新時代の日本のヒップホップ・アーティストたちにフォーカスした特集企画「The NEW Generation of Japanese HIP-HOP」。一度聴いたら忘れられない圧倒的な歌の力。
等身大の女の子の気持ちを歌う、ティーン全体の味方を目指す18歳、LANAのインタビューをお届け。

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※この記事は現在発売中の「Rolling Stone Japan vol.21」に掲載されたものです。

ー音楽の入口は?

LANA お兄ちゃん(LEX)にやってみなよって、突然言われて作ったのが始まりです。

ーそうなんですね。歌がめちゃくちゃ上手いので、小さい頃から歌のトレーニングをしているのかと思いました。

LANA お母さんに風呂で歌を歌わされてました。
喉の使い方とかを特訓されてて。それが自然と身についたんだと思います。

ーどんな歌を歌っていたんですか?

LANA 美空ひばりさんの「愛燦燦」とか『アニー』の「Tomorrow」です。オールジャンルでいろんな音楽を聴かされました。ダンスも3歳の時からやってたので、音楽は常に隣にいる感じでしたね。

ー初めて世に出した曲は、2020年2月にSoundCloudに上げた「HATE ME」ですよね。


LANA あれが初めて作った曲です。当時、付き合っていた人に振られたのがきっかけで作りました。

ーすでに今のスタイルが確立されていますね。

LANA 「HATE ME」の反響が意外と良かったので、作り続けようと思ったんです。最初は特にこれって決まってるものはなくて。やり続けることで、徐々に本気になっていった感じです。
今はヒップホップを歌ってますけど、あまりジャンルは気にしてないですね。自分の持ってるものを音楽に変えて発信していきたいんです。ヒップホップって強い意志を見せるものですけど、私はそんなに強くないし、弱い自分も音楽の中で見せていきたい。普段聴く音楽も静かな歌なんですよ。オリヴィア・ロドリゴとかテイラー・スウィフトも聴くので。そういう音楽もやっていきたいですね。


ー「HATE ME」を出した同じ年の5月には、LANA, LEX名義で「IM NOT HER」をリリースしているんですね。

LANA ちゃんとリリースしたのはその曲が初めてです。スゴく恋愛に悩んでたので、その時に思ったことを歌にしようと思いました。私生活の中の出来事を歌にすることが多いですね。遊びながらビートを流して、今の気分にハマるものを選んでいって。半年に1回のペースでレコーディングしてました。


ー今年9月に出した「Get It feat. ZEN & KESSO」では、子供の時に感じた辛いことを歌にしていますね。

LANA 貧乏だったんですけど、私の中ではそれが当たり前だと思ってて。でも大人になっていくうちに、人と違うことに気がつくんです。今まで自分が経験してきたことを歌詞にして世に出したら、共感してくれる人がいるかもしれないと思って。自分の過去をさらけ出すじゃないけど、それで救われる子、共感できる子がいればスゴい素敵だな思ったんです。

ー最近出した2曲、「PULL UP」と「Xmas with U」は全く違うタイプの曲で驚きました。
「PULL UP」は最新のジャージー・ドリルのビートに歌を乗せているんですが、「Xmas with U」はクリスマスらしいオーセンティックな歌になっていますね。

LANA ジャージーは今来てるなと思ってて。日本で出してる人があまりいないなと思って作りました。

ーあのビートで速いフロウで歌ったり、メロディを乗せたり、いろんな歌い方をしていますよね。

LANA 完成するまでいろいろ悩んだところもあるので大変でしたが、自分の声は武器だと思ってるので、その武器を使いつつ、ああいう曲もできるよっていうのを見せたかったんです。

ーライブで絶対に盛り上がる曲ですね。

LANA ライブも意識してますね。バックダンサーでお姉ちゃんを使わせてもらってるんですけど、お姉ちゃんが表でキラキラできて、私もキラキラできるように作った感じです。ライブはダンサーさんも交えて、どうしたら楽しんでもらえるか考えてます。

ーお客さんが楽しく踊れる感じは重要ですからね。モッシュばかりだと辛いから。

LANA 女の子は痛いし、つぶされちゃうから(笑)。女の子だけの曲って少ないと思ってて。私が勝手に感じてることですけど、女の子が自分の気になってる男の子の好きなラッパーの曲を聴くみたいになってるのがスゴく嫌で。海外の女性のラッパーさんを見ると強いじゃないですか。ああいう感じで聴かれることって、日本であまりないなと思って。みなさんに聴いてもらうのは大前提ですけど、女の子だけが盛り上がれる曲があったらいいなと思ったんです。

ー確かに、海外では強くてセクシーな女性ラッパーの人気者は多いけど、日本にはそのポジションのアーティストがいないですね。

LANA 中身が強いですよね。それを日本の女の子たちに見せたいと思うし。私は強いわけじゃないけど、自分の曲を聴いてもらってる時だけでも、「別に」みたいなヴァイブスになってもらえたらいいなと思うんです。

LANAが語る、強さと弱さを包みこむ「音楽」のビジョン

Photo by ARISAK

「女の子にはもっとわがままに生きてほしい」

ー「PULL UP」はMVの方も、等身大の女の子の仲間感が出ていていいですね。

LANA みんな友達なんですよ。お姉ちゃんのダンス友達と私のリアル・フレンドを呼んで。ちょっと遊ぼうぜみたいな感じで、踊ろうって言って、撮りました。

ーその後に出した「Xmas with U」は全く違うタイプの曲ですが、歌の上手さをちゃんと聴かせていますね。

LANA ヒップホップ・シーンの人たちにも、違うシーンの人たちにもヤバいと思われたくて。じゃあガチで歌おうと思ったんです。クリスマスは一番大好きなイベントなので、しっとりいきたかったんですよ(笑)。風呂でお母さんに教えてもらったことが発揮できましたね(笑)。

ーMVも出ていますよね。

LANA あんな感じで歌ってるのに、見た目はギャルなんです。でもギャルとかイケイケの女の子にはピュアな子が多いし、それをもっと伝える時だなと思って。私もそっちの部類に入ると思うし。恋愛に対してはおとぎ話みたいなのを求めがちなんです。そういう意味でも共感してくれる子がいると思いますね。あと、ジャケットをお姉ちゃんが作ってるんですよ。コーラスもお母さんとお姉ちゃんに入ってもらってて。ファミリーの愛が詰まった思い出の1曲になりました。

ー2022年を振り返ってみると、どんな1年になりました?

LANA やりたいことが増えたし。やりたいことができるようになると、伝えたい何かが出てきましたね。自分がやりたいだけじゃなくて、これをやったら聴いてる子たちがどんな気持ちになるんだろう?って考えることが増えました。やればやるほどそうなってきてますね。今、世の中に期待されてる、そんな感じがします(笑)。

ー2023年はどんな活動をしていきますか?

LANA 「この子、何者?!」っていう風になってほしいですね。スゴい病みソングも作りたいし、スゴいパーティ・ソングも作りたい。来年はさらに自分のやりたいことにフォーカスを当てて、みんなに聴いてもらいたいと思ってます。

ー長い目で見て、こういうアーティストになりたいというのはあります?

LANA 女の子の味方でいたいです。悩んでる女の子の気持ちに寄り添えるような音楽を作りたいし、イケイケな気分の時にも聴いてもらえるような音楽を作りたい。女の子にはもっとわがままに生きてほしいんですよ。かと言って、けっこうガラスのハートも持ってるから。だからもっとそれを形にできたら、女の子はもっと生きやすくなるんじゃないかなと思うんです。ファンの子が悩んでることも聞きたいし。そういうのをインスタライブでくっちゃべってます。自分が悩んでるからこそ、みんなの気持ちもわかるんです。私からもみんなに質問したりするし、情報交換みたいな感じですね。意外と男の子で相談してくる人もいるんです。「こうなっちゃったけど、俺は女の子にどうすべきなんだ?」とか。男の子も強がってるけど弱いんですよ。とりあえず男と女が平等になってほしいです。女の子の味方でいたいですけど、女の子だけに限らず、ティーン全体の味方でいたいと思ってます。

LANA
Instagram: @3pylanabby
TikTok: @lanas_bitch4