メイド服を纏いハードなロック・サウンドを奏でる5人組バンドBAND-MAIDが、メジャー3rdアルバム『CONQUEROR』をリリースした。メンバー自身が作詞作曲をした楽曲に加え、デヴィッド・ボウイやT. Rexらを手がけたイギリスのプロデューサー、トニー・ヴィスコンティがプロデュースを手掛けた楽曲「The Dragon Cries」を含む全15曲。
リリース直後、全米ビルボードチャート3部門にチャートインし、世界各国のiTunesチャートでも上位にランクインを果たしている本作について、Rolling Stone Japanでは初となるインタビューを行った。

─お1人ずつお名前と、音楽のルーツになったアーティストを教えてください。

MISA:ベースのMISAです。好きなベーシストは今ピクシーズでベースを弾いているパズ・レンチャンティンさんです。

AKANE:ドラムのAKANEです。マキシマム・ザ・ホルモンのドラムのナヲさんに影響を受けて、私もドラムを始めました。


小鳩ミク(以下、小鳩):ギター・ボーカルの小鳩ミクですっぽ。天童よしみさんがきっかけで歌の楽しさを知って、東京事変さんがきっかけでバンドの格好いい音楽を好きになりましたっぽ。

SAIKI:ボーカルのSAIKIです。安室奈美恵さんが好きで、歌を志しました。

KANAMI:ギターのKANAMIです。サンタナが好きです。


─全員好きな音楽がバラバラですが、5人で音楽の話をすることはあるんですか?

KANAMI:私のコアな趣味に付き合ってくれるのは、ドラムのAKANEですね。ライブを観に行きたいって言ったら、付き合ってくれます。

小鳩:お勉強もかねて、みんなで一緒にライブを観に行ったりもしますっぽ。刺激を受けて、こういうのをやりたいとか、次ああいう演出やりたいとどんどん吸収して、すぐお給仕(BAND-MAIDのライブ)に反映していますっぽ。

KANAMI:ZOZOマリンスタジアムに、あるアーティストさんのライブ観に行った帰り道、私たちがここに立つならと思い浮かべながら思いついたフレーズをボイスメモに吹き込んだんです。それが「endless Story」になりました。
そういう意味でも、吸収したことはそのまま表現につながっていますね。

─バンドがはじまった当初は、メンバー以外の作曲家さんがいましたよね。現在はメンバー自身で作詞作曲すべてやられているんですよね。

小鳩:今は自分たち主体で作曲をしていて、作詞は小鳩が担当していますっぽ。

KANAMI:最初はまだ作曲のスピードも速くなかったので、初アルバム『Just Bring It』は楽曲を提供していただいたり、共作でアレンジを詰めていたんです。いつもお世話になっているエンジニアさんと一緒にアレンジをさせていただく中で吸収したり、経験も積んできたから、今があるのかなと思います。


─本当に時間をかけてバンドへと成長してきたんですね。

小鳩:本当にそうですね。やっていることはより一層バンドになったなと。最初の頃の私たちとは何もかもが変わっていると思いますっぽ。

SAIKI:1、2年で制作の仕方もデータに移行したので、やり取りもスムーズになって。どんどんスピードが上がっているのは感じますね。


小鳩:打ち込みも覚えたもんね。

AKANE:前まではスタジオに入って個人でドラムのフレーズをiPhoneで録る手間があったんですけど、今はドラムの打ち込みのソフトを入れて自分で録って送るようになって。

KANAMI:本当はみんながDTMをもっと上手く使えるようになって、ミックスも頼めるくらいにしたいなという企みもあります。でも、それくらいクオリティも上がってきているんじゃないかなと思っています。

─BAND-MAIDが、作曲する上で大事にしていることは何でしょう?

小鳩:一般的に言うハードロックではなくて、BAND-MAIDなりのハードロックを大事にしていこうというのは常にありますっぽ。

SAIKI:お給仕主体で考えていて。
例えば、お給仕で感じたことを曲に表したりとか、3セクション目のこのへんに入る曲ほしいみたいなことをリクエストしたり(笑)。

小鳩:このあたりで、ご主人様たちが疲れちゃうから、1曲ミドルなやつがほしいとかね。

─お給仕と楽曲制作は連動しているんですね。

小鳩:そうですっぽ。基本的にそれは変わらないスタンスでありますっぽ。

─今回のアルバムは、15曲が収録と曲数が多いですよね。

小鳩:今までは、アルバムを作ることが決まってから、それに合わせて制作をして曲を集めていく感じだったんですけど、今回の『CONQUEROR』は、コンスタントに録り溜めていた曲だったり、お給仕のために作った曲だったり、さっき言ったライブを観に行って影響を受けて作った曲だったりを詰め込んだというのが正しい言い方かなと思いますっぽ。なので、アルバムのために作った曲たちというより、結果、アルバムの曲たちになったみたいな意味合いがとても強い作品になったなと思いますっぽ。

─曲順を決めるのは大変じゃなかったですか?

小鳩:大変で難しかったんですけど、あえての1曲目に今までのBAND-MAIDのカラーになかったような「PAGE」を持ってきて、BAND-MAIDの新しい未来を感じてほしいなと思って。この1枚を通して映画を観ているぐらいの満足度を感じてもらえるストーリー性があればという思いで曲順は考えましたっぽ。

─ほとんど歌詞は、小鳩さんが作詞されているんですよね。

小鳩:今回のアルバムに関しては、プロデュースの楽曲1曲以外、全て私が書かせてもらっていますっぽ。もともとはみんなで歌詞を書きましょうって始って、小鳩とKANAMIちゃんがパッてすぐ出したんですっぽ。KANAMIちゃんの書いた歌詞はすごくかわいらしくてメルヘンな感じが漂っていて、それはそれで良いんですけど、ちょっとBAND-MAIDのイメージとは違うかもしれないねということになり、作詞は小鳩が頑張っていくことになり。BAND-MAIDを始める前から書くことは好きだったので、こうして全部書けるようになって嬉しいですっぽ。
 
─歌詞を書くにあたって、決めていることはありますか?

小鳩:基本的に、自分のことを書くことはあまりなくて。なるべく普段から本とか、映画とかからインスピレーションを受けるようにしていていますっぽ。あと、気になった言葉とか心に響いた言葉は書き溜めるようにしていますっぽ。タイアップがついている楽曲に関しては、そのアニメを観たり、漫画を読んだりとか、見てくださる方に気持ちを寄せるように意識して書いていますっぽ。

─自分のことを書かないのはなぜなんでしょう。

小鳩:自分のことだけを書いていたら情緒不安定になってしまうと思うので(笑)。1曲1曲にストーリーを持たせて書いていることが多いですっぽ。

─小鳩さんが書いた歌詞をSAIKIさんが歌うわけですけど、どのような気持ちで歌に向かい合っているんでしょう。

SAIKI:作詞の意図は訊かないで自分が思ったままで歌うようにしています。作曲を中心にやっているKANAMIのイメージと、作詞している小鳩のイメージは別ですし、それが良さだと思っているので。私も私なりに解釈して歌いますね。

─今回のアルバムを聴いて、SAIKIさんの表現力がすごく高まったと思いました。

SAIKI:メジャーデビューしたときは、2時間続けて歌うのがギリギリという喉の状態で。一昨年の夏に手術をしたんです。同じことを繰り返さないように筋トレとか体の改善をしたり、筋膜剥がしとかもやって、より自分の声を支えられる体づくりに取り組みました。

─喉の手術をされたんですね。

SAIKI:声帯ポリープができて。1週間は完全沈黙で、1ヶ月は歌っちゃいけないという状況でしたね。

─そこから、歌い方を変えた?

SAIKI:そもそもハードロックを歌ったことがなかったので、喉がついていかずに1番声帯に悪い歌い方をしていて。そういう歌い方にならないようにレッスンで教えてもらいながら、自分も筋トレをしながらやっています。

小鳩:小鳩も手術したっぽ。

─何の手術ですか?

小鳩:小鳩は声ポリープではないんですけど、喉の使いすぎで無理をしすぎてしまった帯結節というのを除去して。今の小鳩になりましたっぽ(笑)。

─ストイックに音楽活動をやっている分、負荷がかかっているんですね。

小鳩:メジャー・デビューしてから特にスピード感が上がってきていて。自分たちで自分たちにムチを打ってずっと必死に走ってきた感じなのでっぽ。

SAIKI:最初、体づくりをあまりしていなかったのに、激しいライブをしたり、海外のツアーで長時間の飛行機移動やバン移動が多かったので、それはなるわーってなって。みんな筋トレとストレッチも覚え、行きつけの整骨院もでき(笑)。

小鳩:それぞれ自分なりの治療法でケアしながらやるようになりましたっぽ。

AKANE:私の場合は、ドラムのツインペダルを始めてから、速いフレーズになればなるほど左が追いつかなくて。最近はやっと筋肉もついてきて安定してはきたんですけど、気をつけないとヘルニアになるなという状況でもあるんです。

─それだけストイックにやっている部分が、メイドの見た目であまり伝わらないというのは、どういう気持ちなんでしょう。

小鳩:ありがたいことにメイド服で隠せるんですっぽ! だから、とてもいいお洋服ですっぽ(笑)。

─頑張りがもっと伝わってほしいとは思わないんですか?

SAIKI:真面目にストイックにというのが5人の性格上合っているので、そこはリリースとか、お給仕を観てもらったら分かってもらえると思うので。

小鳩:伝わるっぽ。

─最近のバンドにはないストイックさだと思いました。体育会系というか。

SAIKI:みんな打ち上げもしないしね。

小鳩:BAND-MAIDは海賊みたいな打ち上げするんですっぽ。

─なんですか、海賊って(笑)。

小鳩:飲むし、食べるし、騒ぐし! スタッフさんとか制作の方にも、いまどき珍しいよってすごい言われますっぽ。対バンで挨拶に行くと打ち上げがやばいって聞いてますって恐れられることが多かったので、ちょっと自粛しましたっぽ。

SAIKI:怖くないよって書いておいてください(笑)。

─(笑)。本作では、世界的音楽プロデューサーのトニー・ヴィスコンティさんから熱烈オファーを受けて「The Dragon Cries」のプロデュースをお願いしたということですけど、その経緯を教えてもらえますか?

小鳩:「The Dragon Cries」の作詞をしてくださったトーマスさんという方が日本文化がとても好きな方で。BAND-MAIDを観て気に入ってくださり、トニーさんに私たちのことを伝えてくださったんですっぽ。トニーさんとトーマスさんは家族ぐるみですごく仲の良い友人であり仕事仲間でいらっしゃって、BAND-MAIDを一緒にプロデュースしないかとトニーさんに持ちかけてくださったんですっぽ。トニーさんも実は僕も日本文化が大好きで、ぜひ一緒にやりたいねって言ってくださり、お2人からクラウンの方に「一緒に1曲プロデュースさせてくれないか?」とお声をいただきましたっぽ。こちらとしては最初は詐欺かなとか、本当の話かな? と不安だったんですけど、本当に実現に至ったんですっぽ。

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左から、小鳩ミク、トニー・ヴィスコンティ、SAIKI

─プロデュースというところでどこからどこまでやられているんでしょう?

SAIKI:全部ですね。

KANAMI:最初、SAIKIのボーカル入りのデモをトニーさんにお送りさせていただいて。何かやり取りがあるのかなと思ったんですけど、「いいね! それでいこう!」と。

小鳩:二つ返事でね。

KANAMI:そのときは大丈夫かなという不安があったんですけど、トニーさんに二つ返事をいただいてすごく自信に繋がりました。世界的に有名なプロデューサーさんなので、私たちの楽曲が世界にも通用するんだって。オケのレコーディングは日本でやったんですけど、ボーカル2人はニューヨークで歌入れをすることになって。メロディワークとかはそこで結構アレンジしてもらいました。

小鳩:ニューヨークにあるトニーさんのスタジオで2人で録らせていただくことになったんですけど、一緒に作りながら曲のメロディを考えていきたいと言われて。それはやったこもないことだったので、新しいものができるなという風に思いましたっぽ。

―トニーさんとのレコーディングはどうでしたか?

小鳩:トニーさんはすごい気さくで紳士的に「君たちが歌いたいことをやりたいし、よりいいものを作り出したいから一緒に作っていこうよ」と言ってくれて。その場でキーボードだったり鼻歌だったりで歌ってくれたものを小鳩がなぞって一緒に歌ってみて。レコーディングをしながら、これでSAIちゃん歌ってみてっぽ! みたいな感じで、どんどん進めていきました。もとにあった基盤は、サビの主メロしか残っていないぐらいですっぽ。

─歌詞も英語詞ですよね。

小鳩:全詞英語はインディーズのときに1作だけあったんですけど、メジャー・デビューしてからは1作もなかったんです。トニーさんから「BAND-MAIDは世界でいろいろお給仕をしているから、1曲は絶対に英語で歌った方がたくさんのご主人様、お嬢様がBAND-MAIDの他の曲も聴いてくれるきっかけになると思う」ってアドバイスをくださって。簡単な英語で絵本を読んでいるようなストーリーにすれば今の君たちにも合うし、アメリカにもうけると思うという風に言ってくださって生まれた歌詞なんですっぽ。

SAIKI:レコーディング中も、とても褒めてくださって。君たちの可能性を感じるとかいっぱい言ってくれたし、アメリカ・ツアーのニューヨーク公演が2公演あったんですけど、どちらも観に来てくれたんです。

小鳩:そのときも、すごく興奮した感じで褒めてくださって。「君たちは本当のロックをしているからもっと世界でやっていけると思う」というお言葉をいただいて。本当にうれしかったですっぽ。

KANAMI:ミックスに関してもトニーさんがギターとかベースとかドラムの音を削ったりして、もっとシンプルな方が全然いいよって言ってくれて。出来上がりの音を聴いたとき、すごく感動しました。USの音はこれなのかというのを肌で感じて。お給仕で5人の演奏を生で見るのは初めてだったので、その後にすぐ帰ってミックスし直したりしてくれて。思いついちゃった! みたいな感じで(笑)。

小鳩:本当にトニーと出会えてよかったって感謝していますっぽ。いろいろなことを勉強させてもらったし、自分たちの音楽を本当に愛してもらえたので。ものすごくフレンドリーにしてくださって、ライブ終わりのさようならしなきゃいけない最後のご挨拶では、涙目で「次はいつ来るの?」って言ってくれて、もらい泣きしちゃいましたっぽ(笑)。

SAIKI:親戚みたいな感じ。本当にいい経験になりました。

─海外でライブをすることも増えてきたと思うんですけど、手応えは感じていますか?

小鳩:すごく感じますっぽ。お給仕に行けば行くほど、いろいろなご主人さまとお嬢様との出会いがあるんです。最近は1回行ったところにもう一度帰れたりとかもしていて、前回来たときよりもさらに多くのご主人様、お嬢様が待っていてくださると、大きくなって帰ってこれてよかったっぽと思います。9月に行ったアメリカ・ツアーも全公演、うれしいことにソールドという形で迎えることができて。追加公演もやらせていただいて、自分たちの音楽が届いているんだなというのを身をもって実感できて、すごくいい刺激と自信になりましたっぽ。

─BAND-MAIDのどういうところが、海外の人も含めて多くの人を惹きつけていると思いますか?

小鳩:1番はギャップだと思いますっぽ。メイド服も日本のkawaii文化として海外の方が知ってくださっていて。かわいいメイドなのにゴリゴリのハードロックをやっているんだよって紹介してくださっている方もいて、ギャップがあるけど真剣に音楽をやっているところが、響いてくれているんだろうなと思いますっぽ。

─BAND-MAIDの目標は、活動当初から世界征服ですよね。

SAIKI:今も変わらず、世界征服を掲げています。

小鳩:BAND-MAIDのことを知らない人が世界中からいなくなったときが世界征服をしたと言えるときなのかなと思うんですっぽ。なので、達成なんて先は見えないんですけど、あそこでお給仕したいと思ったとき、そこですぐにお給仕をできるようになったら、それは世界征服に少しでも近づけたんじゃないかなと思いますっぽ。

SAIKI:海外に何回も行かせてもらう中で、音楽は性別も年代も関係ないんだなということを本当に感じるので、世界中で音楽をやれるようになることが私たちにとっての世界征服かなと思っています。

<リリース情報>

BAND-MAID最新作、我流のハードロックで体現する日本文化とは?


BAND-MAID 
最新アルバム『CONQUEROR』

発売中
初回生産限定盤A(CD+Blu-ray):4545円(税込)
初回生産限定盤B(CD+DVD):3636円(税込)
通常盤(CD):2727円(税抜)

=収録内容=
-CD-※全タイプ共通
1. PAGE
2. glory
3. Liberal
4. endless Story
5. Mirage
6. At the drop of a hat
7. Wonderland
8. azure
9. Dilemma
10. Bubble
11. The Dragon Cries
12. flying high
13. カタルシス
14. Blooming
15. 輪廻

<ツアー情報>

BAND-MAID WORLD DOMINATION TOUR 2019-2020 【激動】

=ツアー日程=
2019年12月22日(日)京都・KBSホール
2020年1月10日(金)愛知・名古屋ダイアモンドホール
2020年1月11日(土)兵庫・神戸Harbor Studio
2020年1月18日(土)鹿児島・CAPARVO HALL
2020年1月19日(日)熊本・B.9 V1

BAND-MAID WORLD DOMINATION TOUR 【進化】 

2020年2月13日(木)LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
2020年2月14日(金)LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

BAND-MAID HP:https://bandmaid.tokyo/