テイラー・スウィフトのニューシングル「カーディガン」の勢いが止まらない。
「カーディガン」のMVにも登場するこのカーディガンは、先週末にかけてシンガーのマレン・モリスやケルシー・バレリーニ、ポップシンガーのフレッチャー、さらには作家兼女優のカジー・デイヴィッドといった数名のセレブリティやインフルエンサーの手に渡った。スウィフトの公式サイトにもあるとおり、ファンがゲットできるこのアイテムは、ただのカーディガンではない。(株)テイラー・スウィフトの謳い文句は、これがまさに「例のカーディガン」であること——そう呼ぶことでカーディガンに普遍性を与え、現時点でもっとも野心的なアルバムを象徴する安価なアイコンとしてテイラー・スウィフト正典に永遠に刻もうと考えているのだ。たしかに、カーディガンに特別な価値をもたせることは可能だ。なぜなら『フォークロア』の評判は、はやくも極めて高いのだから。
だが、「例のカーディガン」は、単なるちょっとしたメモリアル・アイテムであるだけでなく、巧妙な販売戦略でもある。というのも、実際に着られるアイテムは、大好きなアーティストを身近に感じたいというファン心理にまっすぐ訴えかけるからだ。
「テイラー・スウィフトのファンは、みんなテイラーになりたいんです。彼女たちは、テイラーとつながっているという感覚を欲しています」とショッピングができる音楽ビデオプラットフォームDroppTVを創設したガープス・ライ氏は本誌に語った。DroppTVは、まさにこのようなファン心理によって成り立っている。ファンは、ミュージック・ビデオでお気に入りのアーティストたちが着用しているアイテムを欲しがる。「消費者は商品をより魅力的に感じ、その結果、アーティストとファンがつながっているような感覚が生まれます」とライ氏は続ける。「私たちは、ヒップホップのMVでこうした現象を経験しました。そしていまは、メインストリームのポップアーティストたちがファンたちに憧れを感じさせるアイテムを販売しているのです。より身近な存在へと誰もがシフトしています」。
カーディガンはもちろん、Tシャツ、ハット、パーカ、キーホルダー、マグカップ、リトグラフ、スマホ用のポップソケッツやケース、CD、カセット、さらには全8種類の限定アナログレコードをはじめとするアルバム関連グッズの多くは、デジタル版『フォークロア』のリリースと合わせてリリース週のセールスを飛躍的にアップさせ、栄えあるナンバー1を勝ち取るための推進力となる(この手のセット販売は今後変わっていくかもしれない。というのも、10月に米Billboardがアルバムとのセット販売をチャート対象外にすると発表したように、音楽業界のチャートシステムによる規制が厳しくなっているからだ)。
本誌は「例のカーディガン」の現時点での売り上げについてスウィフトの広報担当とレコード会社にコメントを求めたものの、両者は応じなかった。
だが、スウィフトのカーディガンがいつかはカート・コバーンが『MTVアンプラグド』出演時に着用したヨレヨレのカーディガンのレベルに達するかは、神のみぞ知るだ。コバーンのカーディガンは、昨年約3600万円で落札されている。
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