに「今日の夜、どんな?」って聞いたら「今日の予定はこんな感じだよ」って返答しやすいし、そこから「じゃあ一緒にゴハンでもどう?」って流れに繋げやすい。会話が続く言葉だなと思って、それを軸にバースとフックを作っていった感じです。

―こういう歌詞をヒップホップ/R&Bテイストの曲で自然に聴かせられるのは、ELLYさんならではですね。

そうですね。俺じゃないとフィットしないフレーズでもあるんですよ。「Hey,baby. 夜どんな?」って歌詞は俺しか無理だと思います。LDHの他のアーティストには歌えないと思う(笑)。自分らしさを曲の中で成立させられる。CrazyBoyが自分の音楽になってきてるなってすごく感じますね。

―作品を作り続けてきたからこそ、そういう実感をより感じられるんでしょうね。

めちゃくちゃ感じてます。やれることがどんどん多くなってる。最初はラップが主体だったんですけど、俺はメロディも好きだからメロディが歌いたいと思って練習していて。自分なりのさじ加減を探しながらここまで来たわけです。「PINK DIAMOND」のレコーディングの時、高音で歌うパートがあったんですけど、最初はできるとは思ってなかったんですよ。でも日々成長して変化しているから、いつの間にかできるようになった。そしたら一緒に作曲したJAYEDさんに「ヤバいよ。俺、ELLYがこんなにできるって思わなかったんだよね」って言われて。うれしかったですね。

―ANARCYさんとかラッパー仲間からの反響はどうですか?

「ヤバいね!」って言ってくれますね。「ELLY、なんで一気にそんなに変われるの?」みたいな。ずっと俺のことを見てる人は別ですけど、久々に見る人は「あれ? スキルがめちゃくちゃ上がってない?」って思うみたいで。ANARCHYさんからは昨日ちょうど連絡がありました。何か一緒にやろうって。あとは同じLDH所属になったSALU君。札幌のライブで会った時に「いつも音源聴いてるんで、早く一緒にやりましょう。トラックも作るんで送らせてください」って言われて。SALU君とは同い年なんですよ。でも自分よりずっと長くラップをやってる人なわけで、そんな人からそういうことを言われるなんて、本当にありがたいことです。自分が他のアーティストにちょっとでも刺激を与えられる存在なれてきてるのが、うれしいです。

―CrazyBoyがリアルなアーティストだと認めてもらえてる。

少なくともアイドルとしては見られてないですね。もしCrazyBoyがMステに出た時、また何かが変わると確信してます。俺はこれからも自分が信じている音楽しかやらないし、その音楽が日本でも盛り上がるように、自分が起爆剤になれるように影響力をどんどん強めていきたいです。

―楽しみです!

今日はまさかこういうことを聞かれるとは思ってなかったので、いろいろ話してみてあらためて自分のやるべきことってハッキリしてるんだなと気づきました。

<INFORMATION>

三代目JSB・ELLYがソロ初CDを出せた理由「好きだという情熱を会社にどう伝えるか?」

「DONNA???」
CrazyBoy
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発売中