SKY-HIが台湾の人気アーティストであるØZIをフィーチャリングに迎えた新曲「Dream Out Loud feat. ØZI」を発表した。SKY-HI自身が出演する「C COFFEE」の新CMのために書き下ろされたこの曲は、プロデューサーのKMによる軽快なビートに乗って、タイトル通りに夢を叫ぶアップリフティングなナンバー。
ØZIはこれまでもさなり、eill、倖田來未、¥ellow Bucksといった日本のアーティストとコラボレーションを行っているが、今回のSKY-HIとの共作を「これまでで最もオーガニックなコラボレーション」と話す。初のアリーナツアー、SKY-HI ARENA TOUR 2023 ーBOSSDOMーの東京公演2日間で共演を果たした翌日に、楽曲制作の裏側からアジアの音楽シーンの未来についてまで、SKY-HIとØZIに語り合ってもらった。

【写真を見る】SKY-HIとØZI

―まずは2日間ライブで共演した感想を教えてください。

ØZI:とにかく最高でした。前回一緒に共演したのは台北だったんですけど、今回はSKY-HIのホームグラウンドで、二晩続けてあれだけの数のオーディエンスと巡り合えて、すごくエネルギーをもらいました。昨年の「SUMMER SONIC 2022(以下サマーソニック)」で初めて日本でパフォーマンスをしたんですけど、日本のファンはすぐにスマホで撮影したりしないで、ちゃんと音楽をリスペクトしてくれるし、パフォーマンスに没頭してくれる。
それがすごく印象的で、今回その「サマーソニック」以来の日本でのショーだったんですけど、やっぱりあの姿勢は日本ならではの素晴らしいものだと思いました。

SKY-HI:ホントにエネルギーがすごかったですよね。あとスタッフに言われたのが、初めてのアリーナツアーだったけど、「記念すべき」みたいな感じではなくて、ずっと地続きで、ただハコがデカくなっただけで、これまでやってきたことを最新の一番いい形でただやれたんじゃないかって。そう言ってもらえたのは嬉しかったですね。

―台湾のØZIと韓国のReddyとの共演もいい意味で特別なものではなくて、これまでやってきたことの延長線にある感じがしました。

SKY-HI:こうなったのはホントにたまたまというか、ØZIには新曲ができたから出てもらいたくてオファーをしたんだけど、その後BE:FIRSTの仕事で韓国に行ったら、Reddyから「韓国にいるなら言ってよ」って連絡が来たから、逆に「Reddy日本に来れる?」って誘って。
だから、ホントにただのフレンドシップ(笑)。

ØZI:ホントにそうで、ビジネスっていう感じがあんまりしない。昨年の10月に知り合いの誕生日パーティーで一緒にハングアウトして(笑)、その後に今回のコラボレーションに繋がったから、こういう流れで曲が作れたのはすごくうれしい。

―SKY-HIのパフォーマンスに対してはどんな印象でしたか?

ØZI:クレイジーだね(笑)。とんでもないエナジーだった。ダンサーと一緒にスタジアムスケールのライブをして、あの曲数をほとんどMCもせずに続けて行って、話したと思ったらオーディエンスをさらに煽って、どれだけエネルギーがあるのか。
しかも、そうやって2日間パフォーマンスをした後に、こうやってインタビューを受けてるわけだからね。僕だったら5曲やったら疲れちゃうのに(笑)。

―実際SKY-HIさんは2日間の手応えをどのように感じていますか?

SKY-HI:想像以上に楽しかったです。人にはそれぞれの生き方とか器があると思うんですけど、個人的には背負うものがデカくなればなるほど、ステージが楽しくなっていくのが面白いなって。初日にはBE:FIRSTやAile The Shotaが来てたし、2日目にはMAZZELやNovel Coreがいて、トレイニーの子たちもいて、そうなると「かっこいいとこ見せなきゃ」っていう、ちょっと違う緊張感があるんだけど……あ、2日目は西島(Nissy)もいたしね。でもそうなればなるほど集中力が上がって、ステージを楽しめたっていうのは、やっぱり自分は気質として背負いたがりなんだろうなって(笑)。


―ある種のプレッシャーや緊張をパワーに変えられる。

SKY-HI:それをすごく感じましたね。あとはファンとの関係性もちゃんと育めてる感じがしました。今回新しいファンも多かったと思うんですけど、関係値が浅くは感じなかったというか、ちゃんと人生を共有できてる感じがしたんですよね。「やり遂げた」っていう達成感とか充実感もあるんだけど、こんなに「楽しかった」が先に来るとは思ってなかったです。

―ファンの世代の広がりもすごく印象的でした。


SKY-HI:そう、あの老若男女感すごくないですか?

ØZI:それは思った。すごく幅が広いよね。

SKY-HI:ライブ後に人生初めてのミート&グリートをやったんですけど、そのときも幅の広さをすごく感じました。

ØZI:あの後にミート&グリートもやったの? マジ? あんな大きなパーティをやった後に? ホントに信じられない!

SKY-HIとØZIが語る共演の舞台裏、アジアの音楽シーンの未来

ØZI(Photo by Mitsuru Nishimura)

「Everythings Gonna Be Alright」を言ってくれる曲

―今回の楽曲でのコラボレーションはどのような経緯で実現したのでしょうか?

ØZI:今回は日本で流れる「C COFFEE」のコマーシャルのための楽曲ということで、そういう曲に呼んでもらえたのはエキサイティングだし、すごく光栄です。自分に来たコマーシャルの話に他の人を巻き込むっていうのは珍しいと思うから、そういう意味でも嬉しかったです。

SKY-HI:逆に言うと、コマーシャルの曲になり過ぎないようにしたかったというか、それこそビジネスにし過ぎたくなかったっていうのがあって。
「C COFFEE」のCM曲を作るのは今回で4作目なんだけど、もちろん作るからにはリリースする意義のあるものにしたくて、どうしようかいろいろ考えたときに、まずKMくんとやることを決めて。で、このテンションのビートでやろうって決めたときに、ここにØZIがいたらどうだろうっていうアイデアが浮かんで、そのとき自分の中のワクワク感が一気に増したんです。

―「一緒にハングアウトした」っていう話もありましたけど、お二人はいつからのお知り合いなんですか?

SKY-HI:ラジオで話したのが最初かな。それが去年の4月くらい。

ØZI:実際に初めてお会いしたのが去年の「サマーソニック」ですね。

SKY-HI:で、10月に一緒にパーティをして、今年の2月に台湾に行って。それで今回のコラボが実現したので、すごくきれいな流れですよね。

―ØZIさんはこれまでもさなり、eill、倖田來未、¥ellow Bucksといった日本のアーティストとコラボレーションをしていますよね。

ØZI:いろいろやらせてはもらったんですけど、これまでのコラボレーションはパンデミックの最中だったりしたから、実際にお会いできたケースは少なくて。なので、まず実際にお会いして、関係性を構築したうえでコラボレーションに至ったのはSKY-HIが初めてで、さっきも話していたように、すごくオーガニックな流れだったなと思います。もちろん、これまで積み重ねてきたコラボレーションはすべて自分にとって意味があって、僕はもともと小さいころから母親と一緒に頻繁に日本に来てて、音楽だけじゃなくて、例えば、VERBALのファッションだったりも、自分にとって大きなものだったんです。なので、今こうして日本のアーティストとコラボレーションをやらせてもらえてるのは、なにかに導かれてるような感覚があったりもします。

SKY-HI:さなりのデビューシングルは俺がプロデュースしてるからね。eillとも一緒にやってるし。

ØZI:そうなの? 世間は狭いね(笑)。5年前には台湾でiriさんと共演したこともあったり、他の国のアーティストとはそんなにたくさんコラボレーションしてるわけじゃないんだけど、日本のアーティストとは何かをする機会が多くて……そろそろこっちに家を買って引っ越さないとかもしれない(笑)。

―実際の楽曲制作はどのように進められたのでしょうか?

SKY-HI:何回かミーティングをして、DMでやり取りをして、デモを送ってもらって。フックに関しては、ØZIが入れてくれたラインがめちゃくちゃよかったから、あんまりやらないことだけど、フィーチャリングアーティストとずっと2声で歌ってるっていう。

ØZI:たしかに、僕もあんまりやらない。日本語の発音をすごく練習したんだけど、どうだった?

SKY-HI:ファンタスティック!だから、ミックスのときもØZIの声をどんどん大きくして(笑)。

―じゃあ、レコーディング自体は一緒にやったわけではなくて、データでのやり取りだったわけですね。

SKY-HI:そうです。でもプリプロからØZIが自分の家ですごく丁寧にやってくれて、それをKMくんと一緒に聴いて、そこからビートを作り直したりもして。

―ØZIさんは曲に対してどんな印象を受けましたか?

ØZI:聴いてすごく自然に自分の中に入ってきたんですけど、ただ自分の中にはない部分もすごく感じて。普段の自分はもっとロック寄りというか、アグレッシブで、ダークな曲を作ることが多くて、自分でもアッパーなアガる曲を作ってみようと思うこともあるんですけど、作ってるうちにやっぱり自分は違うのかなって思うことが多くて。でも今回はコラボレーションだからこそ、普段とは違う自分を引き出せてもらえた感じがします。

SKY-HI:俺もこんなに明るい曲を作るのはひさしぶりで。KMくんと話したのが、今の日本のヒット曲って、SEKAI NO OWARIの「Habit」とか、Adoの「うっせぇわ」とか、ちょっとペシミスティックだったり、自虐的だったりするのが多いじゃないですか? でも今の日本の状況を考えると、アンセムというか、「Everythings Gonna Be Alright」を言ってくれる曲もないとやばいんじゃないかと思ったんですよね。今の日本はどんどん治安が悪くなってるし、若い子がどんどん夢を見れなくなってるのがやばいと思ったから、10年前の自分だったら絶対作ってないような「応援歌」みたいなものを作りたいなって。なので、まずは自分のヴァースを先に書いちゃって、それをØZIに渡しました。

ØZI:ポジティブなメッセージやエネルギーはすごく伝わってきました。ただ自分は場所でも人でも何でもいいんですけど、具体的な絵を思い浮かべないとリリックが書けないタイプなんですよね。で、今回に関しては必然的にコーヒーの絵が浮かんで、歌い出しからして直接「コーヒー」とは言ってないけど、コーヒーのことを言ってるってわかるような感じにして。<Feel the rush through my veins>とか<Taking the pressure Taking the pain>とかって、アルコールだったり、もっとダークなことを言ってるようにも聴こえるかもしれないけど、ここで言ってるのはカフェインのことで。いろんな言葉を使いながらも、表現としてはすごく前向きなことを伝えようと思いました。

SKY-HI:俺よりも全然タイアップのことを考えてくれてます(笑)。

SKY-HIとØZIが語る共演の舞台裏、アジアの音楽シーンの未来

SKY-HI(Photo by Mitsuru Nishimura)

台湾の音楽シーンの広がり

―さっきのSKY-HIさんの日本の状況とヒット曲のリリックの関連の話は面白いなと思ったんですけど、ØZIさんから見て最近の台湾のヒット曲には何か傾向がありますか?

ØZI:そうですね……何が一般的かっていうのは難しいですけど、みんなどこかアイデンティティクライシスを感じてる気はします。やっぱりパンデミックがあって、どこか行き場を失ってしまったような感覚がある。それがどこまでリリックに反映されてるかというとわからない部分もあるけど、少なくともみんな同じようなことを感じてるんじゃないかと思います。でもまあ、きっと世界中がそうなんでしょうね。アーティストで言えば、今は世界中の誰もがTikTokやソーシャルメディアの影響を受けていて、それはポジティブともネガティブとも言えるけど……とりあえず僕はレイジ―だから、ソーシャルメディアにポストするのはあんまり得意じゃない(笑)。どのアルゴリズムに入ればトレンドに上がるのかとか、ホントはそういうことも分析しなきゃいけないのかなと思う反面、そういうこととは関係ない自分でいたいとも思ったり、いい悪いではなく、そういう流れには逆らえないなって。

―今回のコラボレーションはそういったトレンドがどうこうとは関係のないところから派生したオーガニックなものだからこそ、すごく貴重ですよね。

SKY-HI:でも問題があって、こういう風に作っちゃうと……また早く次が作りたくなっちゃうんですよ(笑)。

ØZI:わかる(笑)。最近の流れに対しては否定的な部分もあるにはあるけど、でも何でも流れがすごく速いからこそ、直感で動けるようになったっていう部分もあって。パンデミックの最中は考えすぎちゃって、完璧主義みたいになってた時期もあったんですけど、今はいいトラックができたらどんどん出していこうっていうマインドに切り替わってるので、僕もまたすぐに次が作りたいです。

―アジア各国との連帯をさらに強めたい気持ちもありますか?

SKY-HI:いや、2018年くらいからそういう気持ちでやってきて、今はその甲斐あってというか、ここ最近は自然とそうなっていて。日本人でもまだ一緒にやりたい人がたくさんいるし、アジアのアーティストとも一緒にやりたいし、そこはすごくフラットなんですよね。

―ØZIさんは台湾の音楽シーンの広がりをどのように感じていますか?

ØZI:僕が2018年くらいに本格的に活動を開始したころに、ちょうどヒップホップとかR&Bのアーティストが一気に増えて、誰しもがラッパーになりたがるみたいな、トレンドみたいな状態になって、僕らの世代に関してはそこで大きな変化があったと思います。でもここから大事なのは、台湾ならではのユニークさを見つけていくことだと思っていて。日本の音楽はすごくユニークだと思うんです。ヒップホップもロックもアニメロックもそう。BABYMETALがいたりとか、どのジャンルもすごくユニークなサウンドを持ってるなって。

SKY-HI:ユニークだし、ストレンジでもあるよね。

ØZI:グローバルで勝負するにはそのストレンジな部分、ウィアードな部分が大事だと思うので、台湾のアーティストもこれからの世代が台湾らしいウィアードネスを見つけて、世界に発信していけたらいいなと思います。

二人が思い描く「夢」

―では最後に、「Dream Out Loud」という曲タイトルに合わせて、現在のお二人の「夢」をお伺いしたいです。可能であれば、さっき話してもらったような自国とグローバルの現状も見据えたうえでの「夢」を話してもらえたら嬉しいなと。

ØZI:そうですね……まずは日本語をもっと勉強して、イケてる日本語の曲を書きたい(笑)。

―楽しみにしてます(笑)。ØZIさんはアメリカの大手アジア系マネジメントであるTransparent Artsにも所属しているわけですが、そのあたりのことも含めた今後のアーティストとしての展望に関してはいかがですか?

ØZI:僕はそれこそウィアードなポジションというか、アメリカと台湾のスプリットカルチャーで、どちらを代表しているわけでもなく、すごく複雑な立ち位置だと思うんです。逆に言えば、その両者の橋渡しを担えるかもしれないと思っていて、もっと言えば、音楽だけではなく、ファッションや映画も含めたいろんなカルチャーを結び付けて、それぞれのウィアードネスを拾い上げていくようなスタンスでありたいです。今年出した新しいEP(『ADICA』)ではちょっと踏み込んだ表現にもトライしているので、これからもアーティストとして変化していく様子を見てもらいたいです。

SKY-HI:アジアはすごく近くなりましたよね。日本の音楽業界の風向きが変わったのはすごく感じていて、いろんな国で日本の曲がバイラルヒットすることも増えたし、88risingのショーン・ミヤシロもどんどん活躍しているし、XGのプロデューサーのサイモンは同い年だし、同じアジア人として夢を見やすくなったなって思います。一昔前はそれこそ日本の音楽シーンはユニークで、ストレンジで、ガラパゴスでもあるから、日本以外の国で成功するのはすごくハードルが高いっていう時代が30年くらい続いたけど、もうそういう時代は終わった気がして。だから、いい意味で「挑戦」みたいな感じでもなく、それこそすごくフラットに、いろんな夢が見れるようになったと思うんですよね。具体的なことはここでは内緒にしておくけど、やりたいと思ってることはまだまだたくさんありますよ。

ØZI:僕からすると日本はすでにオリジナルで、ミヤザキのようなアニメだったり、『キルビル』みたいなサムライムービーもすでに世界で認識されてるわけだから、日本の音楽だっていつか世界で爆発する可能性が十分にあるんじゃないかな。

Tanslation by Ken Ayugai

<INFORMATION>

SKY-HIとØZIが語る共演の舞台裏、アジアの音楽シーンの未来

Digital Single
「Dream Out Loud feat. ØZI」
SKY-HI
B-ME
配信中

配信リンク:
https://sky-hi.lnk.to/0531_DOL_DLSTR