リリースから1年以上、海外や日本のステージで『Eye of the Storm』の曲を披露してきただけあって、ONE OK ROCKが求めた変化とはどういうものだったのか冒頭からよく分かった。陰影のある「Eye of the Storm」の多層的なサウンド(映像の演出もクール)。静と動が織りなす「Grow Old Die Young」のスケール感(アタック感の強いリズムの中、バンドの演奏でビシッと締めるところもさすが)。「Cant wait」のポップさ(Toruが掻き鳴らすギターの余韻がいい味出してる)。バンドの表現力に幅が出たことで「Clock Strikes」のような過去の曲も彩りが一層豊かに。波打つように広がっていくパワーだけでなく、「Worst in Me」のような内省的な響きも自在に操れるようになったという点が、第二章を迎えたバンドのストロングポイントだと感じた。
スマホのライトが会場を照らした「Be the light」の”Even though the days go on So far so far away from / It seems so close(時間は流れて あの日からどんどん離れていく/でもまだあの日は近くに感じる)”というフレーズ。4人のメンバーを寄りでカメラが抜く映像上の演出もあったせいか、Taka(Vo)、Toru(Gt)、Ryota(Ba)、Tomoya(Dr)の凄みがより伝わった「Push Back」の”Now were back in the fight/止まることなく走り続けて/この先に待つどんな苦難どんな試練も/Its like their holding the””というフレーズ。Takaが感じた「自分ごと」の歌詞でありながら、それを「みんなごと」として感じさせるエネルギーがONE OK ROCKの「歌」にはある。Tomoyaが弾くピアノとTakaのヴォーカルが織りなすバラード「In the Stars」では、2人だけにスポットライトが当たる照明にもかかわらず、その歌が客席を明るく照らしているかのような感覚を味わった。

Toru(Photo by Rui Hashimoto)

Ryota(Photo by Rui Hashimoto)

Tomoya(Photo by Rui Hashimoto)
4人のバンドマンと約1万2千人のオーディエンスが作り出す尊い空間。

Photo by Rui Hashimoto
ライブ中のスマホ撮影を解禁した「Stand Out Fit In」と「完全感覚Dreamer」
ONE OK ROCKがシーンの起爆剤の一つとなり、彼らとその仲間のバンドたちは今や日本のロックのメインストリームを占めるまでになった。何もないところからONE OK ROCKの歴史は始まった。現状に甘んじることなく常に挑戦を続け、ドームやアリーナを当たり前のようにソールドアウトできるようになった今も、その目線の高さとスタンスはファンと変わらない。
頭を空っぽにして楽しむだけならパーティに参加すればいい。TakaがMCでよく言う「かかってこい!」は(「じぶんROCK」では「自分らしくかかってこいよ!」と言っていた)、我々に覚悟を問いかけてくる。興奮と衝動。お前を突き動かすものは何なのか? 怒りなのか悲しみなのか、もしくは痛みなのか。その全部をONE OK ROCKの音楽にぶつけてこいと迫ってくる。そんな状況下であれこれ禁止されたら、そりゃテンションも下がるだろう。だからルールを無視してやりたいようにやれ!という考え方も分かるし、時代とともに変えていかなきゃいけないこともたくさんある。だが一方でアーティストが真剣勝負をしている空間だ。そんな緊張感の中、ただ突っ立ってスマホ越しにじーっと見るオーディエンスばかりだったら、表現している方は面白くないだろう。Takaはそんなことを身をもって示しつつ、でもファンが喜んでくれるからという理由で最後は人気曲で締めくくる。
この日のMCで「(チャレンジングなアルバム『Eye of the Storm』を引っさげて)いろんな国をまわって、いろんな人たちのリアクションを見て感じたことが一つありました。自分たちがいかにロックバンドが好きで、ロックの音楽を愛しているかということ。これに尽きます」と語ったTaka。ロックという音楽には、時には人生に強い影響を与える「信念」がアーティストごとに宿っていると思うし、それがあるからハッとするような「革新」がときどき生まれて、その積み重ねが「伝統」になっていく。その重みは、どんなものにも負けない。そんな強さをあらためて感じさせるステージだった。

Photo by Rui Hashimoto
ONE OK ROCK 2019-2020
EYE OF THE STORM JAPAN TOUR
1月29日(水)
SET LIST
01 Eye of the Storm
02 Take me to the top
03 We are
04 Taking off
05 Re:make
06 Cant Wait
07 Clock Strikes
08 Head High
09 Grow Old Die Young
10 Change
11 Worst in Me
12 Be the light
13 In the Stars
14 instrumental
15 Push Back
16 キミシダイ列車
17 じぶんROCK
18 Giants
19 The Beginning
20 Mighty Long Fall
21 Wasted Nights
En1 Stand Out Fit In
En2 完全感覚Dreamer