ー東京公演の当日である午前中に日本に着いたそうですね。あなた方のツアーではよくあることなんですか?
リジー・ヘイル(Vo, Gt) そうね。よくあることかもしれないわ。私たちはトラベラーだから、いつでも受けて立つわ。
ー時差ボケの心配はないのでしょうか?
ジョシュ・スミス(B) 常に時差ボケはあるから、全く問題ないよ(笑)。
リジー ええ、私もそう。でもこれがいい方向に作用している気がしているのよ。頭がフワフワしているから、逆にいいショウになることが多くてね。余計なことを考えずに、目の前のライヴに集中することができるから。
ジョシュ そうだね。ただ、僕の場合はハイエナジー、ロウエナジー、その間を激しく繰り返すことになってしまって、大変な部分はあるんだけどね。
ー2019年3月に開催された「Download Festival Japan 2019」にも出演し、僕も観させてもらいましたけど、ヘイルストームの本領を発揮する素晴しいライブ・パフォーマンスでした! あのステージを振り返って、どんな印象を持ってますか?
リジー ああいうフェスは自分たちの存在を証明しなきゃいけない気持ちが強く働いてしまうのよ。同じラインナップの中に私たちのアイドルもいるし、同世代のバンドもいたりして、観客の中には私たちの音楽を全く知らない人もいる。だから、何とかして振り向かせたい!という気持ちが強くなってしまうから。今回ワンマン・ショウでまた日本に戻って来れて、私たちだけを観に来ている人たちの前でやるのはそれはそれで嬉しいものよ。

Photo by Teppei Kishida
ー「Download Festival Japan 2019」でほかのバンドのライブを観る時間はありました?
リジー ええ、もちろん! 普段はあまりほかのアーティストのライブを観る機会はないから。
ジョッシュ スレイヤー、ゴースト……。
リジー アマランス、アーチ・エネミーもね。あの日はエリーゼ(アマランス)、アリッサ(アーチ・エネミー)の3人でバックステージでスクリームのやり方をお互いに教え合ったのよ。私はこういう風にやるけど、私はそういう風にはできないわって、大笑いしながらね(笑)。とても楽しい時間だったわ。
ジョッシュ 隣の部屋から、ものすごいスクリームが響いてきたからね。
ーまさかバックステージでスクリーム大会が繰り広げられていたとは知りませんでした(笑)。
リジー そんなことをやってしまうのも、時差ボケのおかげかもしれないわね(笑)。
ーヘイルストームの「Love Bites(So Do I)」をLOVEBITESのasami(Vo)さんを迎え、共演しましたよね?
リジー あれはとても素晴しい経験だったわ。彼女たちが私たちの曲をバンド名にしてくれたのは知っていたから、実際にステージで共演できて、これ以上幸せなことはないわ。(asamiは)才能のある素敵な女性で、ここ数年夢を追いかけて頑張っているという話を聞いていたから、その彼女たちの頑張りがあのステージにも繋がったんじゃないかしら。しかも今日はLOVEBITESのフルセットのショウを観ることができるから、それも楽しみの一つね。
ツアー中、印象に残ったエピソードとは?
ーそして、ヘイルストームは「Download Festival Japan 2019」出演以降、アメリカをずっとまわり続け、ヨーロッパも巡ったりと、ほぼ休暇ナシのツアー三昧の日々ですよね。ツアー中に何か面白いエピソードはありましたか?
リジー そうねえ、あの話はしてもいいかしら?
ジョッシュ それは次の機会にしようか(笑)。
リジー ええと、今回は初めてお会いするから、軽めのものにしておきましょう(笑)。ロンドンの出来事になるんだけど、私の弟でもあり、ドラマーでもある彼(エアジェイ・ヘイル)はとてもクレイジーでね。ツアーにカメラが密着しているから、サービス精神に火が付いたのか、あんなことをやろう、こんなことをやろうと企んでね。
ー(笑)。ここで話を変えますが、2018年のグラミー賞で過去1年に亡くなった音楽関係者が偲ぶアーティストにパンテラ/ヘルイェーのヴィニー・ポールの名前が上がらなかったことに憤りのコメントを発表してましたが、あれはどんな気持ちから?
リジー 特に自分が関わっているジャンルについては、きちんと伝えていきたい気持ちが強くて、そこから出てきた発言なのよ。グラミー賞は華やかだけど、システム自体は穴だらけで、改善点がたくさんあるわ。上層部の人間はちゃんと音楽を聴いて、判断してるわけではないということを含めてね。もちろんそれに対して、無言を貫いている人もいるだろうけど、私はちゃんと声を出して、このジャンルはこうなんだと言いたかったのよ。ヴィニーは私たちの大切な友人でもあるし、グラミー賞を闇雲に批判することは簡単だけど、私はそういう言い方はしたくなかったのよ。文句を言うだけでは変わらないから、筋道を立てて自分のコメントとして発表したのよ。

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ーそこにはまだヘヴィ・メタルというジャンルは一般的にリスペクトされていないという認識もありますか?
リジー ええ、私たちも「Love Bites(So Do I)」という楽曲でグラミー賞ベスト・ロック/メタル・パフォーマンス部門で受賞しているし、多くの人に注目されている立場にいるからこそ、自分たちに耳を傾けている人がいるならば、私たちが大好きなロック、メタルというジャンルに対して、私が何か言うことで、より注目してもらえるんじゃないかと考えたから。ヘヴィ・メタルという音楽は自分の一部であり、周りの仲間を含めて、生きる希望をもらっているジャンルの一つなのよ。
メタルは世界中にコミュニティがちゃんと根付いている
ーあなた自身もヘヴィ・メタルという音楽に救われた瞬間があると?
リジー ええ、そうよ。バンド同士だけではなく、メタルは世界中にファンを含めたコミュニティがちゃんと根付いているものだから。ロック、メタルの世界においては肌の色や性別、どんな仕事に就いている人でも、恋愛対象が誰であろうとも、関係なく楽しめるものだと思っているわ。
ーアメリカではここ数年MeeToo運動が大きな盛り上がりを見せていますが、ヘイルストームとしてもマイノリティの声を代弁していきたいという気持ちは強いんでしょうか?
リジー ささやかではあるかもしれないけど、私たちなりに世の中に役に立てる発言や行動ができると思っているわ。
ジョシュ リジーがヘイルストームを通して発しているメッセージは、まさにそういうものだと思うよ。励ましだったり、自分らしさを受け入れて、他人にどう思われようと、自分らしく生きることを歌っているからね。それは人種や性別を超えて、多くの人に響くものだと思うんだ。その意味ではマイノリティだけではなく、僕らの音楽はすべての人に対して扉を開いているつもりだよ。
リジー 私たちもいまだに悪戦苦闘しているところよ。自分の存在を認めてもらいたいし、証明したいと頑張っている最中なのよ。
ーそのためにも世界中をツアーで飛び回る必要があると?
ジョシュ ああ、ほんとに草の根的なツアーが必要なのさ。
リジー そうね(笑)。みんながライヴを観たいと思うのと同じように、私たちもステージに立ち続けたくてしょうがないのよ!

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ー素晴しいコメントです。今日はありがとうございました!
リジー こちらこそ、時間を割いてもらって、本当にありがとう!
ジョシュ とても感謝しているよ。
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