アイルランドのラップグループ、Kneecap(ニーキャップ)が、コーチェラでの物議を醸したパフォーマンスについて口を開いた。パレスチナ支持のメッセージをめぐる批判に応答し、シャロン・オズボーンの発言には「真剣に応答する価値すらない」とコメントしている。
いったい何があったのか?

Kneecapは政治的な発言を避けたことがなく、最近のコーチェラでのライブでもパレスチナを支持するメッセージを掲げたことで物議を醸した。ローリングストーン誌へのメールで、メンバーのMo Charaは、Kneecapは「2023年10月以前から、バンド結成以来すべてのライブでパレスチナについて語ってきた」とし、「パレスチナの抑圧と過酷な占領は77年続いている」と述べた。

「私たちは、自分たちのプラットフォームを使ってパレスチナ問題を提起する義務があると考えています。アメリカがイスラエルに武器と資金を提供してガザでジェノサイドを行っている中で、コーチェラで声を上げることが重要でした」と彼は語る。「ステージ上でも言いましたが、『アメリカ政府は明日にでもこのジェノサイドを止めることができる』。若いアメリカ人がこの事実を知ることが大切なんです」

”To be patriotic in Ireland is to be understanding of other peoples struggles.”

- Kneecap pic.twitter.com/b72gePcPlK— Irish Unity (@IrishUnity) April 22, 2025(※Xポスト訳)「アイルランドで愛国的であるというのは、他者の闘いに理解を示すことだ」――Kneecap

コーチェラ1週目の公演では、パレスチナ支持の文言を含む複数のプロジェクションを予定していたが、それらは実際にはステージ上に映されず、YouTubeのライブ配信も短縮された。「その件は翌日になって初めて知り、公式な説明も受けていません」とMo Charaは述べ、「大企業は、自分たちの都合や利益に合わない限り、真実を聞きたがらないのは当然だ」とも語った。

2週目のパフォーマンスでは、「イスラエルはパレスチナ人に対してジェノサイドを行っている」との投影があり、それに続いて「アメリカ政府はイスラエルに武器と資金を提供し、戦争犯罪を可能にしている」と表示された。最後には「F*ck Israel. Free Palestine(イスラエルくたばれ。パレスチナに自由を)」とスクリーンに映され、観客は「Free Palestine(パレスチナに自由を)」という合唱を始めた。「これはスペインからスコットランド、アイルランド、アイスランドに至るまで、私たちの全ライブで起きていることです。人々は今起きていることが間違っていると知っていて、怒っているんです」とMo Charaは書いている。
「コーチェラの観客の”Free Palestine”の声は、アメリカ政府の政策に反して、ガザの人々への連帯を示すものでした」

Mo chara speaking to thousands of Americans at coachella.

The young people of America don't support genocide, get out on the streets and show this to that cunt Trump. pic.twitter.com/fExyAn7GA6— KNEECAP (@KNEECAPCEOL) April 19, 2025「Free Palestine(パレスチナに自由を)」コール&レスポンスの様子
(※Xポスト訳)Mo Chara、コーチェラのステージで数千人のアメリカ人に向けて訴える──「アメリカの若者たちはジェノサイドを支持してなんかいない。その意思を行動で示そう。あのクソ野郎トランプに見せてやれ」

「反イスラエル的」という非難への回答

このパフォーマンスには強い反発が起こり、さまざまな団体や著名人が「反イスラエル的」と非難した。Mo Charaは、「過去18カ月でイスラエルはガザで5万2千人以上のパレスチナ人、主に女性や子どもを殺害しました。米国供与の兵器でガザ地区の大部分を破壊し、現在も200万人以上のガザ市民を飢えさせています。私たちのメッセージが反イスラエルだと捉えるかは人それぞれですが、私たちにとってはイスラエル政府の非人道的な行動に対する批判であり、一般市民に対するものではありません」と述べている。

シャロン・オズボーンはX上で、Kneecapのビザを取り消すよう呼びかけ、「彼らは反イスラエル的なメッセージとヘイトスピーチを掲げ、テロ組織を公然と支持している」と主張した。この件について問われたMo Charaは、「彼女の暴言は矛盾だらけで、真剣に応答する価値すらない。夫(オジー・オズボーン)のバンド、ブラック・サバスが書いた『War Pigs』でも聴いてみたらどうですか」と返した。

また、ハマスの攻撃で多数の死者を出したノヴァ・ミュージック・フェスティバルの主催者が、Kneecapをノヴァ展に招待し、犠牲者や生存者、今も人質となっている人々の証言を”直接体験”する機会を提示した。

この招待に応じるかについては明言を避けたが、Mo Charaは次のように述べた。「現在、1万人以上のパレスチナ人がイスラエルの刑務所に拘束されており、その多くは起訴も裁判もなく、400人の子どもが国際法に反して拘束されています。
過去18カ月で殺されたパレスチナ人は5万2千人以上、ガザでは200万人以上が避難を強いられています。誰がこのうち無実の子ども3万人のことを語っているのでしょうか?……私たちのメッセージは、ジェノサイドの終結と、パレスチナへの違法な占領の終焉を求めるものです」

そしてこう締めくくった。「私たちは、できる限りの手段でジェノサイドを止める行動をとってほしいと願っています。音楽から何を受け取るかは自由ですが、ジェノサイドを止めることの方がはるかに大事なんです」

From Rolling Stone US.

Kneecap(ニーキャップ)

北アイルランド・ベルファスト出身のヒップホップ・グループ。メンバーはMo Chara、Móglaí Bap、DJ Próvaíの3人。2017年に活動を開始し、2018年にはデビュー作『3CAG』を発表。アイルランド語と英語を自在に使い分けるバイリンガル・ラップ、風刺と社会批評を融合させた表現で注目を集めてきた。2024年には2ndアルバム『Fine Art』をリリースし、同年にはグループの歩みを描いた伝記映画『ニーキャップ』も公開された。

そのリリックは、アイルランド全島の統一とイギリスからの完全な独立を目指す政治思想=リパブリカニズム(共和主義)の影響が強く、一方で、ドラッグや貧困が入り混じるウェストベルファストの過酷な日常をユーモアを交えて描く楽曲もあり、たびたび物議を醸している。その挑発的なスタンスから「セックス・ピストルズ以来最も物議を醸すバンド」とも評される。

Mo chara speaking to thousands of Americans at coachella.

The young people of America don't support genocide, get out on the streets and show this to that cunt Trump. pic.twitter.com/fExyAn7GA6— KNEECAP (@KNEECAPCEOL) April 19, 2025「Free Palestine(パレスチナに自由を)」コール&レスポンスの様子
(※Xポスト訳)Mo Chara、コーチェラのステージで数千人のアメリカ人に向けて訴える──「アメリカの若者たちはジェノサイドを支持してなんかいない。その意思を行動で示そう。
あのクソ野郎トランプに見せてやれ」
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