レディー・ガガ(Lady Gaga)による5年ぶりの最新アルバム『MAYHEM』がリリースされた。最新インタビューをお届けする。


レディー・ガガが最新アルバム『MAYHEM』の制作を始めたとき、彼女は最初の2枚のアルバム『The Fame Monster』と『Born This Way』が持つ、暗く不穏なエネルギーに引き寄せられていくのを感じた。

「本当にパワフルでした」。彼女は最近実現した通話でそう語る。「ここ4枚ほどのアルバムではその方向性から離れて新しいことを試していましたが、今回はあのゴシックな夢の世界への回帰だったんです」。

『MAYHEM』の全体を通して、ガガはキャリア初期、ロザリオを飲み込み死体とポーズを取っていた頃にファンが魅了された不気味な美学とサウンドを取り入れている。「Abracadabra」と「Disease」の歌詞とビデオはそれを象徴しつつ、16年のキャリア、14個のグラミー賞、そして7枚目となるアルバムの経験を経て、より洗練されたガガを表現している。

「既存の領域を踏まえながら新境地を開拓することは難しいですが、それに挑戦したかったんです」と彼女は『MAYHEM』について語る。「アルバムには『懐かしい』と感じる瞬間もあるでしょう。それは私らしさがあるからですが、音楽的には自分を新しい場所へ押し進めようと努めました」。

彼女はジェサフェルスタイン(Gesaffelstein)とのインダストリアル・ファンク・トラック「Killah」を最も誇りに思う曲として挙げている。アルバムの終盤には、婚約者マイケル・ポランスキーのプロポーズについての幻想的なラブソング「Blade of Grass」を収録し、『Born This Way』の象徴的なモデルだった故リック・ジェネスト(ゾンビボーイ)への追悼として一曲を捧げている。

素顔で、ツインテールの髪型、大きな毛布にくるまりながら、ガガはローリングストーン誌に自身の不安との向き合い方、『MAYHEM』をカオスのなかで回復力を見出すアルバムとして仕上げた理由を語った。


—『MAYHEM』のリリースおめでとうございます。このアルバムの中で、特にあなたのコンフォートゾーンを押し広げた曲はありますか?

ガガ:「Killah」ですね。プロダクションがとても気に入っています。アルバム全体でギターだけが生楽器なんですが、とても楽しい曲に仕上がりました。自信に満ち溢れた曲です。ただ、これまで挑戦したことのないような感覚やグルーヴでした。実は、私はいつもこんなに自信があるわけではないんです。深い不安を感じやすい人間なのですが、この曲では最高の自信を表現できています。これも『MAYHEM』という旅の一部なんです。アルバム全体を一晩の物語として捉えると、この曲は夜を通じてもっとも高揚する瞬間を表現しているんです。

—トラックリストを見たとき、ゾンビボーイ(「Born This Way」のビデオに出演したモデルで芸術家のリック・ジェネスト)から曲名のインスピレーションを得ていることに感動しました。ご冥福をお祈りします。
その曲について聞かせてください。

ガガ:リックは本当に私にインスピレーションを与えてくれる存在でした。この曲を作っているとき、これは究極的にセレブレーション・ソングなんですが、そのワードが自然と浮かんできたんです。この曲は、夜のある瞬間、友達と「明日は絶対に二日酔いだな」とわかっていながらも楽しんでいるときのことを歌っています。楽しみすぎて朝にゾンビのようになることについての曲なんです。もちろん、彼は大きなインスピレーションでした。

前向きな過去への回帰

—2010年のローリングストーン誌インタビューで、あなたは『Born This Way』の制作を、苦いジャムのケーキを焼くことに例えていました。「新しい音楽のメッセージは以前よりビターになっています。ケーキが甘ければ甘いほど、ジャムはよりビターになれるから」とおっしゃいました。その例えで見たとき、『MAYHEM』はどのように捉えていますか?

ガガ:その例えは今でも的確です。このアルバムには暗い部分が潜んでいて、向き合うのが難しい不快な底流があるんです。『Born This Way』は社会正義についてのアルバムでした。
一方の『MAYHEM』は、私にとって回復力とカオスについてのアルバムです。私たちはカオスのなかでも強靭でなければならない。そういう意味で両面性があるんです。このアルバムでは、以前の作品以上に音楽的なビターさを探求しました。

—アルバムは今のあなたを反映していると言いましたが、2025年のレディー・ガガをどのように表現しますか?

ガガ:2025年の私は、芸術性のなかに深く入り込んでいます。以前よりずっとリラックスして、自分の存在に心地よさを感じています。レディー・ガガとステファニー(ガガの本名)が完全に一つになり、同時に存在しているんです。それは新しい感覚です。かつては二つの異なる人格を演じているようで、どちらの役でも破綻していました。今は本当に自分らしさを感じています。

先日、ニューヨークのバーに行きました。19か20歳の頃、そこで昼間からナプキンに曲を書いていたんです。
そもそも未成年でバーにいるべきではありませんでしたが。その後も時々訪れては、自分のコミュニティや築き上げたものから遠く離れてしまったような寂しさを感じていました。まるで前世のような感覚でした。でも先週訪れたとき、久しぶりに深い充実感を覚えました。そこにいることが心地よかったんです。創造的な充実感があるとき、それが最も自分らしさを感じる瞬間なんです。

—かつての自分を少し取り戻すというか。

ガガ:そうですね。そして今は充実した人生を送っています。パートナーや家族との生活が充実しているんです。そういったすべてのことが、過去への回帰を、単なる異世界のような体験ではなく、とても前向きなものにしてくれました。

—アルバムは2つのラブソング、「Blade of Grass」と「Die With a Smile」で締めくくられていますね。
ハッピーエンドのようです。

ガガ:はい、その通りです。最初のラブソング「Blade of Grass」は、不気味で緊張感のある曲です。マイケルからプロポーズされたあとに書きました。バックヤードでの思い出がもとになっています。彼が「プロポーズするときは、どうすればいい?」と聞いてきて、私は「裏庭で草の葉を指に巻いてくれるだけでいい。イエスと言うから」と答えたんです。でも、その裏庭には多くの記憶が詰まっています。過去の記憶が私につきまとい、友人や愛する人たちを失った痛みもあります。裏庭で結婚式を挙げた友人がガンで亡くなったんです。だからこの幸せな瞬間が、同時に物思いに耽る甘く苦い記憶の場所でもあったんです。

そのため、不気味で緊張感のある不吉なコードが響きます。
一方の「Die With A Smile」は、希望に満ち、夢見るような、クラシカルな曲です。そこで混沌は終わりを迎えます。このアルバムの美しさは、混沌が繰り返されないこと。終わりがあるということなんです。

From Rolling Stone US.

レディー・ガガが語る『MAYHEM』の真実、自分らしさとカオスの追求

レディー・ガガ
『MAYHEM』
発売中
再生・購入:https://umj.lnk.to/LadyGaga_MAYHEM
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