まず映し出されたのは、スタジオでアコギを爪弾く錦戸亮の姿。「難しいわ」と言いながら口笛を吹き、ギターを鳴らし、歌い、息を吐く。こぼれた言葉は、「さみしい~(笑)」
移動中の車中の映像になると、「怖いなぁ」とぽつり。「武道館は聖地的な場所。でも、そこを目指してやってきたわけじゃない。たまたまそうやって会場を押さえて、ツアーがキャンセルになったから今回できることになった。今できる最善のことを尽くすしかない」。そう語り、ついに武道館入りを果たす。控室に入り、スニーカーの紐を結び直し、そしてギターの演奏を開始。そしてタイトルが現れる。
ライブの始まりはステージではなく、西口玄関前。約1年前、独立後一発目に発表した楽曲「ノマド」を歌い、無観客ストリートライブという、前代未聞のスタートを切った。
錦戸はそのまま、武道館のドアを開け、廊下を歩き、階段を下っていく。ステージへ上がり、他に演者のいない武道館に彼のギターだけが響き渡る。2曲目は、クリアなサウンドで届けてくれた「スケアクロウ」。客電はなく、武道館中央に設置された小さな円形ステージに立つ錦戸だけをライトが照らす。
「こんばんは。錦戸亮と申します。今武道館、ひとりでいるんですけども、孤軍奮闘ということで、はじめての弾き語りに挑戦しています。この先誰かが出てくることもありません。ひとりでずっとやるんですけど、一生懸命、精一杯できることはやっていこうと思います。
スタンド席でも弾き語りを披露
「では、聴いてください」と一言添えて、「キッチン」「ヤキモチ」と、日常描写ソングを続けて歌う。ときに目を閉じ、口元に笑みを浮かべ、まっすぐカメラを見つめながら。間奏での口笛かすれ具合に思わず照れ笑いしてしまうのも、ファンクラブ会員限定ならではなのかもしれない。
「はい、すみません! 間違えまくっていますけど、このまま続けたいと思います。すみませんっ!」「それでは、次。最近の僕の好きな歌、うたいます」
【画像】ギター一本で弾き語りライブに挑戦した錦戸亮(写真7点)
ファンミーティングでも披露した、吉幾三氏の名曲「と・も・子」。東北弁での漫談ソングは、芝居と歌の両方で、卓越した表現力を見せる錦戸亮の二刀流っぷりが堪能できるナイスなセレクト。何年も歌ってきたかのような、熟れた歌唱を終え、「誰もいない武道館、いつもではできないやり方をしてみようと思うので、少々お待ちください」と、ステージを降りて、廊下へと出ていく。階段を上がる彼をカメラが追いかけ、着いた先は、なんと3階のスタンド席。「SのEの31。ここからお届けしたいと思います」と「code」へ。
さらにあらゆる角度でドローンが撮影してくれたのは、赤西仁の「ムラサキ」を歌う錦戸亮の姿。「code」からの「ムラサキ」という流れも、ファンクラブ限定ならではのキラーセットリストだと言えるだろう。
「よし! じゃ、また下に戻って歌いたいと思います。移動します!」と席を立ち、再び移動。ステージに戻り、しっとりとしたイントロで始まる「狛犬」を。武道館のまん中で、温かみのあるオレンジ色のライトに包まれ、強く、太い声で届けてくれた。光の柱に囲まれて届けてくれた新曲「コノ世界ニサヨウナラ」は、初披露ながら演奏がギター一本というだけあって、歌詞がすんなり入ってくる。
「ホンマはツアーとかできたらよかったんですけど、これはこれでよかったんじゃないかなと思います。
8日には一般向けに『不撓不屈』と題した無観客オンラインライブを開催する。その名の通り、孤軍奮闘で前夜祭をやり遂げた彼が見せる、次なるステージとは。錦戸亮と武道館が織りなす、新たな音楽の歴史を見届けるべし。
錦戸亮 ONLINE LIVE ”不撓不屈” at 日本武道館
https://lp.tiget.net/ryo-nishikido-online-live-2020
開演:19:30~ ※チケットは20:00まで販売中