中川翔子が、12月4日(水)に約5年ぶりの新アルバム『RGB ~True Color~』を発売する。この5年間で携わってきた多数のタイアップ曲に加え、YouTuberスカイピースとのコラボ曲や、中川の父が残した歌詞を用いて作詞した楽曲も収録される。
アルバムについて、そして彼女のこれからについて話を聞いた。

─『RGB ~True Color~』は5年ぶりのアルバムとなりますが、中川さんにとってこの5年間はどんな期間になりましたか?

中川:5年間というと、日々の感覚も変わる長い時間ですよね。シングル『blue moon』を3年半ぶりにリリースした時も、すごい怖かったんです。ずっと歌を大事にしたいと思いつつ、続けて出すことが難しくて一度止まっちゃったのが悔しかった。でも、ずっと諦めたくはないなと思っていました。30代からは舞台に挑戦したり、NHKの令和特番に出たり、お仕事の幅が広がって。
その分、歌から遠ざかってしまっているんじゃないかと悩みました。でも、久しぶりのシングルリリースの時に、久しぶりの方、初めましての方、沢山の子どもたちと親子連れの方が来てくれて。「しょこたんのコンサートで出会って子どもが産まれてこんなに大きくなったよ」って連れてきてくれた方もいたし、子どもたちがラプンツェル好きとか、ポケんち(中川が出演するテレビ番組『ポケモンの家あつまる?』)好き! とか言ってくれて。むしろ新しい世界に繋がっていたんだと思うと、音楽活動をしたいと言う気持ちから遠回りはしたのかもしれないんですけど、今までやってきた事全てに意味があったと思えて、すごく感慨深かったんです。

―そこから今回のアルバム発売に至った経緯を教えていただいてもよろしいでしょうか?

中川:待っていてくれた方と新しく出会ってくれた方たちの想いが未来を動かしてくれたんだと思います。今年はポケモンの映画の主題歌「風といっしょに」とアニメのエンディング「タイプ:ワイルド」を歌えて、日本全国色々なところにリリースイベントで行かせていただいたんですね。
今まで行ったことがないようなところでもたくさんの方が待っていてくれて。今年が一番、「生きていてよかった」と思えた年だった。年内にアルバムも出せることがこの夏に決まって。だから本当に集大成感のある今年、5年間の汗と涙と出会いと別れの全てを詰め込もうと思ってできたアルバムですね。

―そんな様々な活動をされてきた中川さんの5年間が詰まっている本作ですが、それぞれ色の異なる3形態でアルバムが発売されますね。

中川:歌っている時も、ラジオの時も、声優の時も、全部無理しない素の自分の延長なんです。
自分にもいろんな色があるけれど、振り返った時に全部意味があったんだなと。それで今回は、光の三原色で好きな色が作れるというテーマにしました。ポケモン感もありますよね(笑)。始めてジャケットを自分で描いたんです。過去にも向き合って、今まで黒歴史だと思い込んでいた時間すらも、意味を持って未来を助けてくれてると感じました。もしかしたら、この5年どころか人生丸ごと詰まっているかもしれないですね。


中川翔子インタビュー「もしかしたら5年どころか人生丸ごと詰まっているかもしれない」


―ジャケットにも様々なモチーフが用いられています。

中川:先日まで流れていたポケモンの「タイプ:ワイルド」って言う曲は、21年前の楽曲をヒャダインさんがアレンジしてくれた曲で。TVアニメで放送されてすぐに子どもたちが歌えるようになっているんですけど、子どもって本当にすごいですよね。大人とは時間軸も吸収力も違う。先日もイベントで大阪のある街に初めて行ったんですけど、イベントが始まる前から、子どもたちが早口で難しい「タイプ:ワイルド」を完璧に覚えて合唱していて。本当に幸せだなって感じました。
未来の地球を回す今の子どもたちを笑顔にしたい。それが大人になってからの一番の夢なので。ジャケットの絵も最初はただの草原だったんですけど、昔を思い返すと自分にとって宝石だと思えるものが一杯あって。そんな思い出こそ、いつか輝く宝石になると思うと、イベントで出会った子どもたちの思い出になってくれたらいいなと言う思いを込めて、こういう絵になりました。

―赤盤(完全生産限定盤)には、中川さん作・画の絵本『ちび太の聖火ランナー ~2020 ver.~』が付属されていて驚きました。

中川:家で今10匹の猫を飼っているんですけど、その中に18歳のちび太っていう猫がいて。
猫の18歳って人間でいう90歳とか100歳なんです。何度体調が悪くなっても、自力でご飯を食べて水飲んでシャキッと走り回るまで復活をして。そんなちび太を見てかっこいいなと思い、描こうと決めました。きっかけとしては、今年の夏に子どもたちが笑顔になってくれるような思い出を作りたいというチャレンジの一環として「ファミリーコンサート~絵本とうたの世界~」という、親子向けのイベントを開催したんです。その中で絵本の読み聞かせをしようと思った時に、オリジナルのものを作りたいと思って。絵本ってだいたい10枚から20枚なんですけど、ちび太の姿を見てたら手が止まらなくて80枚も描いてしまった。もうパラパラ漫画になってしまうからやめてくださいって言われたくらい(笑)。それくらい熱が乗っかっていたので、目を血走らせながらずっと描いていました。

―この絵本には、どのようなメッセージが込められているのでしょうか?

中川:チビ太が転んでしまって立ち上がれないシーンがあるんですけど、読み聞かせの時に、小さいちびっ子たちもみんなが「頑張れ!」って全力で叫んでくれて、すごく感動したんですよね。頑張っている姿が伝わってるんだって。子どもたちの応援って本当に良い力で前進させてくれると思うし、2020年のオリンピックに向かってもみんながネットの中以外でも繋がってきているのを感じながら、楽しんで描きました。この夏『風といっしょに』のリリースイベントの時に、この絵本を描きながら『「死ぬんじゃねーぞ!!」いじめられている君はゼッタイ悪くない』という本も執筆していて、色々重なって体調を崩しちゃった日があって。その日かなりの数のお客さんが来てくれていて、どうしようと思っていた時に、子どもたちが「しょこたーん!」って叫んでくれて。その声を聞いただけで、それまで薬も効かなかったのに、3時間半のイベントを乗り越える事ができて。このパワー・嬉しさって物理的な何かを超えているなと思ったんです。ヒーローショーで倒れているヒーローが、「がんばれー!」って言われて立ち上がるのってリアルなんだなと体感したんです。子どもたちに助けてもらってばかりなんですけど、この本ではそんな想いを届けられたら良いなと思います。

中川翔子インタビュー「もしかしたら5年どころか人生丸ごと詰まっているかもしれない」


―絵のお仕事の関連だと、先日放送されたアニメ『ポケットモンスター サン&ムーン』で、中川さんが作画の一部を担当されたことが話題になりました。

中川:アニメーターのところに「中川翔子」の名前が入るなんて思いもよらなかったので、夢というよりもそれを飛び越えたような出来事でした。リーリエ(アニメのメインヒロイン)の一場面を書かせていただいたんですけど、紙と鉛筆で何百枚も描いては一枚ずつめくって確認して。何人もの方が何回も何回も作り直して、そこに声と音が入って、やっと子どもたちに届くんです。その一瞬のためにたくさんの方の数カ月がかかっている。でも、大変なだけじゃなくて、やっぱりそれを凌駕するような好きが乗っかってるんですよ。皆さんめちゃくちゃ忙しいんですけど、ポケモンが好きすぎて、確認のために渡し合う紙にすごいクオリティーのポケモンの絵とかを添えて渡したりしているんですよ。チームワークに思いやりが乗っかっているのを感じました。本当に熱と魂を乗せているからこそ、子どもたちがこんなにも熱狂しているんだなと間近で見る事ができて感動しました。何をするにもその熱を見つけられたら素敵だと思いますし、この体験も語り継げたら良いなと思っています。

―中川さんが夢を叶えていくため大切にしていることは何かありますか?

中川:4年前リリースした「ドリドリ」という曲の歌詞にも書いたんですけれど、夢って見つけた瞬間から未来を輝かせるような力を持つと思うんです。今ってみんなSNSのアカウントがあって、夢の言霊を世界に発する事ができるので、宇宙の歴史を見ても夢が叶いやすいフィーバータイムだと思うんですよ。自分が楽しいことも好きなものも見つけやすいし、それを言ったり書いたり伝えたり、それを誰かが聞いて繋がって。夢って星座みたいに繋がって広がっていくのかなと思うんですよ。ブログに深海が好きって書いたら、2年後に本当に行けることになったり、本当にびっくりしたんですけど(笑)。全部がそうではないけれど、忘れた頃に背中をトントンってやってくれることもあるので、やっぱり死なないで生き延びていてよかったのかもと後から気がつかされました。中学の頃しんどくて悩んで、その穴を埋めるために好きなことで心と耳を塞いでいたんです。でも、それが今ようやく活きてきているので、あの頃の自分には「死ぬんじゃねーぞ!!」って言ってやりたいですね。

―SNSの話も出ましたが、新曲「六畳間から、世界へ」はYouTuberのスカイピースさんとのフィーチャリング楽曲になっています。このコラボはどのような流れで実現したのでしょうか?

中川:子ども達がYouTuberになりたいって言っているのを間近で見ていたのもあって。スカイピースさんって本当に陽キャの2人なんですよ。ネットって昔は隠のイメージがあったと思うんですけど、今は陽キャの人が発信するエネルギーに元気をもらえる場所にもなりましたよね。2人とは年齢がひとまわり違うんですけど、同じようにネットから生きる力を見いだした共通項があったので、今回のコラボが実現して、レコーディングもすんなりと行きました。☆イ二☆君が元々「しょこたんさんと一緒にお仕事したいです!」ってDMで何度も送ってくれていたというのもあって。すごい良い子なんですよ! 焼肉とか食べさせてあげたいくらい(笑)。

―エンタメの形も変わっていく中で、中川さんはYouTuberについてどんなことを考えていますか?

中川:毎日の疲れたなとか、しんどいなっていう気持ちをYouTuberさんが癒してくれていて。私にとっては心のマッサージみたいになっていますね。個人的には、ゾゾゾさんっていう心霊系のチャンネルが好きで、繰り返し何回も見ちゃいました。シーズン2が発表された時も、嬉しくてめちゃくちゃ声出ちゃったくらいで。YouTuberさんの動画見ながら食べるご飯って1人でも美味しく感じるんですよね。そうやって彼らって色んな人を助けてると思うんですよ。だから子どもが目指すのもわかるし、人を元気にするっていうのはエンタメの根源なので今まさに必要な存在ですよね。

―プラスのエネルギーを発信するという点では、中川さんの活動と共通している部分が大きいのではないでしょうか?

中川:私のブログも、そもそもは呪いの言葉を書こうと遺書のつもりで始めたんです。だけど、何とか踏みとどまって。だったら明るい遺書として、何かを褒めたり自分が好きなことを書き残そうって何となくマイルールを作って始めたんですけど、それで本当に正解でした。これからも、自分の生きた証を残すことは続けていきたいなと思っています。

―新曲「ある日どこかで」では、中川さんの父・中川勝彦さんが残していた歌詞を繋いで作詞をしたと伺いました。

中川:この曲に出会えて本当に良かったと思えるくらい心震える素晴らしい曲に出会えました。アルバムの中でも1番聞いて欲しい曲です。先日、たまたま父の荷物を整理していたら、スケッチブックに書き残していた歌詞だったり、直筆の絵がたくさん出てきて。父は私が9歳の時に亡くなったので、いなくなってからの方が長く経つのに、ずっとそばにいてくれるような感覚があるんです。思春期で反抗期の時は、いない父のせいにしたりして、ずっといないことを考えるのが怖いと思っていたんですけど。仕事を始めてから、ライヴハウスが父の回っていた場所ばかりだったり、どの都道府県にいっても一緒に仕事をしていたという人が声をかけてくださったり、父の足跡が本当に続いていて。好きなものも似ているし、私が化石を集め始めたら、父の集めていた化石がたくさん出てきたり。先に全部やられてるんですよ。だから父が好きなものも不思議と分かるんです。

―足跡を辿っているような感覚があるからこそ、その先も想像する事ができると。

中川:今はYouTubeやニコニコ動画で好きなことを発信する事ができますよね。そういうことをしたかった人だったんじゃないかなと思うんですよ。今の時代の方があってたんじゃないかなと思いつつ、そうじゃなかったからこそ、こうして紙で残ってるんだと思うと、やっぱり残してくれたことに意味があるような気がして。今回アルバムでバラバラだった歌詞を繋いで1曲にしたら、会えなくなった人からの次の世代への愛のメッセージを歌う曲になりました。父は愛について色んな言い回しをしていたので、父らしい歌詞にまとまったかなと思います。曲はウォルピスカーターさんに作ってもらいました。若手のクリエーターさんなんですけど、気持ち良く歌えるメロディーで、聞いた瞬間からすごくしっくりきましたね。

中川翔子インタビュー「もしかしたら5年どころか人生丸ごと詰まっているかもしれない」


―どうして「ある日どこかで」という曲名にされたのでしょうか?

中川:家にずっと懐中時計があるんです。「これ何?」って母に訊いたら、「父さんと別れそうになった時、一緒に映画『ある日どこかで』を見たら仲直りした」そうで。そして、その後私が産まれたみたいなんです。その映画は、懐中時計をきっかけに過去に戻る恋愛のお話なんですけど、父が亡くなる直前の病室に止まったままの懐中時計が置いてあったらしく、鳥肌が立ちました。それに父も「SOMEWHERE IN TIME」という『ある日どこかで』という映画をモチーフにした曲を書いていたんです。親から子へ受け継ぐ血の中にも記憶や想いって残るんだなと思ったし、会えなくてもその存在って心の中にずっと残るので、大切に歌い重ねていきたい曲になりました。今回のアルバムは是非お父さんお母さんも色々な想いで聞いて欲しいと思います。

―本作には、本当に中川さんの様々な想いが込められていますね。

中川:子どもの頃は純粋に憧れの数だけワクワクしていて。思春期になってジャケットのおどろおどろしい空の色のようにモヤモヤして悩んで、そんなガラスのハートだからこそ入ってくる光も強くて、今はそんなことも絵を描けるくらい全部抱きしめている。今まで「死ぬんじゃねーぞ!!」って言ってきたんですけど、2019年を駆け抜けて今は「生きてきて良かった!!」に変わってきたというか。私自身、これからも自分の色を見つけてこのまま進んでいくんだと思います。

<アルバム情報>

中川翔子インタビュー「もしかしたら5年どころか人生丸ごと詰まっているかもしれない」


中川翔子
『RGB ~True Color~』

発売日:2019年12月4日(水)
形態:アルバム(全3形態)
・完全生産限定盤(CD+DVD+付属品予定)6800円+tax
・初回生産限定盤(CD+DVD)3618円+tax
・通常盤(CD)1800円+tax