HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL』と題したHYDEの単独ライブが12月7日、8日の2日間にわたり幕張メッセ国際展示場4~6ホールで開催された。このライブは今年3月からスタートしたHYDEのワールドツアーを締めくくるものであると同時に、2018年から本格化したHYDEのソロ活動におけるひとつの区切りとなった。
本稿では12月8日公演について記す。

アルバム『ANTI』発売前から世界各国を飛び回り、『ANTI』で展開された世界観を確かなものへと進化させ続けたHYDE。一連のツアーの中でも最大規模となる今回のライブには、今年6~9月に国内で実施されたツアーで用いられたステージセットをさらにスケールアップさせた”NEO TOKYO”が用意された。近未来感と排他的な世紀末感が同居するステージに登場したHYDEは、気心知れたバンドメンバーとともに「WHOS GONNA SAVE US」からライブをスタート。巨大なスクリーンにはステージ上の様子とともに、楽曲の印象的なフレーズが映し出され、否が応でも観る者のテンションは高まっていく。

HYDEワールドツアーを締めくくる『ANTI』最終形 その強靭さを支えた信頼関係

Photo by 岡田貴之、田中和子

「AFTER LIGHT」「FAKE DIVINE」とアルバム『ANTI』からの楽曲が矢継ぎ早に繰り出されるとともに、「やっちまおうぜ、幕張!」とHYDEは観客を煽り続ける。ここ最近はZeppクラスの会場で見慣れてしまっていたHYDEのパフォーマンスだが、はやり彼にはこういったアリーナクラスでの派手なステージがよく似合う。時にはステージ上に設置されたパトカーの上に乗り、片手に持ったバットを叩きつけるなどアグレッシブなアクションで、観客の熱気を高めていった。

HYDEワールドツアーを締めくくる『ANTI』最終形 その強靭さを支えた信頼関係

Photo by 岡田貴之、田中和子

3曲歌い終えたHYDEは「Ladies and gentlemen! ようこそ『ANTI FINAL』へ。調子どう? 今日は『ANTI』の最終形を見るんだろ?」とオーディエンスに問いかけ、この日のライブにかける意気込みを滲ませる。続く「INSIDE OF ME」では、拡声器を片手にした彼が客席フロアへと降りて観客の間近でアジテート。「かかってこい!」の一言に、フロアの熱気は早くも沸点にまで到達する。
「DEVIL SIDE」あたりになると、フロア前方のスタンディングゾーンにクラウドサーファーやモッシュする観客の姿が見受けられるようになり、これを受けてHYDEやバンドの熱もさらに高まっていった。

HYDEワールドツアーを締めくくる『ANTI』最終形 その強靭さを支えた信頼関係

Photo by 岡田貴之、田中和子

「TWO FACE」や「SET IN STONE」といった楽曲では、アリーナクラスならではのショーアップされた演出も用意。また、極上のバラード「ZIPANG」では序盤にピアノソロも用意され、楽曲が持つセンチメンタリズムがより強調されることに。一方で、「OUT」ではリズムにあわせて観客が一斉にジャンプをするなど、会場の一体感は曲が進むごとにさらに高まっていった。

「援護してくれたら真っ暗闇の中でも何かつかむ」

ライブ中盤のMCでは、「(今日のライブは)『ANTI』というアルバムの集大成。君たちがライブに来て、初めて完成する」とこの日のライブの意味をオーディエンスに伝えるHYDE。続けて「カオスを見せてくれ! 俺たちで『ANTI』を完成させようぜ!」と叫ぶと、「MAD QUALIA」にあわせてフロアには巨大なモッシュピットが発生する。また「SICK」では、バンドの演奏もフロアの盛り上がりも激しさを増す一方。その様子を目の当たりにし、HYDEの表情からは自然と笑みがこぼれる。さらに「LION」では、HYDEがまさにライオンのごとくステージ上で叫びまくる一幕も。バンドの一員としてステージに立つVAMPSなどとは異なり、この日のHYDEはマスクを被った匿名性の強いバンドメンバーを背にひとり気を吐いているように見えた。そんな彼の奮闘に応えるように、彼を取り巻くバンドメンバーやオーディエンスがHYDEが存在する環境をより強靭なものへと固めていく……これこそがHYDEが目指した”『ANTI』の最終形”だったのかもしれない、とこの日のステージを観て改めて実感した。


HYDEワールドツアーを締めくくる『ANTI』最終形 その強靭さを支えた信頼関係

Photo by 岡田貴之、田中和子

HYDEの合図で観客が一斉にジャンプをする「ANOTHER MOMENT」でクライマックスを迎えると、続く「MIDNIGHT CELEBRATION II」では再びフロアまで降りて観客と”ひとつ”になろうと試みるHYDE。そんな彼の期待に応えるように、フロアには巨大なサークルピットが発生する。この美しい光景を前に興奮を隠せないHYDEは、ステージに戻るとバットでパトカーを叩きまくってからステージをあとにした。

アンコールでは、本ツアーではおなじみとなったスリップノット「DUALITY」を披露。序盤はバンドメンバーのみで演奏されるが、途中で客席フロア後方から再登場したHYDEがCO2を撒き散らしながらステージまで練り歩く。曲後半でステージまで到達したHYDEはバットでドラム缶を殴りつけるなどアグレッシブさを見せ、オーディエンスを煽り続けた。続く「AHEAD」ではギターを抱え、メジャー感の強いこの曲で観客のハートをわし掴み。さらに、パンキッシュに進化した「GLAMOROUS SKY」ではフロアの熱気が再び沸点にまで上昇し、この日何度目かのクライマックスを迎えた。

HYDEワールドツアーを締めくくる『ANTI』最終形 その強靭さを支えた信頼関係

Photo by 岡田貴之、田中和子

昨年から始動した『ANTI』に伴う活動も、次の1曲でいよいよ終焉を迎える。HYDEは「2年前にVAMPSが終わってから、ここまで走ってきました。たぶん、(ライブはこの2年で)150本くらいやったかな?」と2017年末からのソロ活動を振り返りつつ、オーディエンスが照らすスマホの光を前に「本当にいい眺めだよ。これはただの光じゃない、全部に意味のある、大事な人の、よき理解者の光です」と感謝の言葉を口にする。
そして「2年経ってここまで戻ってこられたけど、あとは突っ走るだけ。でも、僕はそんなに強くないので、みんなの援護がないと走れない。援護してくれたら真っ暗闇の中でも何かつかむから。期待して待っててください」と続けると、正真正銘のラストナンバー「ORDINARY WORLD」で感動のフィナーレを迎えた。

デュラン・デュランの大ヒット曲のカバーである「ORDINARY WORLD」では、”普通の生活”を続けるために生き延びる術を探す人々の姿が表現されているが、HYDEにとってはこの日、目の前で繰り広げられた”非日常的な光景”こそが”普通の生活”なのかもしれない。そんな彼なりの日常を守り続けるために、HYDEはこの先も全力で走り続けることだろう。もちろん、彼を支持する大事な”より理解者”たちとともに。

SET LIST
01. WHOS GONNA SAVE US
02. AFTER LIGHT
03. FAKE DIVINE
04. INSIDE OF ME
05. DEVIL SIDE
06. TWO FACE
07. SET IN STONE
08. ZIPANG
09. OUT
10. MAD QUALIA
11. SICK
12. DONT HOLD BACK
13. LION
14. ANOTHER MOMENT
15. MIDNIGHT CELEBRATION II
16. DUALITY
17. AHEAD
18. GLAMOROUS SKY
19. ORDINARY WORLD
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